episode82〜衝撃の事実〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
馬術部門の四種目が終了し、ウィルの様子が気になっていたカヌア。
夕刻に彼の自室へと足を運んでいた。
もちろん、従者カブラがすんなりと部屋へ入れてくれた。
「ウィル様のご様子は?」
「はい。あれからずっと眠っておられます。例の薬が効いてるみたいで、顔色はだいぶ良くなりました。連日の大会に加え、公務もなさっていましたから…無理をされて…」
「そうですか…ウィル様、数日前から顔色があまりよろしくなかったですものね…あの、少し近づいても?」
その言葉に、カブラはニコッと笑って言った。
「はい。私は外に出ておりますので」
そのまま、カブラはそっと部屋から出た。
カヌアは眠っているウィルに近づき、顔を覗き見る。
そっとウィルの手を触った。
(ほんのりあったかい)
そして、手を離すと今度は、ウィルの顔を触りそのまま滑らせた。
(ウィル様…やっぱり無理してたんだな…人にはあんなに無茶するなって言ってたのに…自分の心配もしてよ…起きたら言ってやるっ)
そしてカヌアは、ウィルの前髪を分けるようになぞった。
(まつ毛長…)
カヌアは閉じていたウィルの目元に触れた。
その瞬間、カヌアの目の前に信じられない光景が見えた。
視界がとても明るくなったのだ。
その眩しさに思わず目を閉じるカヌア。
開会式のような眩い光だ。
しかし、またもや左目だけは閉じない。
まるで左目だけ意思があるような…
(え…?何?二重の輪?緑とオレンジの二つの…)
ほんの一瞬の出来事だったが、カヌアにはその不思議な二色の輪が視えたのだ。
カヌアはたじろいだ。
動揺が隠せない。
そしてウィルを見た。
彼に変わった様子はなかった。
(今のは…何?)
カヌアは開会式の時のような、気持ち悪さに少し襲われた。
今日は部屋に戻ろうと思い、その場を後にした。
部屋を出る際、少し様子のおかしいカヌアに気が付いたカブラ。
しかし何も言わずに、他の護衛に部屋まで送らせた。
翌日、馬術部門の決勝戦が始まろうとしていた。
種目は弓馬。
自信はあまりなかったが、カヌアは馬乗りしながらの弓技をしたことがなかったので、半身ワクワクしていた。
この決勝戦まで残ったのは、カヌア、リアス、ルヒトの三人であった。
まずはルヒトの一手から始まる。
全てにおいて完璧な的射りであった。
(さすがだ)
ここまで残った程の馬術の腕。
それに加え、最も得意とする弓術なので尚更腕が立つ。
次にリアスの引く番だ。
馬術は申し分ないが、弓術は苦手なのかあまりうまくいっていなかった。
しかしカヌアよりは断然うまいのは言うまでもない。
それにやはり、リアスの調子がどうも良くないのにカヌアは気が付いていた。
そして最後にカヌアだ。
いつものようにレグへとまたがる。
問題は弓引きだ。
先日の三回戦で負傷した右手は、幸い酷い捻挫ではなかったが未だ完治はしていなかった。
なので仕方なく利き手と反対の手で、弓を引くことにした。
いつもよりさらに自信がない。
そして一本目を射るために弓を引いた。
(ん?なんか…)
そして矢を放った。
(え?)
矢が一直線に的の方へ向かう。
本人が一番驚く光景がそこにはあった。
なんと見事に的の真ん中を射たのだ。
「当たっ…?えっ!?ええぇぇぇぇぇ!?」
その声は会場中に響き、観客の何人かは驚いて感嘆の声を上げた。
しかし、カヌアの弓の実力を知る者は、更に驚いていた。
(ま、まぐれかな?たまたま…?)
カヌアはそう思いながら、二本目を射る。
今度もど真ん中に当たった。
(じゃないっ!!まぐれじゃないっ!!えっ?ん?でもなんか…確かにしっくりくる…)
さすがに右手首には少し痛みもあったので、全命中とはならなかったが、かなりの高成績で決勝を終えた。
そう…まさかの二位であった。
一位はもちろんルヒトである。
ルヒトがカヌアに駆け寄る。
「カヌア!弓術もすごく得意なんだね。本当にすごいね、君は」
王子スマイルを繰り出しながら、ルヒトは言った。
確かに今回のカヌアの弓引きを、初めて見た者は誰しもがそう思うだろう。
カヌアはどう返事をしたらいいのか分からずに、ニヘラと笑った。
そして決勝戦を終えると、猛ダッシュである人の元へと向かった。
そこはいつも練習している弓術場。
「指南!!リビド指南!!」
「おぉ!カヌアか!弓術部門の決勝まで行ったんだってな?見に行けなくてすまんな。あれ?でも今日は決勝じゃなかったのか?確か弓馬…」
「リビドさんっ!!聞いて下さい!!いやっ!見て下さい!!」
そう言うと、カヌアは持っていた弓で矢を引き始めた。
そして的へと放つと、その矢は先程と同様に中心を綺麗に的を射た。
先程とは違い、静止した状態で弓を引いているから尚更綺麗だ。
矢は的のど真ん中にある。
リビドは、予想通りかなり驚いた顔をしていた。
「お前…その構え…」
「これだったんです!私がずっと抱いてた違和感の原因は!引く腕が反対だったんですよ!」
カヌアが興奮していると、リビドは不思議に思って聞いた。
「カヌア…左利きだったのか?」
「いえ、右利きですが、でもこれで今とってもしっくりきてるんです!なので、この通り!弓馬部門は二位になりました!二位ですよ!?明日からの弓術はかなりいいところまでいけるかと!これから練習を…」
カヌアが大きく意気込みを言ってる途中で、リビドがそれを遮った。
そして、カヌアの右手を優しく掴んだ。
「でもお前、これ怪我してるんじゃないのか?あまり無理をするな…」
「ご心配なく!ウィル様にもらった薬のおかげもあり、ほぼ完治してますよ!」
カヌアはちょびっと嘘をついた。
少し痛みはあるが、ここで少し無理をして陛下から何としても褒美をもらうために。
「そうか…痛みがぶり返し始めたら、すぐに言えよな?」
そうして明日からの試合もあるので練習も程々にし、調節をしたカヌアは弓術場を後にした。
そしてその夜。
カヌアは引き続きウィルの様子を見に、彼の自室へと向かっていた。
そして今日の事を話したくてウズウズしてるカヌアは、平然を装って部屋の扉を軽く叩いた。
中に入ると、ウィルはベッドの上で身体を起こしながら本を読んでいた。
カヌアに気が付いて微笑むウィル。
「ウィル様、具合いかがですか?」
カヌアがそう聞くと、ウィルは優しく頷いて言った。
「あぁだいぶ良くなった。カヌアが例のルヒトからもらった薬を、飲ませてくれたんだってな?礼を言う」
(の、飲ませたは飲ませたな…でもこの様子だと状況は聞いてなさそうだな…)
カヌアは内心、ドキドキしながら頷いた。
「それに聞いたぞ。弓馬で見事な腕前を披露したんだってな。練習頑張ってたもんな。弓馬なんて難しかっただろう?」
そうウィルに言われ、カヌアの顔が一気に明るくなった。
「そうなんですっ!ウィル様、聞いて下さい!先日右手を負傷したおかげ…と言っていいのかわかりませんが、それで利き手を変えてみたんです!そしたら見事命中して、こう弓を…」
その時の仕草を見せるために、大袈裟な身振りで手を広げたカヌア。
その瞬間、勢い余ってカヌアの手がウィルの顎に当たってしまった。
ガゴンッ
(あ!今、ガゴンッていったような…)
カヌアは慌ててウィルに近づいた。
それと同時にウィルもすぐに身体をグイッと起こす。
「あぁ!ウィル様申し訳ご…」
「いや大丈…」
そして二人の顔が思いかけず、急接近した。
そのままお互いの唇に、柔らかくも温かい感触が…
二人は目を見開き、驚いた表情をした。
二つの唇が触れていたのだ。
それに気が付き、同時に顔を離す。
二人は顔が真っ赤になり、自身の口を手で覆った。
「すすすすすすいません!大それたことをっ!あの!きょ、今日はもう遅いので、部屋に戻りますね!お大事にして下さい!おやすみなさい!」
そう言って、カヌアは慌てて部屋を飛び出た。
部屋の外で待機していたカブラが、何事かと思い中を覗いた。
ウィルはベッドの上で黙り込んだまま、顔を片手で覆って真っ赤になっていた。
(キキキキキキス!!嘘でしょ…!?キスしちゃった!!)
カヌアはこの気持ちをどうしていいか分からず、部屋へと足早に戻った。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




