ハサミ、髪、一人っこ。
髪の毛を、切って、
拾い集める。
ハサミで切った髪の毛
キレイで ホコリのないフローリング。
散らばった自分の髪。
床に落ちたそれを 一本一本集めると、
それなりの量になった。
もう、切られた時点で
過去になったその存在は、
“私”にとっては もう、
どうでもいいものになった。
週末。金曜日の夜。
あたりは真っ暗で、
冬の寒さは 日に日に増していく。
一人で ワンルームに ぽつりといる世界。
まだ 暖房をつけていない部屋は、
それなりに冷えていた。
テレビもつけない部屋に
ただ 一人 佇んで、
テキトウに切った髪の毛を ゴミ箱に入れた。
毎日毎日 ヘアオイルをつけて
大切にしていた髪の毛は、
切った瞬間 ゴミになった。
ハサミを手に持って 空中を切る。
意味のないこの行為は、
それでも 今の“私”にとっては
必要な行為だった。
世界なんかどうだっていい。
人間なんかどうだっていい。
けれど、
生きている限り
どうしても ハサミでも 切れないものだった。
繋がり。
繋がりがないと、
生きることが 出来ないのだった。
一人でどんなに行動をしても
どうしても 意識に入ってくるもの。
それは、他人だった。
また、
髪の毛を ハサミで ジョキジョキ切る。
ざっくばらんになった
髪の毛は、
どこもかしこも 変な方向を向いていた。
切っても 切っても
切れないもの。
切ってしまうと
おかしくなるもの。
結局、
どんなに 一人で生きようとしても
生きられない。
寒さは 部屋にしみこんで
手を冷たく 白くした。
テレビをつけて、
賑やかにする。
スマホをとって
人の感想を見る。
ざっくばらんになった髪の毛は
それでも 少しずつ 伸びていく。
ゴミ箱のなかの髪の毛は
もう息をしていない。
過去になってゴミになって
それでもまた、明日、明後日、
髪の毛は伸びていく。
一人ぶって 独りぶって
それでも 人間と繋がって
明日、明後日、生きていく。