episode77〜旧邸にて〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
カヌアが洞窟内の川に飛び込むと、程なくして明るい光が差した。
(外だ…)
そう思い、カヌアはレグと泳いで洞窟の外へと出た。
岸辺へと上がると、そこにはレアスとリアスの二人がいた。
「カヌアさん!さすがだね!」
「早かったね!カヌアさん!」
カヌアは二人がそこにいた事に安心した。
ここがゴール地点らしいことは分かった。
監督者達が、カヌアにブランケットや温かい飲み物を渡した。
もちろんレグにもだ。
大きなタオルを被せて保護してくれている。
すると、岸の方から次々と馬と共に出場者達が上がってきた。
その先頭にいるびしょびしょになったウィルと目が合った。
「ウィル様!無事で良かったです!ブランケットを…」
「カヌア…随分早いな。しかもここまで来ていたとは…」
「思ってなかったんですか?私がここまで残るなんて?」
以前のウィル同様、意地悪な笑みを浮かべてカヌアは言った。
「…いや、さすがだ。あれを全てこなすなんて」
笑顔になるウィル。
「ウィル先生のおかげです!えへへ」
すると監督者がブランケットを持ってきたので、カヌアはそれを受け取るとウィルに掛けてあげた。
何も考えずに勝手に少し拭いてあげてたら、その行為に驚いたのかウィルは目を丸くし、照れ臭そうに笑った。
すると、更にビッチョビチョの男が、カヌア達の近くへと寄ってきた。
その男は大きく目を見開いて言った。
「嘘だろ…?お前…まさかあの障害物を、本当に全てこなして来たのか?しかも俺達より早く到着してるなんて…」
それは兄のレイルであった。
「お、お兄様!早くブランケットを!」
と言って監督者からブランケットをもらい渡した。
「お兄様、私がここに到着できたのは、全てレグのおかげです。何度も諦めようとしましたよ?でも諦める判断をする前に、既にレグが導いてくれてました。ほんとに賢くて勇敢な子…ふふふ」
カヌアが嬉しそうに言うのを、安心した顔でレイルとウィルは聞いていた。
「あ、あともちろん先生方の助言のもと、わたくしは着々と試練をこなしたわけでして…」
と言い終わる前に、レイルの顔が寸前まで来ていた。
その影にカヌアは萎縮して、目を逸らした。
「お前…聞いたぞ?途中で‘何か‘あったみたいだな?ん?馬に乗った男を?」
そう言うレイルに、カヌアは思った。
(は、始まった…兄様の詰め寄り尋問…)
そしてカヌアは答える。
「馬から…下ろし…」
「胸ぐらを?」
「掴んで…」
「崖の上で?」
「少し…助言をしました」
ブブーそれは間違いである。
「脅したの間違いだろ?」
正解!
「ゔ…」
カヌアは尻込みする。
ウィルが目をまん丸にして、こちらを見ているのがわかる。
「え?おど…した?」
「いえ、ですから、少し、あの、お話を…悪いことをしてはダメですよと…」
しどろもどろのカヌアは、目の位置が定まらなくなっていた。
「はぁ、まぁそう言うことにしておいてもいいが…お前、もしそいつが反撃して、逆に崖から落とされてたらどうしてたんだ?言ったよな?無茶はするなって。そーゆーのは無茶って言うんじゃないのか?その馬を助けられたのは良かったが。それとな…」
死ぬまで続くんではないかと思うくらいに、次から次へと言葉の攻撃を受けるカヌア。
「あ、レイル…今はその辺で。とりあえず、この寒さで濡れた状態だと風邪を召すからな。早く旧邸へと移動しよう」
ウィルが止めてくれた。
そんなウィルが、神に見えているカヌア。
(ウィル様神様仏様…ありがとう)
「旧邸?」
しかし、カヌアはどこへ行くんだろと思いながら、ついていった。
歩きながらウィルが説明をしてくれた。
「あぁ、母上が以前住んでいた屋敷でな。今はエウネ姉さん…第一王女が夫婦で住んでいるんだ」
「お姉さん…え!?エウネ様がですか!?」
カヌアはその名を久々に聞いて、思わず驚いた。
「あぁ、実は姉上が自ら貸し出してくれてな…その…カヌアに会いたがっている…」
何か言いたげな感じに、ウィルが応える。
「私に?でも、もし私がここまで勝ち上がらなかったら、その旧邸へと行くことはなかったですよね?」
「いや、それならきっと別日に呼んでいたな…あの人は必ずやる」
ウィルは少し困ったような顔をして言った。
この二回戦で残った十二人と監督者達は、馬と共に旧邸へと向かった。
数分程足を進めると、屋敷が見えて来た。
旧邸の門番が、屋敷玄関まで案内してくれた。
すると中から、それはそれは素敵なワンピースを召した女性が出て来て、カヌア達を迎えてくれた。
舞踏会で着るような煌びやかなドレスではなかったが、本人が上品すぎるが為、そのくらいの価値に見えた。
「ふふ、よくここまでおいでなさいました。皆様、本日は大変お疲れ様でした。中で着替えやお食事のご用意もあります。どうかごゆるりとお過ごし下さい」
(え!?本当に王女様!?身分が低い者にも、分け隔てなく扱ってくれる…やはりお優しい方)
カヌアはそう思いながら、他の人達と同じ方向へ進もうとした。
それをエウネが止めた。
「はいはいっ!では、あなたはこっちね!」
何故かカヌアだけ、別室へと連れ去られた。
そして今、エウネの自室にいる。
「カヌアーリさん?あなたは女の子よ?もっと自覚を持って?何であの野獣達と同じ部屋へ行こうとしたのかしら?こんなに可愛いと襲われちゃうわよ?」
エウネの話し方が何だか以前に比べて、軽やかになった気がした。
「あ、えぇと、はい、すいません」
どう応えたらいいのかわからず、カヌアは謝った。
今は全身濡れてしまっているせいで、フラフィーが視えない。
なので彼女が何を考えているのかわからず、不安でいっぱいなカヌア。
(何だろ?え?何だ?すんごく嫌な予感がする…)
そのカヌアの予想は当たった。
「ささ!こちらへ!」
カヌアを浴室へと追いやり、使用人を五人程で、あっという間に身体中を洗われた。
そして、目が回るほどの速さでご令嬢スタイルにされた。
(え?ぇぇええええ…困る…今までずっと武術着だったから、めっちゃ恥ずかしいんですけど!)
「あ、あの、エウネ様…私この格好で皆様の前に出るのはちょっと…」
ここまでしてくれたエウネに対して、そう言うのは失礼だと分かってはいたが、カヌアの羞恥心がそうさせなかった。
「ふふ、あなたは皆様の前に出る必要は無いのよ?だって、これからウィルと二人で過ごすのだもの」
とんでもなく意味深な事を言い始めたエウネに、カヌアは混乱した。
「え?」
「あらやだ、二人でお食事をって事よ。うふふふふふふふふ」
エウネは、絶対何か企んでいるような雰囲気を醸し出している。
(本当に?え?本当か?だって…だってフラフィーが…)
そして、食事が用意されている部屋に案内されると、そこには既に着替え終わったウィルが座って待っていた。
「あ、ウィル様お待ちになりましたよね?あの、私達だけ別室でなんてよろしかったのでしょうか?」
申し訳ないのと恥ずかしいのとで、顔が赤くなるカヌアを見てウィルは言う。
「あぁ、家族特典みたいなものだと思えばいいんじゃないか?…それより、そのドレス…姉さんが仕立てたのか…さすがだな…とても似合っている」
真っ直ぐに褒めてくれた。
カヌアは久しぶりのドレスで、猛烈に恥ずかしかった。
(いつもこの格好してたじゃない。私は令嬢私は令嬢…)
そう呪文を唱えながら、食事の席へと座った。
そして、本日の二回戦について話しながら食事をした。
窓の外を見ると、既に日は暮れて夜になっていた。
「あら、もうこんな時間ですね!明日も早いですよね!あれ?そういえば本日は、王宮には戻らないんです…か?」
カヌアはそんな話は聞いてない状態で、混乱した。
「あぁ。そうだ。急遽決まった。あまりにも過酷だった競技だったため、残った者はここに泊まることになる…んだが…」
ウィルは何だかソワソワしながらそう言う。
すると、部屋の扉からノックの音が聞こえた。
ウィルが返事をすると、外からエウネがカヌアを呼んだ。
「カヌアーリさん!さぁこちらへ。次の準備を、とびっきりの準備をしましょうね!」
そうして、半ば無理矢理、エウネの自室へと再び連れていかれたカヌア。
その後ろ姿を見て、ウィルは色んな思いがこもった溜め息をついた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




