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よぅι゛ょとおじさん。〜神々の越境救済(クロス・レデンプション)〜  作者: 櫻井
クソ長い設定の章

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06.疑心

 窓から見ていた。


 ある日突然現れたこの世の人ではない人。神様が遣わされた人だから、見てはいけないし触ってもいけない人。


 わたしのお気に入りの場所にずっと座っている人。


 ときどき、森の中に入っていく。多分、森の泉にいっているのだと思う。


 夕飯を食べているとき、メアリが愛児(まな)について父さんと母さんに聞いたの。父さんたちは愛児の事がきらいみたい。イヤな顔をしたけど、メアリが知りたいことは全部おしえてくれた。


 わたしはしゃべると叱られるからだまって聞いていたよ。


 神々の愛児のお世話は、気付かれないように供えること。


 ご飯も着るものも、愛児の目のつく場所に置いてわたしたちは知りませんって顔をすること。


(あの人、ご飯食べていなかった。)


 わたしは、自分のお皿のなかのバゲットと干しにく。テーブルのうえのチーズを一切れ見つからないようにエプロンの中にかくして、あの人に持っていくことにした。


 窓からあの人を眺める。


 早く寝てくれないかな。わたし、眠くなっちゃう。


 じっと見ていたら夜なのに森の中に入っていったの。こわい時間なのにすごい。


 慌てて外に出て、木の下にエプロンをかくしたの。ご飯たべてね。おなかすくの、かなしいから。


 わたしのご飯がないとメアリが泣きそうな顔をするの。メアリの顔をみるとわたしもかなしくなるから、おなかがすくことはかなしいことなの。


 急いで帰って、窓から見てた。


 森から戻ってきたあの人は、エプロンに気づいたみたい。


 よかった。あんしん。おやすみなさい。




  ∵ ∴ ∵ ∴ ∵



 朝起きたら、ヤギたちを牧場に放つのがわたしのしごと。


 朝ご飯を食べて、父さんといっしょに小屋のなかをそうじして、新しいわらを敷いたらイレブンシズの時間。


 父さんは、お茶のあとにヤギたちの乳をしぼるよ。わたしとメアリはヤギたちにブラシをかけたりお世話をするの。


 朝ご飯を食べていたら、隣のエルガーさんがあわてたようすでやって来たの。父さんと母さんがエルガーさんと何を話していたかは聞こえなかったけど、父さんはそのままエルガーさんとどこかに行ってしまった。


 母さんは、困ったような怒ったような顔をしていてメアリに「神々の愛児には、絶対に近付いてはいけません」って言っていたのが少し怖かった。


 父さんがなかなか帰ってこないから、母さんとメアリと小屋の掃除をしたりしていつもとちがうことがうれしかった。


 夕方になって父さんは帰ってきたけど、すぐにまた出ていってしまった。


 今日は、皆おかしかった。


 父さんも母さんも、エルガーさんも村の皆も。いつもなら、マークたちがメアリを遊ぼうって呼びに来るのに来なかった。


 夕方にシャーリィだけがメアリに会いに来て、二人で何か話してた。ヤギのお水を運んでいたわたしに気付いたメアリが、何か決めたような顔をして、シャーリィがいつもみたいに笑って手をふってくれたのうれしかった。


 夜に、やっぱりあの人は森の中に入っていったから急いでご飯を届けにいって。そうしたら、エプロンがきれいにたたんであって。エプロンの上に森のなかでしか咲いてないお花まで置いてあって、あの人はとてもやさしい人なんだって思ったの。

 たぶん、おれい。うれしい。


 今日は、お昼と夜ご飯を半分ずつ持ってきたから昨日よりはおなかいっぱいになるといいな。


 急いで帰って、窓から見ていた。


 そうしたら、父さんが衛士(ガーダー)の人たちと帰ってくるのが見えて。本当は納屋に戻ったら朝まで外には出ていけないのだけど、気になったからこっそり母屋に戻ったんだ。



「――は、本当なんですか? 」


 母さんの声が聞こえる。


「ああ、プリペラン商会の若いのが話していた」


 この声は、アウヴェスさん。


「それでペティアの村は……」

「被害は出たが、再来年には持ち直すだろう」


 この声は知らない。アウヴェスさんといっしょにいたガーダーさんかな。


「ラホール様の騎士団が、巡回していてくれて助かった」

「本当に」


 やれやれといった空気が流れる。おとなの人たちは何を話しているのだろう。


「しかし、本当に盗賊たちは『神々の愛児』の真似をして村に入り込んできたのでしょうか」


(――!)


 こわい話だった。


 こわくて、こわくて。


「ラホール様に早馬で報せはしたが、元々の予定でも騎士団がこちらに立ち寄るのは一週間後。途中を急いで貰っても三日縮められるかどうか」

「ペティアの村に愛児が現れてから消えるまでが五日だったらしい」

「村が襲われたのは」

「消えた翌日だな」

「間に合わないわ! 」


 母さんの声が、わたしをしかるときといっしょ。声が高いときは、いつも心がイタくって不安な時だってメアリがおしえてくれた。


 母さんもこわいんだね。


「ああ。それでさっきまで話し合っていたんだが……」


 父さんと名前を知らないガーダーの人が、母さんに『これからのこと』を説明し始めた。

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