episode6〜お見舞い〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
静かな廊下を心臓の鼓動が響く。
カヌアは今、ある想いを抱えウィル殿下のいる部屋に向かっていた。
(とにかく穏便に済ませたい… リヴール家の名誉もかかっている… )
コンコンコン
「ウィル殿下、お休み中失礼致します」
案内してくれた従者が、ドア越しに声を掛ける。
すると、中から髪の長い綺麗な顔立ちの青年が、静かに顔を覗かせた。
「何だ? ウィル様は今… 」
彼はこちらを見ると、後ろに控えていたカヌアと目が合った。
そして、従者が陛下からの伝言を青年に伝えたところ、すんなりと中に通してくれたのだ。
(ウィル王子の側近か。美しいな、髪が銀色だ)
中に入ると、部屋の奥の方から咳をする声が聞こえた。
「カブラ、どうした?」
そのかすれた声は、美しい造りのベッドからだった。
しかし姿は見えない。
「ウィル様、お客様がお見えになられております。リヴール家のご息女、カヌアーリ様です」
そう言う側近ことカブラの横を見て、カヌアは思った。
(む? この人のフラフィー、めっちゃニヤついてないか?)
それを聞いたウィル王子が、グッと起き上がる。
「突然の訪問お許し下さい。わたくし、リヴール家のカヌアーリと申します。ウィルテンダー殿下、この様なお時間に申し訳ございません。お風邪を召したと陛下からお聞き致しました。お加減の程、いかがでしょうか?」
そう言いながら、一礼するカヌア。
恐る恐る顔を上げてみる。
(うわぁーやっぱ熱すごいんだ。顔が真っ赤! 熱そうだもん… 早く謝って退散しよう)
しかし、動揺が隠さずに、言葉が乱れてしまった。
「あ、あの、私、昨日は申し訳ございませんでした。池で濡れてしまったせいで、こんなお風邪を召されてしま… 」
「ちょっ、すまない。カブラ、席を外してくれないか?」
何かが気になったのか、話を遮られてしまった。
するとウィルは、カブラに目を向けた。
カブラは、二人のとんでもなく間にいたのだ。
本人はスンとして立っているが、食い気味で話を聞いているように見える。
目が笑っていたのだ。
彼のフラフィーはというと、肩に乗って舞い上がり状態で聞いてる。
(本人とフラフィーのギャップがすごい)
「これは失礼。わたくしめが聞いてはよろしくないような、お話もあるかもしれませんしね。どうぞごゆっくりと、存分に、お話しくださいませ」
(含みがある言い方だな。いや殿下、風邪引いてて辛そうだから)
「昨日の件は特に気にしてない。お前は… 引かなかったのか、風邪」
王子から、まさかの優しいお言葉が飛んできた。
「あ、はい! わたくし、昔から身体だけは丈夫な様で」
「そうか… 」
ウィルは安心したように、フワッと笑った。
(なんと! 王子スマイルーー! え!? 笑ったよね今!? それとも、「へっお前はいいな!」 的な笑い? どっち!?)
フラフィーで確認をと思ったカヌア……
しかしおかしな事に、視えるはずのソレが見当たらない。
「ニーナから全て聞いている。それにその場で見てたからな、ずっと」
(え? ずっと? いつから? 見張られてたのか)
「私も先程知りました。まさか、あの美少… お嬢様がニーナ王女だったなんて… 」
「ニーナは茶会を、とても楽しみにしていたからな。嫌な結果にならずに済んでよかった。俺からも礼を… 」
(ん?)
「お前… その眼の色… ゴホッゴホッ」
「殿下、どうかお身体を横にして下さい。とてもお辛そうで… 」
焦ったカヌアが近づいて、毛布をかけようとした瞬間…
「だ! 大事ないっ! 下がれ!」
思いがけず、強い口調になってしまったようだ。
(あ、馴れ馴れしかったかな。怒らせ… )
「そ、その、移したら大変であろう… 風邪を」
表情は毛布で隠れて見えないが、その口調が和らいだのはわかった。
(えぇー優しいじゃん、王子〜ツンデレかよ!)
「お心遣い痛み入ります。それでは、そろそろ失礼致します。早く良くなるようお見舞い申し上げます」
そう言って、カヌアは一礼し、部屋を後にした。
そして部屋を出ると、カブラが立っていた。
「本日はわざわざ足を運んで頂き、ありがとうございました。またいつでもいらして下さいね」
(フラフィーが視えるのに、何を考えているかわからないなこの人)
カヌアはぺこりと会釈をして、家族の元に戻った。
カブラがウィルの元へと近づき囁いた。
「彼女、また来てくれますかね? 仲良くなれました?」
「… うるさい」
ウィルは頬をまだ赤くしながら、弱々しい声で返した。
「ふふふふふ。おやすみなさい殿下」
そう言い、優しく部屋の明かりを消したカブラ。
ウィルはふっと笑みを浮かべ、深い眠りについた。
そしてカヌアは家族と合流してから、馬車で帰宅した。
屋敷へ戻ってから、ウィルの言ってた事が少し気になり、鏡に顔を覗かせていた。
(あ、可愛い… 私)
その前に自分を愛でていた。
(この国の私、そう ’カヌアちゃん’ はお目目がクリクリで可愛い! 父、母ありがとう!)
ニヤニヤが止まらない。
自画自賛が止まらない。
(…… )
(…… この顔は、うん、封印しとこう。台無しになるわ)
「それにしても眼の色って?? 何だ?」
(別に変わりなく茶色だけど?)
カヌアは不思議に思ったが、明日は朝早く家庭教師が来る予定なので、もう眠らなければならない。
今日は本当に疲れた。
そして明日から、またレディーへの道を黙々と進まなければならないと思うと、少し憂鬱な気分になった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




