episode95〜二人目の記憶〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
先程、弓術場に行ったカヌアとウィル。
地下室への手がかりである、一人目のノゥリアがいなかったため、心当たりのある二人目の人物の所へと、向かおうとしていた。
「折角なので、レグ達に乗って行きましょうか?」
ニコニコ笑顔で、カヌアは厩へと向かっていた。
そして乗馬がてらカヌア達が向かったのは、ミザールの街からほど近いリヴール家の屋敷だった。
「ふふふ。久しぶりの我が家です!ここにいます!」
とカヌアは言うと、家の中へ入って行った。
すると、突然の帰宅に驚いた使用人のエミリアが、慌てて出迎えにきた。
「カヌアお嬢様!?おかえりなさいませ!あれ?でも今日は…ハッ!ウィルテンダー殿下!?えっ!?なぜ!?まさか!カヌア様…」
「ん?エミリアただいま!今日はちょっと…用事があって…」
カヌアがエミリアと話していると、その声に反応した兄がやって来た…いや、抱きついて来た。
「カヌアッ!!今日帰るなら連絡してくれれば良かったのに!僕はてっきり明日帰るのかと…」
そう言うのは四男のミルサ、久しぶりの登場である。
その騒ぎに、さすがに家の者達が集まって来た。
「これは!ウィルテンダー殿下!本日はいかがいたしました?」
母アメリも同じように驚き言う。
「あぁ、急に来てすまない。今日ここに来たのは…」
(俺も、今しがたここに来ることを知ったのだが…しかも誰に会うかもまだわからない…なんて言えば…)
ウィルがチラッとカヌアを見た。
カヌアがニコッと笑って、今日の目的を言おうとした。
しかし、何やら先走った母アメリが口を出した。
「ウィルテンダー殿下…私が言うのも何ですが、うちの娘はかなりのお転婆で…それに加え、武道にまで手をつける始末。しかし、正義感は人一倍あり、弱者や強者に分け隔てなく接する事のできる、心優しい娘に育ちました。どうか…不束過ぎる娘ではありますが、よろしくお願いします」
すると近くにいたエミリアやミルサが、涙を流しながら頷き拍手をしていた。
(ん?何だ?ちょっと待てよ?それって…)
カヌアが否定しようとしたその時、これまた場を混乱させる余計な一言が出た。
「あぁ。それを含めて受け入れてるつもりだ。いや、全てをだ。だから安心していい」
「えっ!?ちょっ、ちょっとお待ち下さいっ!何だか話がよく見えないのですが!?今日はロキに会いに来たんです、私達」
カヌアが焦って言った。
「え?ロキ?あ、あぁアルガダの遠征の帰りに出会った少年か。確かリヴール家で世話してるんだったな。そのロキが例の二人目?」
そう言うウィルの言葉に、周りは首を傾げている。
「あの、お母様、ロキは今どちらにいますか?」
カヌアがそう聞くと、アメリはエミリアの方を見た。
「厨にいるかと。只今呼んで参りますので」
エミリアが言うので、応接間で待つことにした。
待っている間にウィルが先程の会話の中で、少し疑問になってた事をカヌアに聞いた。
「そういえば、先程ミルサが明日帰るような話をしていたな?」
「そうですよ?明日には帰る予定です。一日早く来ちゃいましたけどね!あぁ…荷物をまとめなきゃ…」
カヌアのその言葉に、ウィルは驚いた。
「ん?え?ちょっと待て!明日には王宮から出るのか?」
「え?はい、そうですけど…あれ?言ってませんでしたっけ?もう大会も終わりましたし、いつまでもお世話になるわけには…」
しかし、ウィルはカヌアの手を取りそれを拒むように言った。
「いや、こちらとしてはいつまでもいてもらって構わない…むしろずっといてくれても…」
ウィルがここまで言ってるのに、気づかないようにしてるのは気持ちに踏み込めないからであった。
(んー…困ったな…これ以上は一緒にいない方がいい気が。それともあれか?ウィル様は急に泊まりに来てた友達が、一斉に家からいなくなったから寂しくなっちまったっていう、あの感覚か?しかも家族の前でこう言われると…絶対…お母様が…)
「あら?カヌア?別に無理に家に帰って来なくても良いのよ?殿下がここまでおっしゃってくれているのだもの。お言葉に甘えても良いんじゃないかしら?」
カヌアの予想通りに母アメリは言う。
そんなアメリにニコッと笑い返すウィル。
(はいはいはい…やっぱりね…何だろ?この二人の共謀感…はぁ…まぁ快適極まりないから、別に私としては良いんだけど…でも期限は決めた方がいい気がする)
カヌアが悶々と考えていると、ロキが部屋に入って来た。
他の家族はごゆっくりと言って、気を遣って部屋を後にした。
ロキが驚きと嬉しさで、何故かモジモジしている。
まさか、ウィルもいるなんて思っていなかったロキ。
そのため、しどろもどろな挨拶になってしまった。
「カヌア様、お帰りなさいませ…ウィ、ウィルテンダー殿下!お帰りなさいませ?ん?」
「ふふふ、ロキ!ただいま!ごめんね、お仕事中に。元気だった?」
カヌアがそう聞くと、ロキは静かに頷いた。
フラフィーがとっても嬉しそうだ。
「今日はちょっと聞きたいことがあってね。こちらへ」
カヌアはロキを椅子へと座らせた。
「ロキ…私達が出会った時に、ある事を馬車の中で話してくれたの覚えてるかしら?以前あなたは…その…暗い所に住んでた事があるって…いやな記憶なら無理にでも思い出さなくて良いんだけど…ちょっとその事について聞きたくて、話せるかしら?」
しかしロキは特に嫌な顔はせず、むしろ少し驚いた表情でこちらを見た。
(確かに言ってたような…よく覚えてたな)
ウィルは静かに、二人の会話を聞いていた。
「はい…確かに言いましたね。うろ覚えですが、幼い頃暗い所で住んでいました…ですが、あまり記憶がないんです。お役に立てるか…」
少し不安そうに口を開いたロキ。
カヌアはそんなロキの手を握って言う。
「ふふ、大丈夫。思い出せなくても良いのよ。元々無いに等しい情報だもの。気楽にね!知らないなら知らない、わからないで良いのよ、全然!ね!」
その優しい声に、ロキもフラフィーも少しホッとしたようにニコッと笑う。
そして、簡単な質疑応答が始まる。
「ふふ、では聞きます。そこは地下だった?」
「わからないです。でも窓がなかったような…」
「その場所の匂いとかは覚えてる?」
「匂い…う〜ん、今どんなだったかと説明するには、難しいですけど…それに近い匂いを嗅げば、思い出すかもしれないです」
「確かにその可能性はあるわね。では、その場所の色は…赤い色?青い色?」
「えと…随分と具体的ですね。うーん、暗くて見えなかったけですけど…たまに感じたのは、青いような…記憶が…でも本当に暗かったので…ただ、目が慣れてくるので何となくは…う〜ん、やっぱりわからないです」
(暗い所だと確かに見えないから、青く感じる事があるだけなのかも…)
とカヌアは思いながらも、質問を続けた。
「暗いまま過ごしてたの?明るくなったりとか、したりとかは?そういうことはなかった?」
「な…かったと思います…あ、でも一度だけ、誰かが僕をその場所から出してくれた時に明るく…………」
「ん?どうし…」
カヌアがそう言いかけた時だった。
ロキの眼の色がいつも以上に、黄色くなっているのがわかった。
「ロキッ!?ロキッ!?大丈夫!?もういいよ!もう…」
カヌアは焦って、ロキの肩を軽く揺さぶった。
「あの時…はっきり覚えてます…あの時の壁の色は…一面…全て…そう…真っ赤でした…」
カヌアは息を呑んだ。
そして、ウィルの方を見ると、同じように眼を見開いて驚いていた。
少し冷や汗か、あの夢を見た直後ほどではないが、少し表情がこわばっていた。
「ウィル様っ!?…はいっ!はぁーいっ!この話はここまでにしましょう!エミリアッ!冷たくて酸っぱくて美味しーい果実の飲み物を持って来てちょうだい!あとお菓子もね!」
カヌアは二人をこれ以上暗い記憶に落とさないようにと、話を一度強制終了した。
チラッチラッとウィルとロキを見る。
(何だろう…やっぱりあの夢で見たものは…場所は…この世界のどこかにあるんだ…)
そう確信したカヌアは、話題を変えた。
「そうそうウィル様っ!先ほどのことなのですが…その…ウィル様がよろしければ、もう少しお世話になってもよろしいですか?そうですね…今二人で調べてるこの件が終わるまで、というのはいかがでしょう?ほら、近くにいた方が話し合いも情報も伝えやすいですし」
(あくまで業務だ業務。それ以上は何もない!)
カヌアは思い切って言ってみた。
するとみるみるうちに、ウィルの顔色が良くなっていった。
ウィルの答えはいつだってこうだ。
「そうか。俺はいつまでいてもらっても構わない。このまま一生だって…」
(ん?さっきも同じこと言ってたような…)
カヌアはとりあえず承諾を得られたので、このまま王宮への滞在を延長する事にした。
帰り際にロキにごめんと思いながらも、一番重要なことを最後に聞いた。
「ロキ…今日はありがとね!無理させちゃったね…ごめん…」
「大丈夫ですよ…僕もあの頃をこんなに思い出すことはなかったので…最後まで話せずにすいませんでした。またいつでも僕のできることならお手伝いしますので」
ロキは何一つ嫌な顔せず言ってくれた。
「ありがとう。ごめん…それならついでに申し訳ないんだけど、最後にもう一つだけ聞いて良い?」
ニコッと頷くロキ。
「その場所がどこにあるのか覚えてる?」
しかし、その問いにロキは首を振りながら応えた。
「ごめんなさい…覚えてないです」
「そっか!いいのいいの!本当今日はありがとね!今度またロザリーのお店に一緒に行きましょ!またね!」
と言い、笑顔でロキと別れた。
そして、王宮へと戻り厩から部屋までの道で、ウィルは気になっていたことを聞いた。
「先程のロキへの質問の時に、何故匂いの事を聞いたんだ?」
「人の五感の中で、匂いっていうのはかなり敏感に覚えてる事があるんですよ?ほら…」
と言ってカヌアはウィルの匂いを嗅いだ。
ウィルは急にカヌアの顔が近づいて来たので、顔が真っ赤になった。
「うん!ウィル様の匂い!あとはサラの匂いとか、ニーナ様の匂い…カブラ様やリュカ様の匂いも、わかりやすいですね!」
カヌアは率直に言う。
「なるほど…確かに…だが、こういう風に直接匂いを嗅ぐのは、他の人にはしないで欲しい…俺だけで…」
「あっ!ごめんなさいっ!そうですよね!?人に匂いを嗅がれるのってなんか嫌ですよね!失礼しました!気をつけます!」
ウィルに注意されたと思ったカヌアは、素直に受け入れた。
「あ…あぁ…わかってくれればいいんだが…嫌とかそう言うのではなく…」
とウィルは言いかけたが、とりあえず他の人にしないという事が聞けたので良しとした。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




