episode60〜鍛冶屋〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
ここは、王都グランシャリオより少し西側にあるフェクダという街である。
今朝、カヌアは自分の不手際により、剣を亡きモノにしてしまった。
よってある目的のもと、この街に足を運んでいたのだ。
隣には本来稽古をお願いするはずだったウィルがいる。
もちろん従者カブラも一緒だ。
「ウィル様、本当に申し訳ございません。本日の稽古をこのような時間に割いてしまって」
カヌアが謝罪をすると、ウィルは行き場が定まらない左手を少し震わせながら言った。
「全然構わない。以前昼食を取った店で、出会ったあの若い夫妻がやってるという鍛冶屋に向かっているんだよな?」
「はい!そうなんです!兄から聞いて思い出しました!一度行ってみたいと思っていましたので」
カヌアはあの日を少し懐かしんで言った。
そんな二人の後ろで、カブラは話半分で聞いてきた。
ウィルの左手が気になって仕方がなかったのだ。
(早くカヌア様の肩を抱き寄せれば良いのに)
街の外れに行くと、遠くの方に二本の煙突が見えた。
更に近づいてみると、左に小さな家が、右に小屋のそれぞれに煙突がついていた。
(こっちが住まい?こっちが工房?かな?)
家までの小道が綺麗に整備されている。
小石一つない。
遠くから見てもわかるぐらい、家の扉が普通の家よりは広めにできていた。
すると、左側の家の広い扉が開き、中から小柄な女性が出てきた。
女性はこちらに気づいたようで、お辞儀をしてる。
(あ!ロディーさんだ!)
カヌア達が近づくに連れて、女性も思い出したように駆け寄って来た。
「あ!こんにちは!お久しぶりです!この間は本当にありがとうございました!」
「ロディーさん!こんにちは!突然お伺いしてしまってすいません。素敵なお家ですね!こちらは工房ですか?」
カヌアが笑顔でそう言うと、優しい口調で応えるロディー。
「ありがとうございます!細々とやってるのでたまにしかお客さん来ないんですけど。楽しくやってます。本日はどうされたんですか?」
「えぇと、ちょっと剣を新調しようかと思いまして。それでファイスさん達を思い出してここに来ました」
「えっ!?カヌアさんのですか?」
「はい…えと、お忙しいかとは思いますが、お願いできますか?」
「はい!もちろんです!主人は今工房にいますので、そちらにご案内しますね!」
工房に入ると、熱を扱っているせいか部屋の中が暑くなっていた。
ここの鍛冶屋の店主であるファイスが、溶接用のマスクを着けて作業をしていた。
奥さんのロディーが声をかけてくれている。
彼はこちらに気が付いたようで軽く会釈した。
そして、作業がひと段落ついたところで、ファイスが工房から出てきた。
「お待たせしてしまいすみません。お久しぶりです、先日はありがとうございました。本日はいかがなされました?」
「こんにちは。お忙しいのに、こちらこそ突然すみません」
カヌア達は挨拶し、事の成り行きをファイスに説明した。
「そうですか…この間のお礼もまだできていませんし、是非作らせてください。お代は頂きませんので」
しかし人情カヌアは、それを断固拒否した。
「いえ!そういう訳にはいきません!それを生業としているのですから、ちゃんとお支払いします!その代わり…できるだけ早く仕立てて頂けないでしょうか?どうかお願いしますっ!」
カヌアは頭を深く下げた。
するとその必死なカヌアを見て、夫妻はお互いに顔を見合わせて微笑んだ。
「カヌアさん、先ほども申し上げましたように、私共はさほどお客様が潤っておりません。なので結構手は空いてるほうなんですよ?」
ロディーが言うと、続けてファイスも口を開いた。
「この間のご恩もありますし、私達で良ければ是非、カヌアさんの剣を最優先に作らせて頂きます」
それを聞いたカヌアは、嬉しくて二人の手を握ってお礼を言った。
「しかしですね、私も鍛治職人として譲れないところはあります。なので少しはお時間かかることをご了承お願いしますね!」
と言うファイスに、カヌアは快く返事をした。
すると終始見ていたウィルがやっと口を開いた。
「ファイス殿、すまないが私もお願いしても良いか?その…同じような剣を一つ作りたいのだが…」
(ん?ウィル様がよそ行きの言葉遣いになってる?)
その突然の申し出に、驚いたカヌアだったがそれをとても嬉しく思った。
「いいじゃないですか!?一緒に作りましょう!お揃いですね!」
ウィルは頬を染めながら、また何やら考えていた。
そして色々と好みやら要望をひと通り話し合うと、注文は終了した。
「では、出来上がり次第、こちらに連絡を入れて頂けませんでしょうか?話は通しておきますので」
側にいたカブラが、王宮の門番へのメモ書きと通行書を渡した。
するとファイス達はとても驚いた顔をし、ウィルの顔を見て言った。
「え?あ、あなた様はもしかして…ウィルテンダー殿下であらせられますか?」
それに対し、ウィルはコクッと頷いて言った。
「あぁ、名乗るのが遅くなってすまない…」
「申し訳ございません!そうとは知らず、このような対応ではご無礼にあたりませんでしたか?」
(あぁ。まぁ顔は無愛想だからな…ビビるよな…)
「いや、むしろこちらが急に頼み申したのに快く請け負ってくれて…その感謝している」
ウィルは珍しく、はにかみながらお礼を言った。
(んふふ〜ちゃんと優しいんだよねぇウィル様)
カヌアはそう思いながら、ニコニコとウィルを見ていた。
工房を出て帰ろうと外に出た時、ウィルがファイスの元へ行き、何やら話していた。
そしてウィルが小包を渡すと、ファイスは首を縦に振ったと思ったら、すぐに横に振りそれを制した。
(手付金か何かかな?)
戻って来たウィルにカヌアが聞いた。
「どうしたんです?何か言い忘れですか?」
「あぁ、まあそんなところだ」
機嫌良さげに応えたウィル。
その夜…
ファイス夫妻はその小包を見て、顔を見合わせながら微笑んでいた。
「素敵ねあなた」
「あぁ…作り甲斐があるね」
と幸せそうにしていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




