episode91〜逃亡〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
カヌアは今、その鮮やかな空色のドレスを身に纏い…
猛ダッシュで王宮内の廊下を走っていた。
そして、部屋へと戻ったカヌアは、勢いよく部屋の扉を閉める。
「ハァハァハァハァ…何なのっ!?何っなの!?」
カヌアはとんでもなく機嫌が悪くなっていた。
カブラの制止を振り切って来たが、すぐに部屋に辿り着いた彼らが部屋の扉を叩いた。
カヌアは居留守を使ったが、大きな独り言と切らしたその息でバレバレであった。
部屋の扉を開けたカブラは、そのカヌアの姿を見て一度扉をそっと閉めた。
そして、振り返り主人に言う。
口に出さずに言う。
「(とてつもなく怒っておりますっ!!)」
一度深呼吸をし、意を決して再び扉を開け、中に入ろうとした二人。
彼らに対し、牙を剥き出しにした獅子のような顔をして、カヌアは言った。
「私っ!!婚約者になったつもりはありませんよ!!」
ウィルは一瞬怯んだが、こんな事で負けてられないと思い口を開いた。
「お、俺じゃ嫌なのか?」
(嫌?嫌では…ん?ちょっと待てよ?ウィル様、次期国王、婚約者次期王妃…大役中の大役、こんな私、無理え?無理…無理無理無理っ!嫌だ!)
カヌアは脳内変換で考えた末、即座に出た言葉がこれだった。
「嫌っですっ!」
部屋中に響き、ウィルの脳梁にまで響き渡った。
灰になりかけていたウィルに、更に追い討ちをかけるようにカヌアは続けた。
「私にっそんな大役は無理です!もっと相応しい方がいらっしゃるはずっ!ウィル様の将来を、私のせいで真っ暗にさせるわけにはいきませんっ!それに…私は私は…誰とも結婚しませんからっ!」
と言って泣きながら、カヌアは逃げるようにその部屋から飛び出した。
〜令嬢、逃亡者になる〜
(い、嫌だ?嫌だ…?こんなにはっきりと…嫌…だったのか…俺の事…)
ウィルがこの世の塵となろうとしていた時、カブラが原形に留めさせようと必死に言った。
「ちょっ!ウィル様!!こんなところで微塵になりかけてどうするんですか!?ここまで来るのに何年かかったと…とりあえず追いかけますよ!」
その言葉を聞いて、元の形に戻ったウィルは、急いで追いかけた。
カヌアはドレスのスカートを、大きく抱えて無我夢中で走る。
すると誰かがそんなカヌアに気が付き、手を引いて止めた。
「カヌア?そんなに急いでどうしたの?えっ!?泣いてるの?」
驚いた表情をして言ったのは、スプルミア国の第二王子ルヒトであった。
「ルヒト様…」
そんなカヌアを見てルヒトが言う。
「ねぇ…カヌア?僕ならそんなに泣かせたり、悲しい思いはさせないよ?スプルミアにおいでよ。僕の大切な人として一緒に…」
ルヒトの言うその言葉に、過剰に反応したカヌアはもう止められなかった。
「嫌ですっ!!私はどの国へも行きませんっ!結婚もしませんからっ!誰ももう…もう私に構わないで下さいっ!」
ヒステリーを起こしていた。
〜令嬢、ヒステリックになる〜
いつものカヌア状態ではないその姿に呆気に取られ、呆然とその後ろ姿を見るルヒト。
今じゃなかった…今のタイミングじゃなかったのよ…
全ての人を振り切って逃げるカヌア。
そのまま厩へと行き、何事かと声を掛けようとしたリアムにまで威嚇の目を向けた。
そしてドレスのままレグにまたがり、勢いよく走らせた。
薄らと空が曇っている。
いつもなら見えるはずの満天の星が今は見えない。
カヌアはトゥバンの丘まで来ていた。
レグから降り、その身体をひと撫ですると、カヌアは大きなため息をついた。
(やってもうた…)
ここまで来る間に頭が冷えて冷静になったのか、自分の行動を反省していた。
(でも…皆、来い来いって言うけど、私にだって今の生活もあるし、家族だっているのに勝手すぎるよ…ましてや国を担う身分の方々…荷が重すぎる…何を考えているんやら)
カヌアは少し、人間不信に陥っていた。
しばらくすると、馬に乗って追いかけてきたウィルがゆっくりと近づいて来た。
カヌアはレグの身体を盾にして、身を隠す。
バレバレなのはわかっている。
「ウィル様…お一人ですか?」
カヌアは顔を覗かせて言う。
(警戒されてるな…)
「あぁ、丘の手前でカブラを待たせている。今は俺と…このアルだけだ」
すると、ゆっくり愛馬から降りたウィルは、近づくのを我慢して言った。
「その…すまなかったな。困らせるつもりはなかったんだ。そんなにカヌアが嫌がるとは思わなくて…てっきり俺は…その…少しは慕ってくれてるのかと思っていた…から」
「私も…すいませんでした。頭が混乱してしまい、あんな行動を取ってしまって…ウィル様のことは自分の中でも慕っている…方かと思います。でもっでもですよ?その嘘に巻き込まれたこっちの身にもなって下さい!」
「嘘…か。嘘をついたつもりはないんだ。全て本心だから。俺がカヌアへの気持ちは…」
まん丸の月が雲間から姿をあらわにして、ウィル達を照らした。
すると丘全体に違和感の風が迸った。
(ん?何…?)
二人は同時に辺りを見渡す。
違和感の正体はすぐにわかった。
トゥバンの丘の遺跡の方が、強く光っていたのだ。
「ウィル様…何でしょうか?」
そのカヌアの言葉に、ウィルは頷いた。
二人は愛馬に乗ると、すぐさまその光の方へと向かって行った。
遺跡に着くと何やら、奥の隙間から光が漏れているのがわかる。
しかし、どこが取っ手なのか、どこからどう開ければいいのかがわからない。
どうにも開けられないのだ。
カヌアはダメ元で小さく呟いた。
「ヒラケゴマ…」
開かないに決まっている。
「ゴマ?」
ウィルは謎すぎるその言葉に、反応した。
カヌアは急に恥ずかしくなった。
そして何事もなかったかのように、ウィルに質問した。
「ウィル様?アルガダの遠征から帰られた後、ここに来ました?」
「あぁ、一度な。確かに蛇のような二重螺旋の模様が、石に描かれていたな…しかしその時はこのような違和感はなかったし、ましてや光など帯びてはいなかった」
「そうですか…なぜ突然…これは一体どうしいたら…」
その瞬間、カヌア目の前が真っ暗になった。
そして、次に目を開けた時には、王宮の仮自室のベッドの上であった。
どのくらい寝ていたのか。
窓の外はまだ暗い。
「カヌア様!?お目覚めになられました!?どこか痛みはありませんか!?」
今にも泣き出しそうな声で言って来たのは、王宮侍女のリリィであった。
「え?ん?リリィ…?私なぜここに…あぁ…すごい眠い…何だろ…確か、ウィル様と…一緒に…丘…」
すると、カヌアは物凄い睡魔に襲われ、再び眠りについてしまった。
その頃、同じ時刻にウィルも同様に目が覚めていた。
心配して声をかけたのは、側近のカブラであった。
「ウィル様っ!?大丈夫ですか!?お怪我は!?」
「ん?…あぁカブラか…なぜ部屋に…あれ?カヌア…は?」
頭がはっきりしないような話し方で、ウィルは言う。
「カヌア様は自室で寝ておられます。お二人共、丘から中々お戻りになられなかったので…えっ!?ウィル様!?」
カブラが状況を説明している間に、とてつもない睡魔に襲われたウィルもカヌア同様、またすぐに眠りについてしまっていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




