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池田広木

 メールの内容によれば、先日、高校の合格発表があり、前田さんは見事第一志望校に合格したらしい。という事は、来月からは、また俺の後輩になるということだ。その小さな出来事が、小さい俺に、少しの目に見えないエネルギーを与えた。

 あの告白の日から、約1年、正確には1年と2ヵ月後に、誰が、前田さんとこのような平和なメールができると予想しただろう、いや、誰もしていない。はずだ。

 Toworrow never knows ってか、これだから、人生は…。

 そんな俺とは裏腹に俺の隣の席の、佐藤秋文は、今日も元気が無かった。いつも通りと言えばいつも通りなのだが、どこか暗い。時折、暗い顔もしている。佐藤秋文と親しくないと、ここ最近の変化に気付けないだろう。

 何気なく左に目を向ける、佐藤秋文は、時折見せるあの暗い顔をしていた。改めて佐藤秋文を見ると、背は小さいが、整った顔立ちに、スポーツマンを思わせる短髪。佐藤秋文は男子バスケットボール部に所属していて、実際、バスケットボールは上手いらしい。俗に言うイケメンというやつだろう。

 俺が、佐藤秋文の元気の無い理由をわかったとしても、俺が言えることは何も無いだろう。過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられるってやつだ。

 当たり前のことが当たり前ではなくなるときが来る。本当の変化とは、常に想像の枠に収まりきらない。わかっていても、何も出来ない。どこか、もどかしく空しくなる、それと似た感覚に襲われる。

 俺が出来ることなんて本当は何も無いのだ、それでも何かしようとする、それが人間の部分だと信じているからだ。

 サンテグジュべり曰く、「人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に対して. 忸怩たることだ」だ。

 そんなことを考えながら、池田広木は、化学の時間にこの小説を書き上げた、それでも何とかしようとするために。

 後は、隣の席の佐藤秋文にこの小説を渡すだけだ。

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