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episode90〜騎士様、そして悪魔〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。




昨夜のコインすり替え事件が未遂に終わり、その後サルミニアの王子達に、王族コインの例の疑惑について話した。


双子の王子達は非常に驚いていたが、どこか納得する部分もあるようだった。


アルデリアの国の人間が、重罪に関わっているとしたら、国際問題になりかねない。


早急に解決しなければならないので、ウィルはこれから忙しくなりそうだった。


(マジで人の上に立つ人って大変だな…ましてや頂点に近いお方。近くに居るだけで凄いことなのに、そんな人を側で支えるなんて…私には到底出来ないよ…好意だけでどうにかなるような人じゃないんだから…しっかりしなきゃ…)


カヌアは再度、ウィルと自分の立場を確認した。


そして社交界三日目の今日は、以前遠征した時のキルラとの約束事を果たそうと、都へと繰り出していた。


社交界の前に、キルラがカヌアを誘いに来たのだ。


カヌアは約束を守るタイプだ。


彼の妻達も同行するのかと思いきや、やはり買い物は女性同士の方が楽しいようで、誰一人ついては来なかった。


(まぁ気を遣わないで済むからいいけど…)


とカヌアは思ってはいたが、その分何だかキルラの距離が近いのが気になっていた。


「グランシャリオだっけか?趣のある街並みだな。それにしてもカヌア…せっかくのデートなのに、何故そんな騎士みたいな格好をしているんだ?これから大会にでも出るつもりか?腰に剣までつけて…これじゃあ雰囲気が…「


キルラが残念そうに言うのをすかさず遮る。


「あ、デートじゃないので!」


カヌアはキッパリハッキリと言った。


「案内人とでも思って下さい」


カヌアは剣術大会の初戦のことを、まだ少し根に持っていた。 


すると、一瞬路地裏の方で黒い影が見えた。


通り過ぎそうになったので、カヌアは少し足を止めてそれを眺め…いや凝視していた。


そして、カヌアはキルラを置いて、すぐさまその方へと向かった。


「可愛い子に…」


カヌアは走りながらそう言うや否や、高らかにジャンプをして男の肩へと足を伸ばした。


「手をっ!出すっ!んなっ!!」


そう言うカヌアに飛び蹴りされたその男は、少し離れて置いてあった空樽へとすっとんだ。


追いかけてきたキルラは、それを見て苦い顔をした。


(あちゃぁ、さすがカヌア…それにしても躊躇ねぇなぁ)



「大丈夫ですか?何か酷いことされました?変なとこ触られました?臭い息がかかりました?」


カヌアは自分の嫌なことランキングの上位に入る事を、その女の子に聞いた。


彼女はカヌアの怒涛の質問に、少し困惑しながらも応えた。


「あ、あのまだ何もされていなかったので…大丈夫です。ありがとうございます」


(か…かっこいいぃぃ!!)


その娘はカヌアを見つめた。

目がハートだ。


(あれ?この子…確か…)


すると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえた。


「イリアッ!勝手にいなくなるなと…ん?カヌア?え?何があった?」


近くで伸びている男の悲惨な状況を見て言ったのは、弓術指南のリビドであった。


「リビド指南!?あぁやはり…この方は妹さんですか?」


カヌアは以前庭でウィルと一緒にいたこの娘を、覚えていたのだ。


「あ、お兄様のお知り合いでしたか?ん?カヌア?えっ!?女性の方!?今しがたこの方に、男性に絡まれているところを助けていただいたのです。あれ?カヌア様?って確か…」


と驚いたリビドの妹イリアが何か言おうとしたが、リビドが急に吹き出したため、不思議な顔をして止まった。


「ふっ…ククククク…お前…男だと思われてたぞ…ふっふふ…さぞかし盛大に悪党をやっつけて、イリアにイカした騎士様だとでも思われたんだろうな…本当に面白いやつだ…ふっふふ」


そうリビドに言われて苦笑いをしたカヌアだったが、ある事をもう一つ思い出し、イリアに近づいた。


するとカヌアはイリアの手を持って、自分の手と照らし合わせた。


「あ!やっぱり!手の大きさが同じですね!以前イリアさんが弓をやられてた時の練武を、リビドさんからお借りしてるんですよ!そのおかげで、今回の大会で二位にまでなりました!ありがとうございます!弓は今はもうやられてないんですか?」


「ふふ、はい。私には才能がなかったらしく、すぐに辞めてしまいました。私の練武がお役に立てて良かったです」


イリアは少し照れたように言った。


カヌアはこの際だからと、イリアにずっと気になっていたことを小声で聞いた。


「あの…リビドさんって、何であんなに歯が眩しいんですか?」


イリアは笑いが込み上げてきて言った。


「ふふふふ…最高のチャームポイントですよね!」


それに対し、カヌアも笑った。


噂の的が自分だとも知らず、二人の仲睦まじい様を見てリビドは白い歯を輝かせた。


その後、リビド達と別れたカヌアは、瞬足でキルラの都案内を終わらせた。


そして三日目の社交界の夜も無事に終わり、ついに最終日が来た。


(やっと終わるー!今日さえ乗り切れれば!ファイト!イエスッ!イッシャァア!)


カヌアは今日も通常運転だ。


しかし、そう簡単にはカヌアの思惑通りにはいかない。


この夜、カヌアは自分が逃亡するハメになるとは思わなかった。


そして最終日の社交界ともあって、女性達の気合いは一段と熱が入っていた。


いつも以上にウィルは、その女性達に囲まれていた。

もはや満員電車か初売りのバーゲンぐらい押されていた。


聞いたところによると、彼女らは各国の姫君だという。


サルミニアの双子の王子達には他に王女がいないので、それ以外の国の姫達らしい。


つまり、各国の王子の妹君とのこと。


ウィルにはもってこいの話である。


そう聞かされた後なので、ダンスの後カヌアは尚更身を引こうと、その場を離れようとした。


しかしせっかくの社交界で、カヌアとの時間が最初のダンスのみで、不満に思っていたウィルはついに行動に出た。


後退りしようとしたカヌアの腕を、ガシッと掴んで言った。


「カヌア!待て!今夜はずっと隣にいてもらう」


「…………っ」


辺りも静まり返る。


そして、ざわめきが起こった。


(なんっで!場が混乱することを言うかな!?周りの事をもう少し…)


カヌアが思っていると、カブラが衝撃的な事を口走った。


「このお方はウィル様の…婚…約者ですっ!」


周りが更に驚愕の顔で見る。


(あ?え?えぇぇえっ!?)


「えぇと?カブラ様?誰が?誰の?婚約…」


カヌアの頭が真っ白になっていると、すかさずウィルは頷いた。


思いっきし頷いたのだ。


「ち!ちっ!ちっぶはぁっ…」


カヌアが否定しようとしたその口を、すかさずカブラに塞がれた。


そのままカブラは、何やら耳元で言ってきたのだ。


「いずれ事実にすればいいのです」


カヌアにはそれが、悪魔の囁きに聞こえた。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。

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