episode74〜鈍さとは〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
ウィルにお祝いを言えないまま、会場を後にしたカヌア。
すると中庭の近くで、前方に知ってる人物が見えた。
あの後ろ姿には文句を言わなければならない。
カヌアが後ろから、猛烈な勢いで駆け寄る。
「ねぇっ!この前のっ!どういうこと!?」
その男は少しこちらを見たと思ったら、ガン無視した。
「おいっ!無視すんっなっ!」
そう言うと、カヌアははいごからジャンピングキックをお見舞いした。
しかし、それを得意とする男はいとも簡単に避ける。
「ちょっ、エダリヤ様!?聞こえてるんでしょ?」
そう、彼はこの間の武術部門の決勝戦で、自ら棄権をしたエダリヤ王子である。
「うるさい。構うな」
そう言うと、その場から離れようとするエダリヤ。
「ちょっと聞いてよっ!ねぇっ!うっわっ、あっ!」
カヌアが無理矢理エダリヤを引っ張ったせいで、そのまま中庭の噴水のある池へと落ちてしまったのである。
バシャンという音と共に、エダリヤを道連れにしていた。
(何だろこれ…デジャヴ…)
「お前…はぁ…これ以上俺の心を乱すな…」
そう言って顔を赤くするエダリヤ。
「え?どういう…」
カヌアはチラチラと彼の周辺を見る。
(あぁ!水に濡れるとフラフィーが見えないんだった!!)
「お前が聞きたいことはわかっている。なぜ棄権したのかだろ?」
「そうっ!!どうしてあんなこと」
「正直なところお前の言っていたことは、悔しいが当たっている…それにやはり女に手は出せない。だから棄権した。母国に対しても小さな抵抗だな。俺は…優勝しないと言う選択に出たんだ」
その言葉に、カヌアは少し顔が緩んだ。
「そう…で?それは続けるの?続けないの?そのあなたが嫌いなこと」
「とりあえずそのままやる。これでも一国を担う者だからな。ただ嫌なことは嫌だって言えるようにする。あんな事言われたの初めてだったよ。お前、誰にでもああなのか?」
「ふふ、どうだろ?そっかそっかぁ頑張って!それより、出よっか!風邪ひいちゃう!」
二人でびしょ濡れになりながら噴水池から出ると、それぞれの部屋へと歩き出した。
その途中、エダリヤが心配そうにカヌアに言った。
「あとおま…カヌア。あの戦い方だと死ぬぞ?あんま無茶するなよ。そう言われたことないか?」
「あ、ある…てかよく言われる…その人にいつも心配させてばっかりで…ふふふ」
思い出し笑いをしながらカヌアは言う。
すると後ろから、息を切らして走ってくるその人物が来た。
ウィルだ。
「カヌアッ!えっ!?ちょっ!何でこんなに濡れてるんだ!?」
焦ったように二人を見るウィル。
カヌアはクスクスと笑ってて返事をしない。
「ん?何で笑っているんだ?エダ!また何かしたのか!?とりあえず風邪引くから、ほら!」
ウィルは自分の着ていた服を脱いで、カヌアにかけた。
「ほらね!ふふふ…ウィル様大丈夫ですよ!早く部屋へ戻って湯浴みでもします」
カヌアは何だか嬉しそうに言った。
「あぁ…部屋まで送る」
ウィルはよくわからないまま、エダリヤを一度見るとカヌアの肩を抱き寄せて、部屋までの道を歩き出した。
(なんなんだ?心配だ…)
不安に思うウィルであった。
(俺の方が被害を被ったんだが…まさに濡れ衣だ…やはり、カヌアを心配してる奴っていうのはウィルか…)
エダリヤはそう思いながら、二人の背中を見た。
部屋まで送ってもらうと、ニコニコカヌアにウィルが不思議な顔をして言う。
「本当に何もないんだな?」
「はいっ!ウィル様は、一体何をそんなにご心配されてるんです?」
「全てだ。カヌアの全てが心配なんだ」
「あ、えっと…」
ウィルのまさかの答えにカヌアは戸惑う。
「あ!ウィル様!剣術部門、優勝おめでとうございます!すぐにお伝えしに行きたかったのですが、その…」
色々と思い出したカヌアは、先程の女性達の話をしてもいいものかと少し口籠もった。
「あぁ。それより本当に風邪を引く。早く着替えを…」
そう言うウィルを遮って、勇気を出してカヌアは言った。
「あ、あの!着替え直したら、ウィル様のお部屋へ行ってもよろしいですか?ちゃんとお祝いも言いたいですし、その…そう!先程の剣術についてもお聞きしたいですし!」
「あぁ。もちろんだ。ゆっくりでいい。しっかり温まってな。部屋で待ってる」
ウィルは微笑んで承諾してくれた。
内心は嬉しすぎて火を吹いていたが。
そんなウィルを見てカヌアは思った。
(お父様みたい)
カヌアは湯浴みをした後、着替えてウィルの自室へと足を運んだ。
「先程はありがとうございました。あの上着を…」
カヌアはお礼を言い、上着を返した。
「なんかこうやってすぐにお部屋に行けると、自分もお城に住んでるみたいです」
「ずっといればいい」
「え?…えぇと…ウィル様、キルラ様に勝つなんてすごいですね!」
話を逸らしたカヌア。
「ん?俺が負けると思ってたのか?」
意地悪そうに聞いてくるウィル。
「あ、いえいえいえいえ!違いますよ!そ、それにキルラ様のあの技をモノにしてましたよね!?すごいです!いつの間に」
「それは違うな。逆だ。あれをキルラに教えたのは俺だからな。幼い時だから、あいつは覚えてないんだろうけど」
ウィルは真実を教えた。
「え!?そうなんですか?ではでは、あの連続技は!?あぁいうのを練習の時に繰り出して欲しかったです!」
「あれは…そうだなぁ大切なものは隠したくなるだろ?そんな感じだ」
含みがあるようにウィルは言った。
「もしかして、そう言う隠し技みたいなの、いっぱい持ってるんですか?」
カヌアは鈍感。
「知りたいか?全てを?俺の全てを…」
「はいっ!知りたいです!」
真っ直ぐに鈍感なのである。
ウィルはニコリと笑って思う。
(逆にどこまでやっても気が付かないのか、気になってきたな)
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




