episode86〜社交界のはじまり〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
全競技が終わり、カヌアは自身の高成績にとても満足していた。
しかし、閉会式も終わり、その夜から社交界が始まる。
それが四日間も続くとなると、疲れがどっと出るに違いない。
競技以上に覚悟を決めたカヌアは、部屋でウィルが迎えに来るのを待っていた。
部屋の扉からノックの音がする。
返事をするとそこには煌びやかな服装を纏う、ウィルの姿があった。
「すまない。少し遅れてしまったな…今夜のドレスもまた一段と似合っている」
いつものようにウィルは褒めてくれた。
本日のカヌアのドレスは、エメラルド色を纏っていた。
そして会場へと向かうと、大会の出場者が綺麗な装いで会場に集まっていた。
各国の殿下達は、王族の紋章をしっかりと身に付けていた。
さすがアストゥル地方一大きい国だけあって、王宮内の社交用の広場はこの人数でも余裕で入る。
会場内には、出場者達だけではない。
アルデリア内の御令嬢や重鎮達なども出席していた。
もちろん各々の目的を持って。
そんな大所帯の人の中、カヌア達にいち早く気がついたキルラが駆け寄って来た。
「カヌア!ウィル!おぉう!やっぱこう見るとちゃんと御令嬢なんだな!」
「ちゃんとって何よ!どう見ても…」
とカヌアが言い返そうとしたその時、フラフィー達の驚いたような騒めきと、周りの視線に気が付いた。
(え?何?怖いんですけど…)
それは周りも同じだった。
女性の変貌ぶりは怖い。
手を少し加えただけでも綺麗になるのだから。
そうである。
周りにいる出場者達のほとんどが、カヌアだと気が付いていなかったからだ。
皆がカヌアに注目し始める。
それを野獣だと勘違いしたウィルは、咄嗟にカヌアを隠すように前に立ち始めた。
カヌアはそんなウィルの行動に首を傾げながら、少し横にずれてキルラと話し始めた。
「キルラ様のパートナーは、どちらにいらっしゃるんですか?」
「あぁ妻と来ている」
キルラは後ろを振り向き、妻らしき人を紹介した。
(え?どの妻?)
カヌアがそう思うのも無理はない。
なぜなら彼には、皆が羨むほど多くの妻がいるのだから。
「カヌアもいつでもこの中に来ていいんだぞ?」
「「断る」」
同時に拒否したのは、カヌアとウィルであった。
そしてダンスが始まる。
初めに各国の殿下達とそのパートナーが踊るので、カヌアとウィルが前に出た。
キルラ以外の王子達も、ここでやっとカヌアだと気が付いた。
(見るな見るな…自分でもわかってるんだよ…ギャップがありすぎるんだろ?だから嫌なのよ…社交界は…今度はサラみたいに男役で出ようかな?)
と一生来ないであろうシュチュエーションを思い描きながら、カヌアはダンスを終えた。
するとすかさず、それを待っていたかのように、ウィルに女性達が集まって来た。
女性達に囲まれるウィルは、あっという間にカヌアと引き剥がされた。
そしてぼっちになったカヌアは、チャンスと思いその場から逃げようとした。
しかし、この大会で出会った、各国の王子達はそうはさせてくれなかった。
誰かがカヌアの肩をガシッと掴む。
「おい、お前。一人なら俺の相手をしろ」
そんな横暴な誘い方をしたのは、オメオクスの第一王子エダリヤであった。
返事をする間もなく、カヌアはフロアへと連れて行かれた。
踊りながら話すカヌア。
「そんな強引な誘い方ってある?」
「今あっただろ?」
そうぶっきらぼうに言うエダリヤに、カヌアは仕方ないという顔で笑って言った。
「国に帰ったら、色々言うんでしょ?その…これからのこと」
「あぁ。やりたい事も出来たしな」
「今まではやりたくないことの方が多かったもんね!応援してる!今度こそ王子じゃなくエダリヤとして…」
そんな屈託のない笑顔を見て、エダリヤは言う。
「カヌア…その…お前も来ないか?オメオクスに…」
「それってどう言う意味?」
カヌアがそう聞くと、エダリヤは今まで見せたこともないような照れた顔で言う。
「俺は、カヌアをとても気に入っている…だから、その、婚…、者として来て欲しいんだ…」
カヌアはその言葉を聞き取ることができなかった。
しかし途切れた言葉を理解してしまい、頭が真っ白になった。
そのせいでステップを踏み外してしまった。
「ギャッ!」
しかし、咄嗟にエダリヤが支えてくれたため、ことなきを得た。
体勢を取り戻したカヌアが口を開く。
「お、お言葉ですが殿下、私めのどこをどう見てそのような感情におなりになったのですか?そもそも私は失礼なことばかりしてきましたよね?到底通常の感情とは思えません。もう少し冷静になって、今一度お考え直した方がよろしいかと…」
カヌアは饒舌に断った。
断ったつもりだった。
しかし、エダリヤも鈍感なタイプであったために、なぜかその言葉を真摯に受け止めてしまった。
その後もキルラやルヒト達のダンスの相手をして、ヘトヘトになったカヌア。
そして、次の日もエダリヤは同じことをカヌアに言うこととなる。
もちろんカヌアは、今度ははっきりと断った。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




