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episode96〜その手から〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。




最近都が騒がしい。


いや、都だけではない。


街の方からも何か起こり始めている…らしい。


しかし、カヌアにはあまり情報が耳に入ってこなかった。

ただ、感じてはいた。

フラフィー達の騒めきが沸々と伝わってくる。


それを聞こうにも、ウィルに会えずにいたので聞くに聞けなかった。


ウィルは相変わらず、公務が忙しいという。


それに加えサルミニア国の王族コインの件など、他にも色々と引っかかる事が増えて来たために、それらの対応もしていた。


地下らしき部屋の手がかりを探し、ロキに話を聞いたあの日から二週間程が過ぎていた。


そしてロキからは、その場所への手がかりを得られなかったため、一旦保留になってしまっている。


(とりあえず、ノゥリアがどこにいるのかわからない事には…会いたいなぁ)


カヌアはそう思いながらも、ある場所へと向かっていた。


あれはロキに会ってから、三日程経ったある午後に遡る。


武術大会での功績を称え、王座の間にカヌアにお呼びがかかったのだ。


国王陛下が例の約束を果たしてくれるとのことであった。


カヌアはその大会で、剣術以外の競技において全て二位というかなりの高成績を残したのだ。


陛下からの褒美をもらう条件として、三位までに入ればそれぞれに褒美を与えてくれるということであった。


よって計三つの褒美をもらえるとあって、カヌアはウハウハだった。


もちろん一つ目は‘王宮書庫室の禁書の閲覧ができる権限‘をもらうことだった。


そしてもう一つ目も、既に決まっていた。


それは今向かっているその場所への出入りを自由にしてもらうことだった。


その場所とは、王宮内の厨である。

彼女は最近、そこに入り浸っていた。


「フェリックス、ジョナ、パーム!今のうちよ!」


カヌアが陛下に褒美として、厨房への出入りを懇願した理由は一つ。


前世での美味しいものを再び食べたいという、その一心であった。


そして今、ピザ作りに励んでいる。


ドゥルンドゥルンのチーズを堪能したいのである。


そのために、厨房でのピザ作り講座を勝手に開いていた。


ただしここにはボスがいる。


そのボスをうまく言いくるめるのは、至難の業だ。


なのでボスのいない隙を狙って、気の合いそうな厨房使用人を手駒にし…あ、仲間にしていた。


「良い?生地はこの通り、何回も改良を重ねて、良い感じになったわ。この硬さを覚えといてね!耳たぶよ耳たぶ」


カヌアの奇行授業が面白いのか、三人は必死に耳を向けていた。


他の厨房の人達も興味はありそうなものの、ボスが怖いので見て見ぬ振りをしていた。


しかし、フラフィー達は興味津々に見ていた。


「後はこの生地を円形場に引き延ばすの。手のひらサイズより少し大きめになったら今度は…」


と言って、生地を回しながら真上に投げた。


そしてそれを受け取り、また投げる。


ある種のエンターテイメントである。


周りからは感嘆の声が上がる。


フラフィーも舞い踊る。


調子に乗ったカヌアは、更に高く上げ始めた。


すると急に厨房の扉が開いた。


カヌアは超絶ビックリした影響で、思いっきり天高くピザ生地をあげてしまった。


カヌア達は天井を見ずに扉の方をみた。


ボスだ。


厨房のボスこと、サザリーがそこに立っていたのだ。


「ごきげんよう。カヌアーリさん。今日は何を作っているのかしら?こんなに粉まみれになって」


「あ、はい…少しばかりパン作りを…殿下がお好きと聞いたもので。えへへ」


嘘である。


そもそもウィルの好きなものをカヌアは一切知らないし、まして今はまだ興味もなかった。


(ウィル様ごめん…。ピザができたらお裾分けします)


カヌアは心の中で謝罪した。


「そうですか…」


と言うと、カヌア達の手元を見るサザリー。


生地らしきものが見当たらないことに、気が付いたようだ。


「ところでそのパンの生地は、一体どこにあるのです?」


(え?)


カヌアも横目で少し辺りを見た。


するとそばかすの可愛い少女ジョナが、カヌアを肘で軽く突いて目だけを上に向けていた。


(まさか…)


そのまさかである。


先程カヌアが驚いた衝撃で投げたことにより、生地が天井にへばりついてしまったのであった。


「生地はですね、ただいま発酵させているので、涼しいところに置いてあります。ふふふふふふふふふ」


咄嗟に誤魔化したカヌア。


サザリーはとっても怪しんでいたが、後片付けをきっちりするようにと言って部屋を後にした。


(フラフィーめっちゃ睨んでたよー)


そして一同はホッと息を吐いて、力が抜けていた。


「カヌア様、どうします?あれ」


と言って天井を指さしたのは、眼鏡をかけた青年フェリックスであった。


「あれはもう食べれないわね…少し剥がれ始めてるし…何か長いもので…」


と言ってカヌアが周りを見渡そうとしたその時、再び厨房の扉が開いた。


一同はビクッとしたが、今度はウィルであった。


ウィルが真っ直ぐに、カヌアの所へと来る。


しかし、先程の生地が既に半分くらいまで剥がれ始めてたのに、カヌアは気が付いた。


(ヤバいっ!このままだとウィル様の頭に…っ!)


するとカヌアは、一直線に来るウィルの腕を手前に引っ張った。


「ウィル様っ!」


ウィルは驚いた表情のまま、前のめりになる。 


その瞬間ボフッという音と共に、彼の視界が遮られた。


その場にいた全員の背筋が凍りつく。


(あ、あれ?まずい)


そう思うカヌア。


そうである。


その生地がウィルの頭に、見事命中したのである。


カヌアが避けさせるため、腕を引いたのが逆にこのような結果に及んだでしまったのだ。


天井からの落下地点を予測するには、中々難しいものがある。


「………」


ウィルは訳が分からず、黙ったままだ。


「あの…ウィ、ウィル様…」


すると、笑いを堪えてる少女パームを見た。


それをこづくジョナ。


生地を恐る恐る捲って外すカヌア。


ウィルはいつもの潤しい姿とは、打って変わって頭部を真っ白にしていた。


頭の中もそれに同じ。


そして本人はというと、一点を見つめていた。


「ウィル様?あの…い、行きましょう!」


と言ってカヌアはウィルの手を引き、厨房を出た。


(あぁウィル様の顔が…でも…でも…ふ、ふふふふ)


カヌアは笑いがどうにも込み上げてきてしまい、途中で足を止めてしまった。

そして、それを声に出してしまった。


「ふふふ…ウィル様……ごめんなさい…あの…髪の毛とお顔が…ふふ…ふふふ…お綺麗にするの…お手伝いします」


ウィルは怒ることもなく、むしろカヌアのその無邪気に笑う姿を見て嬉しくなっていた。


「手伝ってくれるんだな?最後まで」


「ん?はい?もちろんです」




(なぜこうなる…)


カヌアは先程の生地を投げたせいで、ウィルを真っ白く汚してしまった。


その御身を綺麗にするために…今、浴室にいた。


ウィルは裸までとはいかないが、汚れた服を全て脱ぎガウンに着替えていた。


そして空のバスタブに仰向けに横になっていた。


その粉まみれの頭を、カヌアは暖かく濡らしたタオルで拭っている。


(この状況…誰にも見られたくないんですけど…それにしても綺麗な顔だな…あ、左目のホクロ…)


カヌアは目を瞑っているウィルを、ここぞとばかりに眺める。


するとウィルが、バチっと突然目を開けた。


それに驚いたカヌアは顔を離し、ついでに目も逸らせた。


「あの、先程はすいませんでした。ピザの生地を投げてたら、天井にくっついてしまい、それがウィル様の頭の上に…」


「ピザ?」


「はいっ!丸い生地の上に、バジルやトマトなど好きな具材を乗せて、更にチーズをたっぷりとかけたものを窯で焼き上げるんです。それはもうおいしくておいしくて…」


カヌアは興奮して、自分のやらかした事を忘れかけていた。


「そうか、それは食してみたいものだな」


そう言うウィルに、カヌアは嬉しそうに返事をした。


「はい!完成したら一番最初に持っていきますね!」


(お詫びの意味を込めて)


カヌアはウィルの髪の毛を綺麗に洗い流す。


軽く顔や髪の毛をタオルで拭う。


するとウィルがカヌアのその手を止めた。


そしてその手を優しく握ったまま、自身の唇へと滑らせる。


(ぬぁ!や!何!?)


そのまま手を唇に留め、ニコッと笑うウィル。


「柔らかいな」


カヌアは顔が真っ赤になりながら、パッと手を離した。


「ウィル様、お風邪を召します。早く上がりましょう」


と言って、カヌアは先に出てきてしまった。


(心の臓が…何よなに?ナニ?意識が飛びそうだった…あぁ…やっぱり…止めるのは無理そう…私がウィル様へのこの気持ちは…)


心の中で言う前に、大きく深呼吸をした。


すると浴室から出て来たウィルは、髪が濡れたまま頭からタオルを被せていた。


するとカヌアの手を引き、部屋のソファーへと座らせた。


その隣に座るウィル。


「ん…最後までしてくれるんだよな?」


と言って頭をカヌアに向けて言う。


(あ、拭けってことか…)


無言で頭を優しく拭くカヌア。


(フッ、犬…よーしよしよしよしよし)


カヌアは勝手な妄想で気を紛らわした。


ある程度乾かしたら、タオルを取り払って髪を整えるために、手でウィルの髪を梳かし始めた。


(あ、普通手でやらないか…雑だと思われたかな?櫛…櫛は…)


とキョロキョロ周りを見渡すカヌア。


するとウィルの手が、カヌアの手首を捕らえた。


「止めるな」


ジッと見つめるウィル。


カヌアはその目に吸い込まれそうになる。


ド…クンッドクンッ


(私は…私はこの瞳をシッテイル…?)


しかし、その時部屋の扉がノックと共に開いた。


「ウィル様!あ…大変失礼しました。しかし、急用で…都が少し混乱しておりまして…」


と少し取り乱したように入って来たのは、カブラであった。

後ろにワイムもいる。


「何だ?何があった?」


ウィルが驚いて聞く。


「都の…いや都だけでなく街の方でもなのですが、民達が穴という穴を塞いでます…」


「えっ…!?それってどういう…」


(あらやだ!?マジでどういう意味!?マジで!!)


カヌアが過剰に反応して言う。


頭の中がおかしい方向に向かっていた。


カブラはなんて言って良いのか分からず、困惑して言った。


「実際に見ていただいた方がよろしいかと」


「そうだな。行った方が早い」


ウィルも訳がわからないという感じに応えた。


「ウィル様っ!私もお供してもよろしいでしょうか!?その…異様な光景が…あ、いや、フラ…フィー達の気配が気になります」


カヌアは自分の目でも確かめたかった。

一体都で何が起きているのかを。


「あぁ、だが側を離れるなよ」


ウィルは心配しながらも承諾した。


「はい!必ずお役に立ってみせます!」


(ん?本当に連れて行って大丈夫か!?)


ウィル達は色んな不安の中、都へと向かった。


ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。


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