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episode92〜インバース〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。




薄暗い部屋の中…いや、廊下なのかもしれない。


どこにも窓がない。


ここは一体どこなのか?


すると、視界が少しずつはっきりしてきた。


(ん?ここは…?何…これっ…)


その場にいたカヌアは鳥肌が止まらず、恐怖で言葉が出なかった。


その部屋らしき所は電気も点いてなく、窓もないため薄暗かった。


しかし、カヌアはその異様な部屋が見えていた。

その左眼を通して…


それは一面、真っ青の壁で覆われていた。


そして恐怖心の中、足が進む。


誰の意思なのか、カヌア自身の意思なのかわからない。


そして、その視界はある一冊の本の前で止まった。


(これは…前に夢で見た二重螺旋の本…)


そして、カヌアの腕がその本へと伸びる。


本を開くと、真っ暗な闇が記されていた。


そしてそのまま闇の中に引きづり込まれる。



バッ!


カヌアの目が勢いよく開く。


それと共に、身体をガッと起こした。


汗が顔を滴る。


少し荒くなった呼吸を、ゆっくりと整えるカヌア。


再度眠りについていたその部屋には、今は誰もいなく、部屋の電気は消されていた。


横のテーブルには、水差しが置いてあった。


カヌアは動揺しながら、思い出した。


(何…今の…夢…嫌な…ん?なんだろ?嫌ではなかったな…でも何か怖かった…私はここに、行かなきゃいけない気がする…)


すると、更に思い出したカヌアは、掛け物を勢いよく剥いだ。


「ハッ!!ウィル様っ!」


そして、ウィルの自室へと猛ダッシュで向かった。


部屋の外には護衛の者がいたが、カヌアはその者達が全く目に入ってなかった。


勝手に扉を開けたカヌアは、勢いよく部屋に入りウィルのベッドへ近づいた。


無礼極まりないカヌアに、今はもはや誰も咎める者はいない。


そこにウィルは寝てはおらず、ベッドの端に座って何やら顔を手で覆って俯いていた。


汗をかいているように見える。


側にはカブラがついており、飲み水を差し出そうとしている最中だった。


「カヌア様!?お身体は大丈夫なのですか!?一体こんな夜更けにどう…」


と言おうとしたカブラは、何やら察した。


ウィルに少しでも水を飲ませようとしたカブラだったが、拒否されたため部屋を出ようとした。


そのすれ違い様に、カヌアがその水を奪って飲んだ。


そして、その水差しと共にウィルの所へと駆け寄った。


「ウィル様!飲んで下さい!」


と言って水を渡す。


その手は少し震えていたが、カヌアの必死の思いと共に、ウィルはコップを受け取って飲んだ。


水差しを横のテーブルに置き、カヌアは息を整えて言った。


「ウィル様…私達に一体何があったんでしょうか?トゥバンの丘で光の正体を知ろうと、遺跡にいましたよね?でも、開かずに…気づいたら部屋のベッドの上にいました。特に身体に痛みも傷もなく…ここまでどうやって来たのかもわかりません…」


「…あぁ。俺も同じ状況だ…気が付いた時には、自室のベッドだった。ここまでどう来たのかは覚えていないが、カブラに聞いたところによると、俺らが中々戻ってこなかったために探しに来たらしい。そこで、遺跡にいたのを発見したらしいんだが…その時には既に意識がない状態で、床に伏せてたみたいなんだ。周りには誰もおらず、それに…光のような物は何も見えなかったと…」


ウィルが少し重い口調で話す。


カヌアの震えは、少しずつ大きくなっていった。


だが、気をしっかりしなければと思い、口を開いた。


「そう…ですか…ウィル様は、お怪我ありませんでした?」


「いや、何ともない。カヌアは?」


「大丈夫です。本当に何ともないのですが…実は…」


カヌアは歯切れの悪い返事をすると、先ほどの夢の話を事細かに説明をした。


すると、ウィルの顔が見る見るうちに青くなり、再度汗が滴るのがわかった。


その様子にカヌアは慌てて、ウィルの顔の汗を両手で拭った。


「ウィル様!?ウィル様?大丈夫ですか!?あ、汗が…すごいです…」


カヌアがとても心配そうに声をかける。


するとカヌアのその手をそっと触り、握った。


「信じられない…かもしれないが…たった今俺も同じような夢を見た…」


ウィルは耳を疑うような事を言い出した。


しかしカヌアは非常に驚いたが疑う事は一切せず、汗ばむウィルの手を握り返して聞いていた。


「それが…カヌアの言う夢と少し違うんだ…俺が見たのは…部屋の壁中が真っ赤だった。薄暗い印象はなく、視界はよく開けていて明るかったと思う。同じように部屋の先に進むと例の二重螺旋の本があって、俺はそれを手にした。本を開くと、強い光が起こり吸い込まれるように中へと…」


少し具合が悪そうに話していたウィルに、カヌアは制して言った。


「ウィル様…そのお話、明日にでもまたしましょう。それより今は…とても体調がよろしくないように見えます。なので、一旦お休みになられては…」


ウィルはカヌアの手を握りしめる力を強めた。


かと思えば、すぐに少し弱めた。


何かを堪えるように。


その何かを察したカヌアは、ウィルに聞いた。


「あの…ウィル様?よろしければ…落ち着くまで、もう少しお側にいましょうか?あ、でも一人の方がいいのであれば私はすぐに…」


すると、ウィルは少しホッとしたのか、目の前にあるカヌアの肩に頭を預け小さく言った。


「頼む…一緒に…そうしてくれるとありがたい。また目を閉じるとあの夢を…光景を…見そうで…怖い…」


カヌアはそっとウィルの頭を撫でて言った。


「はい…私も同じです。あの夢は、何度も見るには心が持ちませんから」


そうして、カヌアはウィルの側にいてあげた。

朝まで…


「えっ!?朝!?」


カヌアはベッドからグインッとその身を起こし、何かを確認した。


(セーフ…このシチュエーション何回目だよ…私、絶対に酒には手を出さないようにしよう…ハッ!それより!)


カヌアは隣を見た。


すやすやと眠るウィルは、昨夜の事が嘘のように穏やかに寝ている。


カヌアもウィルと一緒にいたせいか、安心していつの間にか眠ってしまっていたようだった。


(大丈夫そうだな)


そう、ホッとするカヌア。


ベッドを出ようとした時、腕を引っ張られる感覚があった。

ウィルだ。


(起きてたんかいっ!)


そう思うカヌアに、寝起きのウィルは少し甘えたように言った。


「気の済むまで側にいてくれるんじゃなかったのか?」


(あーそうだったそうだった。確かに気の済むまで側にいますよって言っ…てない!言ってない!)


カヌアは騙されそうになった。


「お言葉ですがウィルテンダー殿下、わたくしそんな事おっしゃってませんよ?」


「ダメか…でもおかげで昨夜は安心して眠れた。礼を言う」


と言いながら起き上がるウィル。


もういいだろうと思い、ベッドから再度出ようと試みるカヌア。


「それは良かっ…」


しかし、更に腕をグッと引っ張られた。


「ふふ、やっぱり俺はカヌアじゃないとダメみたいだな」


屈託のない笑顔でウィルは言う。


ド…キンッ…


カヌアは心臓を鷲掴みにされそうになった。

が、照れながらも騙されまいと言葉を出す。


「この間みたいにもう騙されませんからね!とりあえず話をしま…」


ぐぅううう、、キュルルル…


「クククククッ、そうだなまずは朝食をよこせと言っているもんな」


カヌアは顔が真っ赤になりながらも、自分の身体のためにその言葉に従った。


ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。

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