episode64〜風船〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
最近の王都は、お祭り状態で大変賑わっていた。
たくさんの出店や人、風船売りや大道芸をする人達もいる。
カヌア達は今、王都グランシャリオにいる。
本日も目的は一つ。
例のごとく武道大会における対戦国の偵察である。
ついに王宮を出て、ここまで来てしまっていた。
そして、隣には今はもうそのお供みたいになっているワイムがいる。
「ねぇ…何でこんなに…女性が多いの?何…なの?」
「それはですね…本日お越しになる予定の…スプルミア王国の第二…王子なんですけど…その方は女性に勝るとも…劣らない美貌の…持ち…主なんです」
二人が何故こんなにも話しづらそうにしているのには、理由があった。
会話の通り、女性達がその美貌を見るために集まり過ぎていたためである。
(何てこったい…こんなんじゃ偵察どころじゃないよぉ)
すると、王都入り口の方から黄色い歓声が上がった。
「御到着されたみたいですね…」
「ねぇ…高くてよく見える所行かない?そういうのよく知ってるでしょ?」
カヌアはニヤニヤしながら言った。
ワイムは少しため息を吐くと、仕方ないという感じでカヌアをヒョイっと抱え上げた。
「ちょっ!」
カヌアはワイムの思いがけない行動に非常に驚いた。
そして、ワイムは持ち前の跳躍力で、あっという間に見晴らしの良い建物の上まで登って行った。
「ちょっと!ちょっと!自分で登れたのに!無駄に触るな、よっ!」
カヌアはワイムの胸に指を突きつけながら言った。
「いや…こっちの方が早いんで。ほら、ここならよく見えますよ?双眼鏡持って来てるんでしょ?」
ワイムは何事もなかったかのように、スンとした顔で言った。
(チッ、心臓に悪いわぁ〜)
カヌアはそう思いつつも、懐から双眼鏡を出して、スプルミアの王子を探し始めた。
(いた!うーん、確かに…女性的な雰囲気っぽい感じもするけど…)
「うーん、ヴーン…」
カヌアはレンズを覗き込みながら、声を漏らす。
(何をそんなに唸ってるだろう?)
ワイムはそんなカヌアの様子を観察していた。
「……………」
(あ、今度は黙った…)
「まずい…え?まずいよ!!」
少し見る方向を変えながら、カヌアは叫んだ!
「ワイムッ!!激マズっ!行くよ!!」
何が何だかわからないが、非常事態だと言うことは感じ取ったワイム。
二人で屋根を縫うように飛んだ。
カヌアの言う、そのマズいという方向へと。
そこには弓を持ち、今にも矢を放とうとしている男の姿があった。
カヌアはその男めがけて行こうとするが、先にそれを成したのはワイムだった。
男はワイムが体当たりした衝撃で倒れる。
しかし、少し遅かった。
その男が引いた矢は既に射抜かれ、スプルミアの一行の方に向かっていた。
その方で悲鳴が聞こえた。
カヌアはすぐさま持っていた双眼鏡で確認をした。
「ハァハァハァハァ。間一髪…ワイムが少し軌道を変えたみたいね…あっぶねぇ…」
言うカヌアはその男の方を向いて、睨みを利かせた。
「おい、何でスプルミアの王子を狙った?お前何者だ?」
カヌアにそう言われ、ワイムに取り押さえられたままの男は口を開いた。
「お前には、関係ねぇ!離せっ!」
「よぉーし!一発殴るか!?」
カヌアは男に近づき、拳を握り始めた。
本当に殺気だけで殺されそうだったので、男は慌てて口を割った。
「あの男のせいで…俺はメリーを…失った…」
「メリー?」
「メリーは俺の…俺の婚約者だっ!いや…だったんだ」
「婚約者…その人はその…亡くなったってこと?」
「は?バカ言え!生きてるわ!あの男に夢中になって、俺は捨てられたんだっ!」
「………」
(あぁ…くだらねぇ…)
「ちょっと、聞け…あのな?男女の関係は当事者しかわからないこともあると思うが、多分それは…愛情不足の可能性、もしくは愛情過剰の、どっちかなんじゃないか?あ、ちなみに愛情って言うのはただ愛する事じゃないぞ?女性の感情は未知すぎる。私でも訳わからない。言葉にしないとわからないこともあるし、それだけでもダメなこともある。私もうまく言えないが……まぁ…頑張れ」
言ってる本人もよくわからないが、わかる範囲で言ってみた。
そして続ける。
「あとな、そんなことのために、国を巻き込むことになるところだったんだぞ?てか、もう遅いかもしれない。矢を射ってしまったんだからな…お前の首を突き出せば何とかなりそうだがなぁ。あー…んー…そうだなぁ…お前、一つ借りな?死んでも返してもらうからな?いいか?」
一応言っておくが、これは全て主人公カヌアの言葉である。
素が出過ぎていて男まさりが過ぎていた。
泣いてるのか恐れているのか、感情が崩壊しそうな男をカヌアは庇うという選択に出たのだ。
(もし、アルデリアの者が意思を持って狙ったと知れたら、非常にめんどいからな…)
男のフラフィーの震えが止まらないのがわかる。
そしてワイムは思った。
(この人だけは絶対に…是が非でも敵に回したくない…そして借りも作りたくない)
と…
「カヌア様?一体どうするおつもりです?この始末、片付けるのはかなり困難かと…」
そう心配するワイムを見て、カヌアは大丈夫と言って笑った。
その顔を見てワイムは少し…ウィルの気持ちがわかった気がした。
男から弓をもらい、スプルミアの殿下の元へ急いで行くカヌア達。
その途中でワイムはカヌアに疑問を投げかけた。
「カヌア様…あなた一体…このような身のこなしをどこで覚えたんですか?まさか、このスピードで飛ぶなんて…」
「ンフフゥ、ひぃみぃつぅ。それよりスプルミアの殿下の名前教えて!」
(え?知らなかったのか…)
「ルヒト・ブルー・スプルミア様です。矢がとてもお得意で…」
物知りでなくとも知っている、その方の名前をワイムは言った。
「そう…わかった。あと、ちょっと寄り道するよ!」
そう言うと、カヌアは少し軌道を変えた。
すると、カヌアはお菓子売りから袋いっぱいの砂糖菓子を購入した。
(え?こんな時に菓子!?)
カヌアが何を考えているのかわからないワイム。
そして次は風船売りの所へ行って、有り金全部を渡し風船を丸ごと購入した。
その風船に砂糖菓子を袋ごとくくり付け、何やら目を瞑って風を読んだ。
スプルミア一行の方を見たと思ったら、その風船を離し空へと飛ばした。
「さぁ!行くよ!」
ワイムに向かってそう言うと、カヌアは再び走り出した。
そして、騒然としているスプルミア一行の現場に辿り着いたカヌア達。
するとおもむろにカヌアが、その国の殿下の前に出てひざまづいた。
「ルヒト殿下、突然のご無礼をお許し下さい。その矢を放ったのは私でございます。お怪我の方はございませんでしたか?」
そう言ったカヌアに対し、護衛の者が捉えようとしたがルヒトがそれを制した。
「君はなぜ矢を射ったんだい?」
「はい…それは…」
と言いながらカヌアは上を指差した。
一同が見上げた先には、空高くに一束の風船が浮遊していた。
そうである。
先程カヌアが仕掛けたあの風船が、天高くそこにあったのだ。
「ん?何だあれは…?」
「はい…あの風船に何やら怪しい袋が下がっているのが見えます。危険だと思い撃ち落とそうとしたのですが、恥ずかしながら私の矢の腕は良いとは言えません。この通り失敗し、誤って殿下の方へと飛んで行ってしまったのです」
カヌアはしれっと大嘘をブッこいた。
(なるほど…あの奇行はそう言うことだったのか…それにしても瞬時でよくここまで思いついたな)
ワイムは少し離れたところで見ていた。
カヌアが一人で行くからと言ったからだ。
「私の腕では到底撃ち落とすのは困難かと…」
これは本当である。
するとルヒトが急に立ち上がり、弓を構えた。
そして、天に向かって弓を放ったのだ。
次の瞬間、パンッという音と共に何かが弾け飛んだ。
そして…空から色とりどりの小さな砂糖菓子が降ってきた。
それはまるで星が降って来たかのように。
歓声が湧き上がる。
その周りにいた者達は、さっきまでの恐怖が一瞬で感動に変わった。
カヌアはニヤッと笑った。
その表情をルヒトは見逃さなかった。
(ん?何だろう?この子何か…)
「さすが!ルヒト殿下でございますね!お見事です!先程の失態の罰はちゃんとお受けいたします。何なりと…」
しかし、被せてルヒトが言った。
「いや、誤って射ってしまったのなら仕方ない。君、名前は?」
(え?名前?言いたくねぇ…しょうがないか)
「寛大な御心痛み入ります。名はカヌアーリと申します」
「そう…もう少し弓の腕を磨くようにね」
「…はい」
(王宮に戻って練習しよう)
そしてカヌアは一行を見送った。
離れて見ていたワイムが近づいてきて言った。
「全て計算通りですか?」
「大っ成功!」
カヌアはドヤ顔で言った。
事なきを終え、二人は先程の弓を放った男の元へと戻った。
そして男に弓を返し王宮へと戻る途中、ワイムの襟元で何か光ったのが見えた。
カヌアは手を伸ばし、それを手にした。
「さっきの砂糖菓子だ…」
そう言うとその砂糖菓子を手にし、ワイムのマスクをグイッと下げて口の中に突っ込んだ。
ワイムは不意打ち過ぎてかなり驚いていたが、甘いその味と目の前の笑顔に心を許してしまっていた。
すると、カヌアは初めて見たワイムの顔に近づきながら言った。
「ん?んんん?…えっ?リ、リアムさんっ!?いや、でも肌の色が…」
「あぁ、そうです。厩番のリアムは俺の双子の兄です」
「ああああ兄!?そうだったの!?今まで顔見えなかったから全然わからなかったけど、確かに声が似ているような…そうだったんだぁ…ふふふ」
笑みを溢すカヌアを見て言った。
「なんですか?」
「いや…ワイムの素顔が見れて嬉しいなって」
そう言うカヌアに、ワイムは少し戸惑いながら頬を掻いた。
(それにしても何であいつは‘さん‘付けなんだ?)
とも思いながら。
一方、ウィルは来賓対応で大忙し状態であった。
(最近カヌアと剣を交えられてない!会えてない!話せてない!)
カヌア不足に陥っていた。
「ウィル様、ワイムからの情報によるとカヌア様は、着々と御到着されている各国の出場者の偵察に行ってるようです。ついでに少し接触もしたようで…とりあえずワイムが付きっきりで見てい…」
カブラはウィルの殺気を感じ取り、途中で言うのをやめた。
「毎日一緒にいるのか?ワイムは?」
「い、いえ。毎日では…ないです。偵察の時のみで…」
(かなり友好的な関係になっているとは…死んでも言えない…)
カブラは墓へ持っていく物を一つ増やした。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




