episode62〜その剣は〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
ファイスから作ってもらった剣を受け取ったカヌアとウィル。
二人は場所を移動し、剣術場へと向かった。
急に現れた殿下に、会場中がどよめく。
今は王族の服を着ているので、遠くからでもすぐに殿下だと周りも気が付いた。
この状況に慣れているカヌア達は、周りを気にせず真っ直ぐにお互いを見た。
礼をするウィルとカヌア。
剣を構える。
そして…二人の剣が交わった。
その瞬間…疾風のような風が巻き起こる。
しかし、二人はそれ以上に、ある不思議な感覚に襲われた。
((あれ…?音がしない…))
二人には剣の交わる感覚はあったのだが、その音が全く聞こえなかったのだ。
剣が一度離れる。
二人は一瞬、目を見張った。
そして、目を合わせて歓喜の笑顔が湧き上がる。
カヌアがすぐさま、次の一手へと剣を前に出した。
それからは音も聞こえ、先ほどのような風も感じなかった。
やはりウィルは強い。
カヌアがどんなに際どい一手を出そうとも、すぐに受け止め流す。
その繰り返しをある程度行い、試し打ちなので、キリのいいところでウィルがカヌアの剣を弾き飛ばした。
「ハァハァハァハァ…ありがとう…ございました」
カヌアは礼をし、それに倣ってウィルも礼をする。
二人は最初の一手の事が気になり、まだ目を合わせたままだ。
いや、それだけではない。
新たな剣で戦っている間、なんとも言えない感覚に襲われていた。
そして二人は再び笑う。
カヌアは近づき、おもむろにウィルの手を取り武術場を出て行く。
ウィルもわけがわからないまま引っ張られていたが、黙ってついて行く。
そして、人気があまりないところまで行くと、カヌアの足が止まった。
勢いよくウィルの方へ振り向くカヌア。
「ウィル様っ!すごいですっ!!何ですか!?あの感覚!!剣が…最初の交わった時の剣の音が!音がしませんでした!!私だけでしょうか!?」
興奮冷めやらぬ状態のカヌアは、その気持ちを全面に押し出した。
「いや…俺も音が聞こえなかった。最初だけだが…それとともに風が来た感覚もあったな。すごいな…こんなの初めてだ」
ウィルは、その剣を握りしめながら言う。
「本当すごい!最っ高ですね!信じられない!…それにしても、ウィル様?前から思ってたんですけど、私に全然剣を仕掛けてきませんよね!これじゃあ練習になりません!」
カヌアは少し頬を膨らまして。ウィルに責めよる。
「あ、あぁ、そうだな。少し手加減をしていたかもしれない。次回からはちゃんと…する」
ウィルはもう少し罵倒されたいと思いながら、ちゃんとやろうと心に決めた。
変態心ここにあり。
そして…
武道大会まであと二週間となった。
一番最初に来たのは、アルデリア国から北東に位置するオメオクス王国だ。
こんなに早く?とお思いだろうが、現場の下見や荷解きなどがあるので早めに来る国もある。
そしてその一行の中心にいるのが、オメオクスの第一王子、エダリヤ・ヴェール・オメオクス殿下である。
短髪で身体がガッチリしているタイプだ。
体型に似合わず、綺麗な緑色の目をしていた。
アルデリア国王陛下への拝謁を無事終了し、用意されていた部屋に案内される途中であった。
そんなライバルになり得るであろう人物を、カヌアは陰ながら観察していた。
そう、使用人になりすまして箒を持ちながら一人で唸っていた。
「うーむ、めちゃ強そう…」
「そうですね。オメオクスは武術に特化した国です。その中でもエダリヤ殿下は群を抜いてお強い…」
いつの間にか横にいたワイムが応えた。
「ワッワイム!?ちょっとビックリさせないでよ!」
最近この猿忍者のようなウィルの従者であるワイムは、何かとカヌアの前に現れる。
ウィルの指示であるのは言うまでもない。
そのため顔見知りになり、素のまま話せるようになっていた。
「それにしてもあのエダリヤ王子に勝つには、腕力だけでは絶対無理そうよねぇ…動きを読む力、それとスピード…あと二週間でどこまでできるか…」
とカヌアは対策を考えながら、口にしていた。
(え…?本気で勝つおつもりか?…棄権するという選択肢は皆無なのか?ウィル様は何としてでも、エダリヤ様と当たるのを避けさせようとしているのだが…)
ワイムは悩んでいた。
ほぼ毎日カヌアを監視してきて、少しは性格を把握してきたつもりだった。
それでも彼には理解できない事が多く、未だそれは継続中である。
「てかオメオクス国の人達来るの早くない?…何か目的があるのかしら?」
「あぁそれは、エダリヤ殿下は少し変わった御病気をお持ちなのです。そのため、周辺の状況の把握やそのための準備が必要なんですよ」
難なく応えるワイム。
「え!?病気!?そんな方が今回の大会に出場して大丈夫なの!?」
「そうですね。お身体はかなり丈夫なので心配ないかと…」
(ん?どゆこと?病気だけど、身体は丈夫?…ハッ!心の病?)
「それにしても詳しいわねワイム。さすが情報屋」
カヌアはワイムが何のためにまとわりついているのか知らない。
(情報屋?なんか違うような…)
「そうですね。私は元々オメオクス出身なので、大体のことは把握してるつもりです」
「あら!そうなの!?初耳!確かに少し系統が似てるわね…てか、ワイム、そろそろその布ちょっと外して、顔見せなさいよ!」
カヌアはワイムの口元にかかっている布に手をかけようとする。
それを制止しようとするワイム。
わちゃわちゃとしている二人に、流石に気が付いたエダリヤがこっちへと向かって来た。
「おい!そこの…」
その声にカヌアはビクッとした。
そしてふとワイムの方を見ると、そこには既に誰もいなかった。
(クッソ…あの猿忍者!逃げやがったな)
しかし、その場をどうにかしなきゃと思いエダリヤの方を向いた。
「おい、今そこに黒い男がいなかったか?」
「あ、えぇといたようないないような…」
「ん?そうか…?」
と言いながらもそのまま側で立っているエダリヤ。
カヌアは、ん?と思い声をかけた。
「何か?」
「邪魔だ。手が止まっている。使用人は自分の仕事をしろ」
(あん?邪、魔、だ!?今邪魔って言いやがったな?)
「申し遅れました。わたくし、その使用人ではなく、今回の大会の出場者です。以後お見知り置きを」
カヌアは半ギレ状態で言った。
「は?出場者だと?お前が?……ふっ、寝言は寝てる時に言えよ」
そのまま捨て台詞を吐いて、エダリヤは去って行った。
(はっらったっつーーー!何こいつ!横暴だ横暴っ!大会で当たったら絶対に地獄を味わわせてやる…)
カヌアの心は荒んでいくのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




