episode7〜淑女への道?〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
月日は流れ、あのお茶会から三年が経っていた。
そう、カヌアは変わった。
それもそうだ。
彼女ももうすぐ齢十六。
恋に花咲くお年頃を迎えようとしていた。
しかし、彼女にはそんな花の蕾すらなかった。
カヌアの身長は、この三年程で十八センチも伸びていた。
それはもう、関節の痛いこと痛いこと。
耐え抜いた。
え? 伸びすぎじゃね? って?
そんなカヌア、その成長とともに慎ましくおしとやかな立派なレディ… ではなく、わんぱくどろんこレディーになっていた。
「ははっ! 冷たいよ! 綺麗にしてあげるからいい子にしてちょーだい!」
カヌアはそう言いながら、馬の水浴びを手伝っていた。
いや、ちゃんとレディーへの道も進んではいるので、安心して下さい。
寄り道だらけのその道を。
彼女の趣味は乗馬。
これは何年も前から変わらない。
けれど、この国ではあまり女性が馬に跨る行為は、好まれていない。
なので。大っぴらにはしていない… ようにしているつもりだ。
バレまくっているのが、実際である。
カラーーン!
突然。何か落ちる音がした。
「お嬢様!! 馬の世話は、この私どもがやりますのでと、何度も仰っておりますのに! 奥様にまた叱られますよ?」
そう言いつつ手伝わせてくれるのは、リヴール家に仕える厩番のログである。
ログは優しい。
止めに来たのは方便か。
半分諦めている。
そして彼のフラフィーは、今日も何だか嬉しそうだ。
「ログ! 何を言っているの!? 馬に乗るだけとは、なんて馬不幸者なの!? そんな娘に育った覚えはありません! … ふふ… ふふふ」
冗談を言える、このひと時が堪らなく幸せなカヌア。
そんな楽しそうな声を聞きつけ、エミリアがすっ飛んで来た。
「お嬢様!! 馬の世話は……(以下同文)」
(ログと同じこと言ってる)
そうしてカヌアは、渋々と片付けをしながら問いかける。
「ねぇ、エミリア? 私、もうすぐ成人を迎えるでしょ? それでね、王宮にもし何らかの形で関わることになるとしたら、たくさんやりたいことがあるの。でも、それを女性の私に、させてもらえるかはわからないんだけど…… 」
静かに聞いてくれてたエミリアが口を開く。
「お嬢様が、何をなされようとしてるかはわかりませんが、これだけは覚えといて下さい。女性だからと言って、男性だからと言って、我慢する必要はありません。それに物怖じしては、リヴール家の名に恥じます。その道の第一人者になればいいのです。そして、お嬢様が成功して見せつけてやればいいんです。お嬢様が頑張って、努力して進んで、そしてお転婆になったのは、このエミリアがずっと見てきました」
(お転婆… もか)
「だから… お嬢様らしく全力で行きましょう! エミリアは、いつでもお嬢様の味方でおります。奥様はきっと、不穏な顔をするかもしれませんがね」
そう言って、ウィンクするエミリア。
(ふふ… ウィンク… 可愛い)
「ありがとう。エミリアが近くで支えてくれてて、幸せ者だわ! 私やってみる! 何だか楽しみになってきたわ!」
「さぁ! そうと決まれば、早速デビュタントで着るドレスを選びましょう! 試着〜試着〜」
(クッ、結局そうなるのか! エミリア、やりよる)
この国の女性は十六歳になる時、成人のお披露目の意を込めて社交会へ参加する。
それが、世にいうデビュタントである。
(コノ娘、成人シタ。結婚相手求ム… って会でしょ? まだ結婚とかしたくないのに。わざわざ 「売り出しましたー誰かどうですかー?」 って、すごいなこの状況。まぁ立派な淑女になりましたって素直に挨拶するんだろうけど)
綺麗なドレスを身に纏い、とびっきりのオシャレをさせら… するのだ。
そして国王陛下に拝謁し、お披露目する。
結婚適齢期だと。
もちろん華やかな音楽にダンスなども満載である。
女性にとっての一大イベントなのだ。
(あと一ヶ月か… )
いや、もうあと一ヶ月しかないのである。
普通の子なら既に、ワクワクのウッキウキであるに違いない。
しかし、カヌアは違った。
なぜなら、一つ重要な問題を抱えているからだ。
カヌアにとっては難題中の難題である。
そう、それはパートナー探し問題。
(まさか… こんなに見つからないとは… 誰も誘ってくれないし… くっ、甘かった… )
まぁまぁの高位にあるリヴール家の一人娘…
(すぐに見つかると思ったんだけどな… そうよ! お兄様に頼もうかしら? うん、四人もいるしね! よりどりみどりだしね! うんうん)
安易な選択に至った。
そしてカヌアはその足で、早速直談判しに兄様の所へ向かったのだ。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。