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佐藤秋文
窓が曇っていることに気が付いた。外が白く見える。いつもは、赤色のような山の木々が見えるのだが、今はあまりよく見えない。
「ここでもえー…議会をつくる、えー、そしてオーストリア…」
退屈な世界史の授業が始まり、25分が経つ。
「パサン」
先生の声しか聞こえない静かな教室で、音がした。音の方向に目を向けると、金田悠矢が教科書を拾い上げているのが目に入る。
「ガッシャーン、カラカラカラカラ。」
さっきより激しい音がした、金田悠矢は今度は筆箱を落としたらしい。みんなの視線が金田悠矢に集まる。俺も金田悠矢に視線を向けた。
不意に、金田悠矢と目が合う。金田悠矢はこっちを見て笑っていた。
金田悠矢は、天然なところがあり、ハプニングを引き起こしやすい体質であるのは、周知の事実であった。
俺も金田悠矢に笑い返す。
何秒か後には、みんな金田悠矢から視線を戻していた。俺も笑いながら視線を前に戻した。視線を戻すと、机の上に見覚えの無い白い紙が数枚出ているのに気付いた。