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episode85〜その先は〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。


弓術の四日目が終了し、カヌアは着々と勝ち進んでいた。


手首の捻挫は完治して、体調も万全。

利き手ではないが、相変わらず弓を最初とは逆の手で引いている。


そして弓術試合の終わりには、必ず練習場へと足を運ぶようになっていた。


「絶好調ですっ!リビド指南!」


カヌアは弓術が上達したのが嬉しくて、声を高らかに上げる。

そして弓を射りに来ていた。


「お前、ここ最近毎日来てるな…ウィルは良いのか?」


「へ?え?な、何でウィル様!?」


(ん?何でこんなに動揺している?これは何かあったな)


そう思いながら、リビドはカヌアを見る。


「…何ニヤニヤしてるんですか!?」


カヌアが少し怒る。

それに対して冷静にリビドは返した。


「いや、してないが?」


確かに彼は笑ってはいない。


しかしフラフィーがめちゃくちゃニヤニヤしているので、動揺しているカヌアは思わず声を出してしまったのだ。


「そ、それよりっ練習しますよ!場所!貸して下さいね!」


カヌアがそう言うと、いつも通り弓を引き始めた。


(言わずとも勝手に使ってるくせに…)


リビドはそう思い微笑んだ。


休みなくみっちり弓を射ったカヌアは、リビドにお礼を言って弓術場を後にした。


部屋に戻って湯浴みでもしようと庭の側を通ったその時、ウィルの姿が見えた。


仲良さそうに可愛らしい女性が、腕を組んで一緒にいた。


それを見たカヌアは、思わず身を隠してしまった。


(んんん?可愛い女の子と一緒に歩いとる…楽しそう…誰?)


カヌアはダメだと思いながらも、覗き見してる。


「あらぁ気になる?あの子が気になるの?」


と右側から女性の声が聞こえた。


そして、振り向く間もなく、今度は左側から男性の声が聞こえる。


「気になるんですか?殿下が他の女性と一緒にいるのが」


カヌアが覗き見をしているのに気が付いた二人が、いつの間にかガッチリとその両脇にいたのだ。


そこにいたのは、アルデリア国の第一王女であるエウネだった。

そしてもう一人、ウィルの従者ワイムである。


二人とも、カヌアと同じようにしゃがみ込んで、その両脇にいる。


フラフィー達が、カヌアの目の前をチラチラと飛び回っている。


エウネの方はクルクルとニヤニヤしながら踊っているが、ワイムの方は何だか不満そうな表情だ。


「あの子はねぇ…ふふふ、知りたい?知りたいわよね?」


何かを匂わしながら、エウネが言う。


(すんごく気になる…けど)


と思いながらも、カヌアは気持ちを抑えた。


「あ、い、いえ。ウィル様が誰といようと、私は口を出すような身分ではありませんので…し、失礼しますっ」


カヌアはそう言うと、勢いよく頭を下げ走り去った。


その後ろ姿を見る二人。


「あらあら…お可愛い事」


エウネが含みを込めて言う。


(これは…何かあったな…?)


ワイムはそう思いながらも、何も言えずに見ているしかなかった。


カヌアはその勢いのまま、部屋に行くとベッドへとダイブした。


(私には関係ない私には関係ない…)


「ブハァッ!」


カヌアは猛烈な息苦しさに見舞われた。


翌日、カヌアは少し寝不足だった。


しかし、まだ弓術部門の競技が残っているカヌアは、気持ちを切り替えた。


五回戦目、難易度は中々なものであった。


(あぁ、的があんなにちっさいよ…でも)


カヌアはそう思いながらも、ニヤリと笑っていた。


その顔は自信のみで出来ていた。


あの時の、弓を始めたばかりの頃が嘘のように。


そして軽々と五回戦を突破し、明日はいよいよ決勝戦である。


この時点で、既に三つ目の陛下へのお願い権を獲得していた。


しかしカヌアは気を抜かずに、決勝戦も最後まで全力投弓をする予定だ。


その夜、カヌアが部屋でストレッチをしていると、扉からノックの音が聞こえた。


カヌアが返事をすると入って来たのは、優しく笑みを浮かべたウィルであった。


「カヌア、調子が良さそうだな。明日はいよいよ種目最終日の弓術決勝戦だな」


「ウィル様、ここまで色々と教えて下さり、そして見守って下さり、ありがとうございました。明日も悔いの残らないように全力で頑張りますね!」


「そうだな。無理は…いや、最後まで楽しんでやると良い。あと、例の件なんだが…」


リアスから預かっていたという、例のコインを手のひらに乗せカヌアに見せた。


「あ、何かわかりました?私はあの御二方を陥れるためだけに、残されたものではないと思っています。このコイン自体に何か意図があって置かれたのではないかと…」


「いや、まだ詳しくはわからない…このコインが怪しいという、カヌアの感は当たっているとは思うが。これは俺の考えだが恐らく…これは本物ではないと思うんだ。サルミニアの王子達が言うように、温度を調節しながら熱して比較してみるのが一番早いと思うんだが…サルミニアまで行かないとダメなのか…事が事だからあまり公にはしたくないし」


(ん?高温で鉱物を熱すことのできる場所…鉄とかもそうだよね?…あまり人も来ない場所か…)


すると、カヌアはハッと言う顔をした。


それに気が付いたウィルも、同じような顔をしていた。


「ウィル様!!あそこならっ!」


「あぁ、カヌアの考えてることは、何となくわかった…ファイスのとこだな?」


カヌアはニヤッと笑って頷いた。


「はいっ!ファイスさんの工房ならその設備もありますし、人もあまり来ません。何より私はあのご夫妻を信頼しております!」


「そうだな、頼んでみるか…その前に、カヌアは明日の決勝戦に集中しろ。行くのはそれからだ」


カヌアが競技に専念できるように、ウィルはそう言ってくれた。


「はい!あ、絶対先にお一人では行かないで下さいよ!一緒に行きましょ!ねっ!」


そんなカヌアの言葉を聞いて、ウィルは嬉しくなったのか、思わずカヌアの手を優しく持ち上げ、軽くキスをした。


「あぁ、約束だ」


その不意打ちの行動に、カヌアの顔が一気に赤く染まった。


(この人はもうっ!何なの!?天然なの!?)


と思ったが、この際だから昨日の事を思い切って聞いてみた。


「ウィル様、昨日可愛いらしい女性と、一緒に歩いていましたよね?…その、お庭のところで…とても仲が良さそうにお見受けしましたので、ちょっと、ほんのちょびっと気になって…」


その言葉にウィルは、一瞬まん丸な目をして驚いた。


しかしすぐにニヤリと笑うと、カヌアに言った。


「気になるのか?気になり過ぎて覗き見てたのか?」


「ちちちちがいますよ!断じて!ウィル様が楽しそうに女性と話してるのが、珍しいと思いまして…そうです!これは物珍しさ故の質問です!」


(そんなに楽しそうにしてたか?カヌアといる時の方が何億倍も楽しいが…)


「彼女は、リビドの妹だ。幼い頃からの知り合いだから、久しぶりに会って話してたまでだ」


「え?あ、リビド指南…の?」


「ちなみにだが、彼女は既に将来を共にする相手がいる。既婚者だ。どうだ?これで安心し…」


そこでウィルは、言うのをやめた。


何故ならカヌアが、心から安心した顔で笑っていたからだ。


今まで見たこともないような笑顔だった。


その笑顔を見てしまったがために、ウィルはカヌアからの想いの期待度を高めてしまった。


部屋を後にしたウィルの心臓の音は、段々と大きくなる。


(もう止められない…カヌア…俺は…)


胸を強く抑えながら、鼓動を感じていたウィル。



そして翌日。

ついに弓術部門、決勝戦当日。


これが本当に全種目の最後の試合となる。


カヌアは心のモヤモヤも抜け、ぐっすりと眠れたので体調も精神的にも絶好調だった。


これから残った三人が、順番に弓を射る。


今日は風が強めに吹いていた。


一番手であるカヌアが位置につく。


途中、ものすごい突風が吹いて、一本だけ的の端にズレてしまった。


それ以外は、ほぼ的の真ん中を射る事ができた。


二人目の選手は、運が悪かったのか三本程強風に煽られて、的から外れてしまった。


最後の一人が射る。


その三人目というのはルヒトであった。


何回か突風があったのにも関わらず、その風さえも読んで、全ての弓を的の中心に命中させた。


(さすがルヒト様。これが彼との本当の差か…)


これでルヒトの優勝が決まり、カヌアは二位という結果になった。


かなりの高成績。


いや、本人含め誰しもが二位になるなんて、端から思ってもなかったくらいだ。


そして、次の日。


閉会式にて全種目の表彰が行われ、カヌアは計三つの高成績を残した。


カヌアは自慢げに表彰台へと上がり、ドヤ顔を披露していた。


そして、その夜から始まる。


カヌアにとっては地獄の社交界が…

それも四日にも渡って行われるのだから、本人は苦痛でしかなかった。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。

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