25エピローグ
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
「……やったのじゃな」
「……ええ」
おじいさんとお姉さんは消えゆく滅鬼を見送り、現状を互いに確かめ合いました。
「おじい様!おば……お姉様!」
駆け寄ってきた桃太郎は二人の無事を確かめるように手を取ります。 そこへ、
「……よォやく終わったか」
「礼太……」
少年がフワリと舞い降り、
『まったく……無茶をする』
「ミツユキちゃん……」
この戦いを共に乗り越えた五人が集まりました。
『よくぞ、この戦いを乗り越えましたね。見事でした』
女神様の労いの言葉が、改めて戦いの終結を知らせてくれます。
「女神様……滅鬼はどうなったのじゃ……?」
『滅鬼は下界での依り代を失ったに過ぎません。今頃、冥界に送られたことでしょう』
「待てクソアマ。野郎がまた復活して面倒なことになったりしねェだろォな?」
『それは安心してください。基本的に神や悪魔は下界に降りることはできないのです。今回、滅鬼の降臨は天文学的確率の偶然が重なり、鬼達の悪魔召喚の儀が奇跡的に成功したに過ぎません。ふふっ、この世界のことを心配してくれているのですね?』
「ちっ……」
少年は機嫌を損ねてそっぽを向きました。
「女神様……このような決着で良かったのでしょうか?」
お姉さんが女神様に問いかけます。
「滅鬼さん……悪い人ではありませんでした。少しやり方を間違えてしまっただけで……きっと一緒に笑って生きていける未来だってあったかもしれません……」
「ばあさん……」
滅鬼はこの世界を守りたいと願っていました。人間を犠牲にするやり方を許すわけにはいきませんが、世界を想う心根はここに集った者達と変わらない……おじいさんとおばあさんはそう考えます。しかし、
『決着はついていませんよ』
「「え?」」
女神様の思わぬ返事に、おじいさんとおばあさんの声が重なりました。
『滅鬼はあなた達に世界を託したのです。あなた達の力と心を信じて。決着ではなく、むしろこれからが始まりではないのですか?』
「「………………」」
『あなた達がこの世界を長きに渡って守り続けていくのです。滅鬼との約束、違えてはいけませんよ?』
「当然じゃ。男と男の約束……決して違えたりせんわい!」
「そうですね。せっかく若返ったことですし、もうひと頑張りするとしましょう」
おじいさんとお姉さんは力強い笑みで応えました。
『もう大丈夫ですね』
女神様はそう優しい声で囁くのでした。そこへ、
「おいクソアマ」
少年が女神様に呼びかけます。
『何ですか?』
「とぼけンじゃねェ。俺を元の世界に返しやがれ」
「礼太……」
「礼太君……」
そうです。少年はこの世界の人間ではありません。そして、
『私も頼む』
「そんな……ミツユキちゃんまで?」
お姉さんはミツユキの手を握ります。
「ジジイ。テメェが言ったンだ。俺には倒れても立ち上がっていける力があるってなァ。おかげで借りを返さねェといけねェヤツを思い出しちまった」
「お主……」
『おばば様には生きていく理由を教えてもらった。だからこそ、次は私が見つけたい。私の生まれた世界で、私の生まれた意味を……私が生まれた世界で私が生きていく理由を』
「ミツユキちゃん……」
突然の二人からの別れの言葉。
ふと、おじいさんとお姉さんの視線が合います。 二人は寂しい気持ちを堪え、そして同時に頷きます。
おじいさんは少年に答えます。
「そうじゃな!存分にぶつかってくるがいい!お主はワシの自慢の孫じゃ!」
「ッ……誰が孫だ……」
「ははっ。じゃが、やりすぎるなよ。お主の力は強すぎるでな」
「……そいつは保証できねェな」
「………………」
冗談めかして鼻を鳴らす少年に、おじいさんはふと涙が込み上げてしまいます。 おじいさんは精一杯の強がりで笑顔を浮かべ、少年の背中を叩きます。
「達者でな。礼太」
「………あァ」
✳
「どうしても行くのね……ミツユキちゃん」
『…………はい』
「ミツユキちゃんがこんなに立派に頑張ろうとしているのに、ワタシだけメソメソしているわけにはいかないわね」
『おばば様……』
お姉さんは最後にミツユキを抱き寄せます。
「……ワタシ、頑張るわ。ミツユキちゃんも頑張って。だけど、辛くなったら、いつでも戻ってきていいんだからね?」
『……ありがとう』
お姉さんとミツユキは互いに名残惜しむようにゆっくりと離れます。
「またね、ミツユキちゃん。いってらっしゃい」
お姉さんは涙に濡れながら精一杯の笑顔でミツユキを送り出しました。
『……いってきます』
別れの言葉を交わしてすぐ、少年とミツユキの姿は光に包まれ、そして消え去りました。
少年とミツユキは女神様の手によって無事に元の世界へと送られたのでした。
*
そして月日が流れ、鬼との戦いが終わって一ヶ月が過ぎました。
鬼の脅威が去って、人間達は大喜び。少しずつ以前のような穏やかな暮らしへと戻っていきます。
一方、鬼はというと人間に二度と悪さを働かないことを条件に、鬼ヶ島で暮らすことを許されたのでした。
もちろん、人間の中では鬼達を根絶やしにしてしまえと過激な声も少なくありません。 しかし、桃太郎とおじいさんとお姉さんの必死な訴えにより、その声は退けられました。
現在、おじいさんとお姉さん、桃太郎の三人は現在、鬼ヶ島に家を構え、鬼ヶ島の復興に尽力していました。 否、三人だけではありません。
「まったく……この美しい僕が畑仕事とはね。嫌になるよ」
「そうか?オラはこの穏やかな生活も悪くねえが」
「美鬼様、手を動かしてください」
「むぅ……」
鬼達も今は真面目に働き、互いに支え合いながら暮らしているのでした。 自由奔放で贅沢三昧の生活から一変しても大きな不満が漏れることはありません。
「皆さん。今日も精が出ますね」
「ててて、天女様!?」
畑仕事の様子を見に来たお姉さんに、美鬼がたどたどしく応じました。
「もう……誰が天女ですか……」
若返ったお姉さんは鬼達から大人気でした。滅鬼を倒してみせた強さと敵であった鬼達を護ろうとする優しさ、そして見目麗しい容姿から、鬼達からは天女様と崇められていたのでした。
鬼達から不満が漏れないのはお姉さんの存在のおかげかもしれません。
「美鬼さん、ズル休みはいけませんよ?」
「滅相もない!これから粉骨砕身畑仕事に精を出す所存でしたとも!ええ!」
美鬼は鍬を担いで畑を耕しに行くのでした。
✳
おじいさんと桃太郎は力自慢の鬼達とともに土木作業に精を出していました。
「お、おじい様。あまり無理をなさらないでください」
身の丈の数倍もの大きな木材をいくつも担ぎ、運んでみせるおじいさんに桃太郎は心配そうに声をかけます。
「ほっほっほ。何のこれしき。今のワシには軽い軽い」
「そうは言いますが……」
見た目は普通のおじいさんなので、ふとした拍子にぎっくりいってしまわないか心配になる桃太郎でした。
おじいさんの土木作業が一区切りついたところで、おじいさんと桃太郎は砂浜に腰を下ろし、揃っておにぎりを食べ始めます。
穏やかな波の音と暖かな陽射しを浴びながらの穏やかな食事の時間。桃太郎とおじいさんの鬼ヶ島での楽しみでした。
「して、例の進捗はどうなのじゃ?」
「ええ。順調です」
「そうかそうか。それにしても、まさかお主が物書きになるとはな」
「ええ。俺は学びました。脅威を排除することだけが護るということではないのだと」
「……ほう?」
「滅鬼が言ったように、人は過ちを犯します。例え過ちに気がつき、正すことができたとしても、きっと時が経てばその過ちは忘れ去られ、再び過ちを繰り返すのでしょう」
「……そうじゃな」
「滅鬼のしてきたことはもちろん許せません。ですが、此度の戦いを無かったことにしてはならない。滅鬼の言葉を無かったことにしてはならない。この世界を守り続けていくためにも」
これこそが桃太郎が突然物書きに励むようになった理由でした。
「桃太郎や。ワシらの活躍を格好良く伝えるのじゃぞ?」
「ふふっ、善処します」
「ははっ。年甲斐も無く胸が弾むわい。楽しみじゃな」
おじいさんはニコニコと少年のような笑みを浮かべます。
「して、桃太郎や。題目は決まっておるのか?」
「そうですね……こういうのはいかがでしょう?」
桃太郎は木の棒で砂浜にサラサラと文字を綴ります。
「どれどれ?」
おじいさんが砂浜を覗き込むと、そこにはこのように書いてありました。
『続・桃太郎〜おじいさんとおばあさんの逆襲〜』
最初の設定は良かったと思うのですが、最終的に自分の力不足を痛感する出来栄えとなってしまいました。
それでもこうして最後までお付き合いくださった方、本当にありがとうございました。
欲を言えば、何でもいいのでコメントなどいただけると本当に嬉しいです。
次回は勇者と魔王の出てくるファンタジー(?)っぽいのを投稿していきます。その次にそれいけ魔法少女(男)の投稿を再始動しようかなと思っております。
次の作品も見てくださる方がいると嬉しいです。どうもありがとうございました。




