episode76〜勇敢な相棒〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
そして、会場には一回戦を勝ち進んだ馬術部門の出場者全員が集まった。
いよいよキーフ山脈にて、障害物競走が始まる。
パァーンッ!!
開始の合図だ。
一斉に馬達が走り出す。
(道が…不安定だな…振動がすごい)
「レグ、大丈夫?」
カヌアがレグにそう声をかける。
しかし、レグはカヌアが思っていたよりもとても頭が良く優秀であった。
どれほどか走っていると、少しずつその振動が優しくなっていった。
(あれ?)
不思議に思い、カヌアは地面を見た。
(道の感じは変わってないのに…え?レグ?)
レグは適応力が抜群だった。
その地面の形、感触を全て把握した上で走り方を変えたのだ。
「す、すごい!すごいよレグッ!!さすが私の子!」
カヌアは嬉しくて、レグを褒めながら撫でた。
レグはカヌアの身体に、負担をかけないようにしてくれている。
そのおかげもあり、山脈の道は難なく進むことができていた。
どのくらい登ったであろうか?
そしてもう少し先の方まで進むと、何頭かの馬が立ち止まっているのが見えた。
何だろうと思いながらカヌアが近づくと、そこにはポッカリと道がなくなっていた。
下を覗くと、何十メートルか先に地面が見えた。
(これか…さっき聞いた崖を飛び越えるという場所…思ったより幅があるな…)
すると、レグが突然来た道を戻り始めた。
(え?レグ?怖くなっちゃったかな?う〜ん…。怖いよねぇ残念だけどレグの為だし、諦め…)
とカヌアが思った瞬間、身体を持っていかれるような感覚に襲われた。
レグは半回転し、再度崖の方を向いた。
すると、前脚を高く上げ身体を反らせたと思ったら、崖の方めがけて猛進し始めた。
「えっ!?ちょっ!レグッ!?えっ!?うわぁぁあ!ど、どいて!どいてどいてどいてっ!!」
カヌアは崖の群衆に向かって叫んだ。
そして、何メートルもあるその崖の間を勢いよく、そして華麗にレグは飛び越えた。
(すごい……!飛んだ!)
軽々しく飛び越えたレグは、とても凛々しく見えた。
「かっけぇぇ!レグッ!惚れる!」
カヌアは称賛の声をあげた。
そして、次から次へと危うい障害をレグと一緒にこなしていく。
(はぁ…すんごい深い山だな…こんな所で遭難したら終わる…確か、森とかで道に迷ったら、北極星を見つけると北がわかるんだっけか?はて、でもどうやって見つけるんだっけか?)
そう思いながらも、まだ明るい山の中を進んでいると、微かに男の声が聞こえた。
「…す…てぇ。たす…て。助けてくれ」
カヌアは急いでその声のする方へと向かった。
すると、道幅の狭い所で馬に乗ったまま、片手で木にしがみついている姿が見えた。
「大丈夫ですか!?」
カヌアは彼らに近づきながら、声をかけた。
するとその男の言葉に耳を疑った。
「こいつの!こいつのせいでこんなとこになっちまった!頼む助けてくれ!いや…一層の事、この馬から離れて木に飛び移れば…」
その時だ。
ものすごい真っ黒な殺気が男を襲った。
「おい!絶対にその手を…その身体を離すなよ!!死んでも離すな!!」
カヌアは男に鋭く言い放ち、グイッと手綱を引っ張った。
すると男の馬は体勢を取り戻したのか、スルッと崖から離れた。
しかし、カヌアはその男を馬から引きずり下ろし、再度崖の方まで連れて来た。
「あんた、今この子から降りようとしたでしょ?あんたはそれで助かるかもしれないけど、この子はどうなるの?想像して?それができないんだったら、私が想像できるように手伝ってあげようか?あ?」
カヌアはその男の胸ぐらを掴んで、崖から落とすような仕草をした。
いやもう、これは本当に落とすのではないかという勢いだった。
目が本気だ。
しかし、男が必死に謝ってきたので事なきを得た。
カヌアは男の馬を優しくひと撫ですると、男に言った。
「無理はするな。あくまでもその子のためにな」
カヌアはそう言うとレグにまたがり、その場を後にした。
(チッ胸糞悪い思いをしたな…)
カヌアはそう思うと、再びレグと先へ進み始めた。
更に山の奥へ入ると、洞窟らしき場所を見つけた。
「ここが最後か…暗いな…」
カヌアは話に聞いていた、最後の障害に辿り着いていた。
真っ暗い洞窟の中を進む。
更に冷え込む身体。
水の滴る音が、恐怖と不安を煽る。
それからもう少し進むと、知った顔が見えた。
「あ、レアス様、リアス様?」
カヌアが声をかけると、二人は振り向いた。
「え?カヌアさん!?すごいね!ここまで来るなんて」
「驚いた!その子も優秀なんだね!」
そう双子に褒められて、カヌアは嬉しくなった。
「はい!ところでどうしたんです?こんな所で立ち止まって…」
カヌアがレグに乗ったまま、二人に近づこうとした。
「待って!危ない!」
「ここから道がないんだ!」
そう双子に止められたので、先程のように飛び越える系か?と思ったカヌアだったが、その考えは外れていた。
下から水の流れる音がする。
「え?川?」
カヌアが呟くと、双子は同時に頷いた。
(え?これは…)
朝のアメとムチの講義を思い出した。
「飛び降りるっっ!?」
その声に、また同時に頷く二人。
今度はニヤッとしながら。
「「そういうことっ!!」」
二人の王子は同時にそう言うと、顔を見合わせて相槌を打ち合った。
そしてカヌアの方を向いて叫ぶ。
「カヌアさんっ!お先っ!」
「また後でねっ!カヌアさんっ!」
すると、二人は馬に乗ったまま、同時にその崖へと飛び降りた。
二人が川に落ちる音がした。
(え…?嘘でしょ?これが障害物馬術の最後?まだ序盤の種目でしょ?こんな高い所から、飛び降りるの?こんなん皆できるの?)
しかし、カヌアがかなり躊躇している間にも、レグの心は決まっていた。
その身はいつの間にか前進していた。
「え?レグ?レ、レグッ?レグ!?レグ!?レェェグゥゥッ!?うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、カヌアは双子と同じ道へと進んでいた。
勇敢な、そして好奇心旺盛なレグは楽しそうに川を泳いでいる。
(すごいわ…なんて子…ふふ)
「フフフフフフフフフフフフ…あなた、泳げるなんて!でも楽しかったね!レグッ!」
とびっきりの笑顔で、カヌアはレグを愛おしく撫でた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




