episode71〜こんな形で〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
武術試合、第五回戦。
カヌアは思いがけずに勝ち進んでいた。
相手は中々の強さと速さを持ち合わせていたが、カヌアがそれを上回っていた。
本当にその場にいる誰もが、ここまで残るとは思っていなかった娘である。
今度はちゃんと一目置かれ始めていた。
ウィルはというと試合前に自らが言ったように、やはりここで敗退してしまったようだ。
優勝候補である、オメオクスの第一王子エダリヤに負けたのだ。
(ついに明日…残った三人で、それぞれ戦って第三位までを決めるのか…緊張してきた…でもそれ以上に…ワクワクする!)
武道バカになりつつあるカヌアは、明日のためにその場を後にして部屋へと戻った。
そして、武術部門決勝戦当日。
ついに、今日この場で優勝者が決まる。
まずはアルガダの選手とオメオクスのエダリヤが戦う。
程なくして、勝者はエダリヤとなった。
そして、カヌアがいよいよ優勝候補のエダリヤと戦う時が来た。
コキッポキッ
これはカヌアが身体をほぐす際に出る音だ。
ん?何の格闘物語って?
一応確認するが、これは異世界転生恋愛物語である。
互いに礼をして、開始の合図が鳴る。
それと同時にカヌアが先に仕掛ける。
しかし、どの方向でどんな技を繰り出しても、その攻撃は全てエダリヤ受け流される。
(えぇー…少し変えるか…)
カヌアは体力を消耗するが、連続技に挑んだ。
全て真正面から行く。
しかし、全てを軽々しく止められる。
(あぁ、何この人…)
そして、一発渾身の一手を出す。
それをエダリヤは手のひら一本で、返した。
カヌアはその反動でかなりの距離飛ばされた。
背中を強く打つ。
「ゔぅ…ハァハァハァハァ…」
カヌアの息がどんどん荒くなる。
再度、エダリヤのところに走る。
寸前で今度は天高く飛び上がり、後ろから仕掛ける。
しかし、やはりその攻撃も止められ、その反動でまた飛ばされた。
すると、カヌアは何か違和感を感じた。
それを確かめるかのように、もう一度エダリヤに仕掛けに行く。
何度も何度も止められ、弾き飛ばされる。
(あぁ、わかっちゃった…そりゃ息も切れてないわけだ。……体力勝負ねぇ)
カヌアが何度弾き飛ばされて倒れても、何度も何度も攻撃を仕掛けてくるため、エダリヤが口を開いた。
「お前いい加減諦めたらどうだ?このままやったら嫁の貰い手もいなくなるぞ?」
「あぁ、はいはい、余計なお世話です。ほんと、やめて…引く手あまたなんで!!それより…あんたももうやめたら??そういうの」
出ましたよ。
王子に向かってあんた呼ばわり。
カヌアが失礼になる時は、本性が出始めているから。
ここから更に詰め寄る。
「は?」
エダリヤは訳が分からず返す。
カヌアは更に続けて言う。
「本当はこんな事やりたくないんでしょ?傷つけたくないんでしょ?殴ったり、投げたり、そういう事、嫌なんでしょ?それに私は尚更なんじゃない?女だから。今まで女の子に手出した事ないでしょ?お優しい事…ね?
色々とうんざりしてるんなら、ぜーんぶやめればいいのに。あーぁ、このまま逃げれたら良いのにね!」
(何だ…何を…言ってるんだ?この女)
そう思うと、エダリヤは少しキレ気味に言った。
「お前…何か勘違いしていないか?」
「…別に…勘違いなんてしてないと思うけど?…まぁ勘違いでもいいか…だけどそうだろうがそうじゃなかろうが、私がそうしたいから、今からやるね!!」
カヌアがそう言うと、エダリヤの元へ再度立ち向かう。
「お前…何言ってやがる?何を考え…」
カヌアは攻撃を仕掛けた。
もちろん止められる。
「そうやって…嫌な武道を無理やりやらされてきたのかな?そうかな?図星?」
攻撃しながらカヌアは言う。
「お前に何がわかる?」
今度は足元を狙って、思いっきり蹴りを入れる。
しかし、足を踏まれて止められる。
「痛っっーい!ヒィー」
カヌアが声を上げたので、エダリヤは一瞬怯んだ。
「ハァハァハァハァ…フッわかるよ…あんたの心わかる、私にはね。だってそうでしょ?あんた一度だって仕掛けてこないじゃん。最初っから私、一切攻撃受けてないんだけど?私が勝手に自滅するようにしてるだけなんじゃない?それで私の攻撃の全てを受けて、その中で打ち砕いてるだけ。逃げたくても逃げれないし、やりたくなくてもやらなきゃいけない。王子って大変ね。でもね…悲しいのよ悲しいの、その一手一手が。そして優しいから…」
そう言って、また後ろから仕掛ける。
振り向くとわかっているから、そのままエダリヤの頭を片手で押して後ろに周り、腕を首に回す。
「そうだ…だから夜中も寝てる間に無意識に逃げようと、出ようとしてるんじゃない?その病気、縛ってるのあんた自身なんだよ…だから、私がその’臆病な’あんたを叩きのめしてやる。そして私が解放してあげる」
そうエダリヤの耳元で言うカヌア。
エダリヤは、カヌアの腕を振り払うと、その表情はかなり困惑していた。
「なんか揉めてるな?」
遠くから、心配そうに見守るウィルが呟く。
そして、まだまだ攻撃を仕掛けるカヌア。
しかしカヌアの体力は、限界寸前まで来ていた。
それでも戦う。
攻撃を繰り返す。
「…………」
すると、エダリヤは急に動きを止めて背を向けた。
(ん?何だ?)
そしてエダリヤはレフェリーの元へ行き、何やら話をしたと思ったら、そのまま会場を後にしようとした。
すると、レフェリーから衝撃的な言葉が出た。
「オメオクス国、エダリヤ殿下…棄権に伴い、勝者アルデリア国、カヌアーリの勝利!」
そう叫ぶレフェリーの言葉に、誰もが動揺を隠せないでいた。
どよめきがすごい。
(え?)
「ちょっちょっと待っ!」
引き止めようとするカヌアを、エダリヤの従者が止めた。
エダリヤは振り向かず、その場から出て行ってしまった。
(何なんだ…あいつは…)
息一つ切れてなかったエダリヤが顔を赤く染めて、心臓の鼓動だけがただただ速くなっていった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




