7鬼ヶ島
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鬼ヶ島。
その名の通り、世界を牛耳る鬼が集い暮らす島です。本島からは離れた地にあり、港などもロクに整備されていなかったため、交易による発展などは無く……もはや無人島に近い環境でした。
そんな鬼ヶ島ですが、現在、鬼ヶ島は別世界のように様変わりしていました。
人間を思うがままにできる鬼は人間を奴隷として扱い、鬼ヶ島の発展に尽力させたのです。
その結果、海には立派な港が建築され、本土からたくさんの物資が運び込まれ、世界一豊かな土地になりました。
島は綺麗な街道が整備され、豪華絢爛な屋敷やお店が立ち並ぶようになりました。 そして、一際目を引くのが巨大な巨大なお城です。 その名も天下城。
まるで本土の人間を睥睨するかのようにそびえ立つその巨大なお城は、まさに天をも統べんという有り様でした。
その天下城には城内に温泉が引かれており、豪華絢爛な浴場がありました。
鬼の王、滅鬼は極上の湯につかりながら、豪快に酒をあおっていました。
「極上の湯に美味い酒……後は良い女がいれば言うこと無しといったところだが……どうだ?知らぬか?」
「………………知りませぬ」
滅鬼が問いかけた相手は世話役の男です。 世話役の彼は感情を押し殺した声で答えました。
「さようなことはなかろう。貴殿は鬼を倒してみせた英雄なのだ。どのような女子でも好き放題にできたであろうに。なあ?桃太郎殿?」
「貴様……!」
「くくっ、良い顔をする。だが忘れておるまいな?貴殿の大事な老夫婦の命は誰のおかげで無事であるのかということを」
「くっ……申し訳……ございませんでした……!」
トポトポトポ。 頭を下げて謝罪した桃太郎に、滅鬼はお酒をかけました。
「よいよい。これは我からの贈り物だ。どうだ?美味いか?」
「っ!
桃太郎は文句を言うことも許されず、ただただ悔しさに震えます。
「美味いかと……聞いておろうがぁ!」
滅鬼は岩のように分厚い手で、桃太郎の頬を張り倒します。
「がぁっ!?」
桃太郎は人形のように吹き飛び、地に倒れ伏してしまいました。
「ふん、羽虫が」
滅鬼は気に入りませんでした。気まぐれで生かしているだけの弱者が、牙を剥かんと敵意を忍ばせていることを。
滅鬼は倒れている桃太郎の頭を踏みつけ、言います。
「その目は何だ?まるでまだ諦めていない……そんな生意気な目だ」
「……だったら何だ……!?」
「諦める、諦めないの段階ではないと言っているのだ。もうすでに戦いは終わった……いい加減己が無力を認めよ」
「っ……!」
滅鬼は呆れたように溜息をつき、
「……人間とはつくづく愚かよな。かような愚か者共に世界を好き勝手させるわけにはいかん」
そう言い残し、浴場を去るのでした。
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