episode69〜突然に〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
大会は一種目毎に行われる。
それは出場者全員が、馬術以外の全種目に出るのが必須だからである。
各国二十名、つまり全百名はいるので、大会全体で約一ヶ月はかかる。
出場者に負担をかけないためだ。
まず開会式を経て、初日から六日間で武術試合を行う。
次に剣術、これも武術と同じような日程だ。
その後が馬術なのだが、これは馬の関係で各国十名ずつの出場に限られる。
よって馬術のみ全五十名となる。
最後が弓術で、これも武術同様それぞれ六日間の配分である。
そして閉会式を終えた後なのだが、これがカヌアにとっては一番苦痛になりうる。
交流や慰労を込めての社交界が、四日に渡って行われる予定だ。
これももちろん全員必須である。
中々ハードに見えるが、試合自体は勝ち残っても必ず一人一日一試合であるので、身体を休める時間は十分にある。
ただ初回の試合で負けた人は、後々本当にやる事がないので、各々時間を潰す者もいる。
観光をする者もいれば、身体を鍛える者、嫁探しをする者まで意外といる。
さて、現在はまだ武術部門が始まったばかりの、初戦の方である。
カヌアはというと、順調に三回戦を勝ち抜いていた。
(フッ…余裕余裕…一瞬相手の言動にブチギレそうになったなったけど…セーーーフッ!)
いや…‘殺しかけていた‘の間違いである。
相手は一瞬、死んだ祖父が見えていたそうな。
カヌアは自分の都合のいいように、自己暗示しやすい。
会場が少し注目し始めていたのは、言うまでもない。
その理由の一つに以下のような事がある。
彼女だけは嫁にしたくないと…
しかし一部のマニアックな輩には、嫁にしたいと思う者もいるらしく…
物好きもいたもんだ。
アルデリアの殿下もその一人である。
カヌアはレグの様子でも見ながら、ついでに他の国から来た馬でも見に行こうと厩へと向かっていた。
すると何だか嗅いだことのある嫌な臭いと、雰囲気を感じ取った。
厩付近が何だか騒がしい。
カヌアはその不安を抱えたまま、その場所へと走った。
(え…)
ボヤだ…火事とまではいかないが、微かに火の位置はわかる程度の燃え方をしていた。
それを見たカヌアは、嫌な記憶を思い出した。
そう、ミザールでの街での火事だ。
その時にロザリーを建物から助け出した時の記憶だ。
しかし、今回は本当に範囲が狭かったため、すぐに消し止められた模様。
厩が近かったので、火が移らないか不安ではあったが、幸いそういう事態には陥らなかった。
ホッとしたカヌアはふと周りを見た。
すると、見たことのある後ろ姿を発見した。
(あれは…)
その後ろ姿が少しフラッとしたと思ったら、壁にもたれかかるようにしていた。
従者らしき人が咄嗟に支える。
カヌアはその人物に駆け寄って、声をかけた。
「ルヒト様っ!?大丈夫ですか?」
「あ、あぁカヌア…少し気分がね…休めば大丈夫だから…」
ルヒトはそう言っているが、顔色が良くない。
彼の従者が、お水やタオルなどを持ってくると言うので、カヌアはここは任せてと言い、ルヒトを隅の方に移動させて座らせた。
「ありがとう…この間と逆だね」
力無く笑うルヒト。
「えぇ。もしかしてこういうこと、よくあるんですか?」
「いや、アレさえ見なければ大丈夫なんだけど…久しぶりだったから…」
「アレ?」
「あぁ、ちょっと火が苦手でね。できるだけ避けてはいたんだけど…ごめんね…迷惑かけちゃったね」
「何言ってるんですか!?迷惑だなんて!水臭いじゃないっすか!」
(え?こんな話し方だったっけ…?)
ルヒトは一瞬戸惑ったが、すぐに笑みを溢してお礼を言った。
「ふふ、ありがとう」
すると従者らしき人物が、水の入ったボトルなどを持ってきてルヒトへと渡した。
そして先程の薬を一緒に飲んで、少し落ち着くルヒト。
「あ、それってもしかしてこの間、私が頂いた物と同じやつですか?」
「あ、うん…これはね、この間のとは違って、もう少し強い効果が出るように、調合してあるんだ。この前のもそうだけど漢方って言って、北の方にある国のものなんだ。独特な味がするけどね」
「漢方…いつも持ち歩いてるんですか?」
「そうだね。いざという時のためにね」
「私もこの間はその‘いざという時‘ に、助けられました。ありがとうございます」
「それは良かった。ふぅ…少し落ち着いてきたかな…」
「あまり…無理しないで下さいね」
「ありがとう。そういえば…一つ聞いていいかな?」
そうルヒトに言われたカヌアは頷いた。
「この間…僕たちがこの国に到着した日に、矢を放ってきたのはカヌアじゃないよね?」
真をついてきたルヒトに、カヌアは表情が固まった。
「それに、あの風船もカヌアが寸前に用意したんでしょ?」
「……はい…すいません…騙すつもりはなかったんですけど、ちょっと色々ありまして…」
(都の男が嫉妬に狂って矢を放ったなんて言えない…言えやしないよ…)
「そう。自分から罪を被るなんて。ふふふ。もし僕がそれに対して厳しい罰を与えてたらどうしてたの?」
「も、もちろんちゃんとお受けしてました…よ?」
カヌアはバツが悪そうな顔をして、ルヒトを見る。
「カヌア?いつもこんな無茶なことしてるのかな?ん?」
カヌアの髪の毛を、そっと掻き分けながら覗き込むルヒト。
(近いな…)
「まさか…フフフフフフフ…たまたま…ですよ「
「そう。なら良いんだけど。もっと自分を大事にしなね」
(フラフィーが信じてない…)
するとルヒトはゆっくり立ち上がると、またねと手を振って従者と共に去って行った。
(あぁ、面白いなぁ…欲しくなっちゃう)
ルヒトは思いながら、部屋へと戻って行った。
そして、ボヤの原因がわからないまま四日目になった。
その日、カヌアにとって衝撃的な事が起きた。
(今日勝てば明日はクーロス叔父様とね!フフフ…楽しみぃ…ん?うーん、あっちかな?)
カヌアは辺りをくまなく見渡し探し回ったが、勝ち上がっていたはずのクーロスが会場のどこにもいなかった。
カヌアは気になり、近くにいたレフェリーに聞いた。
「あの…アルデリアのクーロスという者が今日、試合のはずなんですけど…もしかしてもう終わりました?」
「少しお待ちを……あぁ、その者は本日付けで棄権なさってますね。なので本来対戦相手だったはずの…」
「えっ!?ちょっ!き、棄権ってどういう事ですか!?なぜ!」
レフェリーのその言葉に、カヌアが身を乗り出した。
それはもう、頭突きをするのではないかというくらいの距離で申し立てた。
「い、いや、詳しくはわかり兼ねますが…本人自らの希望だったので…」
そのレフェリーの言葉を聞いて、カヌアはその場に崩れ落ちた。
(何で…何でよ…意味がわからない…ん?もしかして、お母様とかに何かあって、それで急用で駆けつけた?いやいやいやいや!それなら私にも連絡が来るはず!これは早く試合を片付けて、事実確認をしに行かなければ!!)
カヌアのクーロスに対する思いは強かった。
それが四回戦の相手を秒で倒す理由に、強く繋がった。
今までのどの試合よりも、決着がつくのが早かったのではないだろうか?
それを見ていたウィルはカヌアの変化に気が付いていた。
(ん?何であんなに急いだ戦い方をしてるんだ?いつもならもう少し考えながら楽しんでやってるのに…)
さすが、よく観察してらっしゃる。
そしてカヌアは試合が終わると、一目散にクーロスのいるカリストの森へとレグを走らせた。
(おかしいな…いつもならこの辺りにいるんだけど。姿も見えなければ気配もしない…)
結局、森にはいなかった。
その後、リヴール家の屋敷にも足を運んだが会えずじまいでいた。
(今度また来てみるか…)
カヌアは残念さとモヤモヤを心に抱えたまま、一日を終えた。
そして…カヌアに更なる災難が舞い込む。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




