episode70〜夢、動、病〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
クーロスが武術試合の四回戦を棄権したと聞いて、肩を落としたカヌア。
その重い足取りで、王宮へと戻っていた。
武道大会の出場者は、全員王宮で過ごすことになっているので、カヌアも専用の寝床が用意されていた。
普通の出場者なら大部屋で何人かと過ごすのだが、カヌアはたった一人の女性ということもあり、きちんと部屋が用意されていた。
その部屋は思ったよりも煌びやかで、おそらくウィルの強い希望で用意されたものだろう。
カヌアは何だかとても疲れていた。
精神的にぽっかりと穴が空いたような…
(今日は…もう寝よう)
そして翌日…
カヌアはとてつもない違和感で目が覚めることとなる。
カヌアは寝返りを打ちながら、目が覚めた。
(んー…なんか、寝たのか寝てないのか…疲れが取れな…)
「んなっ!!!誰よ!?」
その状態に驚き、カヌアは勢いよく身体を起こす。
隣には知らない男が、いつの間にか寝ていたのだ。
カヌアは布団をめくって、自分の服を着ているか確かめる。
(大丈夫ね、大丈夫…いや!!全然だいじょばないよ!!)
すると、カヌアが慌てている騒々しさに目が覚めたのか、その男がムクっと起き上がった。
「あ、んぁ?あぁ…やっちゃったか…」
その言葉にカヌアは過剰に反応した。
「え!?ヤッ…え!?ええええええ!?おそらくそのような記憶はございませんが!?」
「あぁ、俺もない…ちょっと変わった持病でな、何にも覚えてないんだ…」
まだ寝ぼけながらそう言う男。
(そそそそそんな変わった持病なんてあるんですか!?あれ?この人…)
カヌアは何かを思ったが、男の発言によって勘違いを炸裂するのであった。
「…あいつら…見張っとけって言ったのに…」
(え!?待って!!見られながら?何なの!?そんな病気本当にあ…)
するとその時、部屋の扉からノックする音が聞こえた。
コンコンコ…
「あ!!」
バンッ!!
ノックが聞こえて、確認の声がする前に勢いよく扉が開いた。
そして焦って入って来たのはアルデリアの王子、ウィルであった。
「カヌア!!」
(あ…終わった…現行犯なの?これ?)
そのままぎゅうっと、力一杯カヌアを抱きしめるウィルは心配して言う。
「何もされてないか!?」
「多分してない…よな?」
男が平然と応える。
(え?多分って…そんな誤解を招くようなこと…)
「お前に聞いてないぞ!エダ!!従者はどうした!?なぜ誰も止めなかった!?夜に徘徊すること知ってるんだよな!?」
ウィルは憤慨しながら捲し立てた。
(エダ?…あ!こいつ!オメオクスのエダリヤ王子かっ!!何てこったい…そんなやつと…)
カヌアがその男のことを思い出していると、更に部屋が勢いよく開いた。
「エダリヤ様!こんな所に!!ウィルテンダー殿下申し訳ございません。私共がちゃんと見てなかったばかりに」
エダリヤの従者らしき人物達が、部屋の中へ入って来た。
(あぁ〜次から次へと…騒々しいな…しかも皆、普通に入って来てるけど、ここ、女子の部屋よ?寝床よ?)
カヌアは何だか、若干どうでもよくなってきていた。
すると、エダリヤは立ち上がると、カヌアの方を軽く振り向いて言った。
「すまなかった…」
エダリヤはぼぉ〜としながら、そのまま部屋を出て行ってしまった。
(はぁ…もう勘弁してくれ…それより…)
「あの、ウィル様?苦しいです…」
「あ、すまない」
ウィルは抱きしめていたその手を、緩めて言った。
「ウィル様!私おそらく…いや絶対に何もしてません!ほらっ!」
カヌアが布団をめくろうとしたが、即座にウィルに遮られた。
顔が少し赤い。
「ところでエダリヤ様のご持病とは?」
「あぁ夢遊病と言ってな、たまに寝たまま徘徊するらしいんだ。普通は子供の時に多い症状で、大人になれば治る事があるらしいんだが、エダにはまだそれがある。寝てるから本人には記憶がない。だから、部屋の前には厳重に護衛兼見張りがいるはずなのだが…それにしても本当に何もなくて良かった!本当に…」
再度強く抱きしめられるカヌア。
(ウィル様、私が寝巻きなの気が付いてるのかな?)
カヌアの災難な朝は、顔が熱くなって終わった。
そしてそんな中、武術の五日目、つまり五回戦が今日行われようとしていた。
カヌアはその百人の中の六人に残るという、成績を収めていた。
(あぁ、昨日に引き続き、今朝から色々ありすぎて頭が回らない…ここは身体を動かして…気合いっ!!)
パンッ!
カヌアは急に、自分の頬を両手で思いっきし叩いた。
周りがその謎の男勝りな行動にビビる。
すると横から、ウィルが話しかけて来た。
「今朝は…大丈夫だったか?その…」
「ウィル様?私を誰だと思ってらっしゃいます?もう守ってもらうほど弱くはない、リヴール家の淑女です!ふふふ、だから全然大丈夫です!ほら!この通り!」
両頬を赤くしたまま、ニコッと笑う。
(そういう事じゃないんだが…まぁいいか)
ウィルはそう思いながらも、その笑顔に癒される。
「それにしてもここまで残るとは…本当に強いんだなカヌア。このまま勝ち進めれば俺とも当たるかと思ったが、それはきっと叶わないな…」
「ん?なぜです?」
「今日の俺の対戦相手は、優勝候補のエダだ。あいつは本気で強い。何を考えてるかわからない分、全然動きが読めないんだ」
「あぁ、確かに…フラフィーが無ですもんねぇ。そんなに強いんですか?尚更対戦してみたいですね!」
カヌアは生き生きして言った。
(まったく…恐怖心とかないのか?)
「あまり無理はしないようにな…カヌアもほどほどに楽しんで」
その言葉が嬉しかったのか、カヌアは親指を立てて満面の笑みで応えた。
本当はやってはいけないのよ?
いけないの、王子に対してそんな仕草。
でもその仕草が可愛すぎてウィルは、カヌアの手を取って思わずその手にキスをした。
(怪我だけはしないように)
と祈りを込めて。
カヌアは試合前にドキドキを注入されて、その分顔が真っ赤になった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




