episode56〜再会〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
アルガダ王国からの帰路について二日経った。
カヌア達は途中休憩である草原に来ていた。
辺り一面紫色の花が咲き誇る。
そんな中、ウィルの元には何やら王宮から早馬の知らせが来ていた。
そして、その知らせを聞いたウィルがカヌアの元へとやって来た。
「カヌア、少し話がしたいんだがいいか?」
と言われ馬車に誘われるカヌア。
(レグ…)
そんなカヌアを見て察したのか、ウィルが優しく言った。
「レグとアルを少し身軽にして、一緒に歩かせてはどうだ?」
カヌアは顔が明るくなり、二つ返事で承諾した。
ウィルのエスコートを経て、馬車へと乗り込むカヌア。
向かい合わせに乗る二人。
馬車が動き始めると、ウィルは少し複雑な顔をしながら話し始めた。
「カヌアは…キルラと話してる時はなんというか…自然体で…その…俺の時もそういう風にしてくれると嬉しいんだが…」
「え!?で、でもウィル様は私の国の王族ですし、尊いお方になるので…あんな態度を取ってしまっては、失礼に当たるのでは…それに、キルラ殿下は何というか王族感が無いというか、見てると腹が立つと言うか…』」
(あ、マズイ…何言ってんだ私…)
カヌアはそう思いながら、ウィルをそっと見た。
すると少し悲しそうな表情でいたウィル。
それに対し、すかさずフォローを入れる。
「あっ、でももう少し砕けた感じに、会話できるようには努力はします!」
「そうか…楽しみにしている」
そして、カヌアは少し気になっていた事を聞いた。
「そういえば、キルラ殿下と帰り際にお話してましたよね?例の開催日が決まったらって。それって何のことですか?」
「あぁ、それはだ…まだ正式には決まってなくてだな…」
とウィルは何故か濁して言った。
「ではその日を楽しみにしています!ウィル様!」
とニコッと笑い、少し圧をかけるようにカヌアは言った。
ウィルは少し頬を赤くしていたが、その笑顔に騙されまいと堪えて本題に入った。
「カヌア、例の禁書の件なんだがニーナの元に早馬を送って、見てもらうよう頼んだんだ。やはり王宮書庫内には二重螺旋の模様のついた本は無かったらしい」
「ニーナ様が?そうですか…それでは一体どこに…きっと、この世界のどこかにはあるとは思うんです。そんな気がしてなりません…」
すると、次の瞬間馬車が勢いよく止まった。
その衝撃でカヌアは目の前にいたウィルの胸に、ダイブしてしまった。
そしてすぐさま、カブラが無事を確認するために馬車のドアを開けに来た。
「お怪我は!……あ、失礼しました…」
と言って一旦ドアを閉めたが、すかさずカヌアがドアを勢いよく開けた。
「カブラ様!?な、何があったのでしょうか!?」
カヌアは顔を赤くしたままそう言った。
すると馬車の前に、一人の少年が倒れているのが見えた。
「ん?子供?」
「急に子供が馬車の前に出て来たみたいで…」
とカブラは言いかけたが、カヌアはその子供が心配になり急いで駆け寄った。
「大丈夫!?」
カヌアが心配そうに声をかけると、御者が説明してきた。
「この子供が急に横から飛んで来たのです」
「へ?飛んできた?飛び出て来たのではなく?轢いたのですか?」
「いえ、轢く寸前に馬を止めたので間一髪でした。お怪我はございませんでした?」
「はい…私たちは何とも…それより…」
と言ってカヌアはその子供を見た。
子供はまだ十歳ほどの男の子だった。
(…何でこの子はこんなにボロボロ…ん?この子どっかで…)
するとその少年が飛んで来たであろう方向から、小汚い大柄な男が走ってやってきた。
そしてその少年の頭を掴むと、いきなり地面へと押しつけた。
「大変申し訳ございません!こいつが大変な無礼を!ご気分を害されたようでしたら、こいつをどうにでもしてやって下さい!」
その様子を見て、カヌアの空気が一変した。
「…あぁ…本当に気分が悪いな…おめぇのその言動がなっ!!」
睨みスイッチが入ったカヌア。
その行動を、初めて見た周りの者は唖然としていた。
しかし、ウィルとカブラは違った。
二人とも、あ…と言う顔をして見守っている。
ウィルに関しては、少しワクワクしていた。
「この子はなぜここへ飛んできた?飛・ん・で!来たんだ?あ゛」
そう言うと、カヌアはその男の胸ぐらを掴んだ。
その男は一瞬怯んだが、小娘だからか言い返してきた。
「はっ?勝手にこいつが飛び出て来たんだろ?」
「まさかだが、蹴り飛ばしたりはしてないよな?身体中アザだらけだが?」
カヌアがガンを飛ばした。
「そんなんこいつが勝手に…ゔ!」
そう言い訳しようとした瞬間、男の喉仏にカヌアの拳がどんどんめり込んでいった。
「これ以上…これ以上その汚い口を開くな」
そう言うカヌアの目には、全て視えていたのだ。
そう、この男の言うことがフラフィーを介して全て嘘であることが。
すると、カヌアはその手を急に緩めて男を離した。
「なら、本当にこの子をどうにでもして良いんだな?」
「あ、あぁ…こんなやつ別にどうとでも…」
「ではこの少年を頂こう。文句はないな」
言葉を吐き捨てるとすぐさまカヌアは、その少年を連れて馬車の中へと乗り込んだ。
笑いを堪えてるウィルも続いて馬車へと乗る。
男はただただ、唖然として座り込んだままだった。
(あぁ………もう…もう自分を止められない…誰か…)
馬車の中で自己嫌悪、追い嫌悪しまくっているカヌア。
それを見たウィルが、笑いを解放しながら言った。
「フフッ、後悔してるのか?」
「いえっ!後悔なんてしていません!ただ自分のこの衝動を抑えられなくなっているのが、情けなくて…引いてらっしゃいますよね?」
その言葉に、ウィルが顔を近づけて言ってきた。
「この顔が引いてるように見えるか?」
「い、いえ…むしろ何だか…」
ここまでで言うのをやめた。
それは隣にいる少年が肩を震わせていたからだ。
「ごめん…怖い思いさせちゃったよね?」
カヌアが少年の肩を摩ろうとした時、恐る恐る少年は口を開いた。
「何でもします何でもします…なので痛い事だけはしないで下さい」
その弱った声を聞いて、カヌアは心臓が握りつぶされる衝動に襲われた。
そしてカヌアは力一杯その少年を抱きしめた。
優しくそして憂いを込めて。
「あなたに苦しい思いをさせるのは、今みたいに力一杯抱きしめる時だけ。だからもう…そんな不安な顔はしないで」
すると、その少年は安心したのかその震えは涙に変わった。フラフィーも安心して泣いている。
そんなカヌアを見て、ウィルは更に愛おしく思った。
少年が落ち着いたのを見て、カヌアが聞いた。
「ねぇ、君…もしかして、グランシャリオの都で一度会ってない?絵画を…その…盗んだ時に私にぶつかってきたよね?」
「あ…確かにぶつかったかもしれないです…でもあの時は無我夢中で…」
申し訳なさそうに応える少年。
「それもさっきの男に言われてやったの?」
少年はコクっと頷く。
(ほんっと最低なやつ…子供を使うなんて…一発殴っときゃよかった!)
カヌアは再び怒りが込み上がって来た。
「あ、もしかして馬具店に行った帰りにぶつかったあの…トラストル家の商人が追いかけていた少年か?」
「はい。あの時よりさらに痩せてしまっていますが、この綺麗な黄色味がかった瞳…」
カヌアは少年の顔を優しく撫でながら言う。
それに少年が顔を少し赤らめる。
何故かウィルはムッとしていた。
「一つ聞いても良いかな?その時に商人のおじさんと一緒に、この辺りにアザのある男の人を見なかった?頭から黒い布を被ってたんだけど」
カヌアはまた勝手にウィルの顔面を借り、そこを指差しながら聞いた。
ウィル本人は嬉しいので良しとする。
「アザ…?アザがあったかはわかりませんでしたけど、その黒いマントの男の人は覚えていますよ。その商人のおじさんを調べてるように見えました…」
「え?調べてた?雇われてたんじゃなくって?」
「はい。そのマントの人、おじさんの事をつけてましたから」
(んんんん?一体どうなってるんだ?あぁこんがらがってきた…ノートにまとめたい今すぐ…)
カヌアの頭の中がグルグル一時停止していると、今度はウィルが質問してきた。
「やはりその男何かあるな…こちらでも調べさせ直そう。それはそうとこれからこの子をどうするつもりだ?」
考え始めるカヌア。
すると少年が口を開いた。
「僕は…気が付いた時には暗い所で生活していました。なので、親の顔も見たこと無いし家族もいません…そしていつの間にかあの人の下で働いていました。だから…頼れるような人もいなくて…」
弱々しく言う少年に、またもやカヌアはぎゅうと抱擁した。
ウィルがそれを少し横目で見る。
羨ましそうに見る。
カヌアは少し考えた後ら少年の方を向いた。
「ねぇ!君、名前は?私はカヌアーリ!カヌアでいいわ!」
「僕の名前はロキです!それは確実に本名かと…」
ほらと言うように、胸に閉まってあったペンダントを見せてくれた。
そこにはロキの目と同じ色の黄色い石が下がっていた。
そして、ロキと名前が彫ってあったのだ。
「そう!ロキね!でもそんな大切な物、簡単に人に見せちゃダメよ」
そう笑みを浮かべるカヌアは、続けて提案した。
「ではでは選んで下さい!
一、私の家で朝から晩まで働く。
二、毎日早寝早起きをして鬼のようにたくさん食べさせられる。
三、こわーい女主人のいるお屋敷に住む」
「え、えっと、いち?」
我が強い質問に困惑しながらも、ロキは応えた。
「ふふふ…ざんねーん!違うわ、答えは全てよ」
その言葉に困惑したのは、ロキだけではない。
「カヌア?この子をリヴール家に置くつもりか?」
と言うウィルに、カヌアは満面の笑みだけで応えた。
(お母様に怒られるだろーなー!怖いけどこの子のために頼み尽くそう!それに意外と理由を話せば、お母様は面倒見いいし、今は一番下の私も手がかからなくなってきたし。イケるなこりゃ)
とニヒルな笑みを少し溢した。
この娘自覚が無いようだが、今でもリヴール家の一番の問題児であることに変わりない。
まさに親の心子知らず…である。
そんな事を考えてるカヌアを横目にウィルは少年に対して、ある感情が湧き上がって来ていた。
(リ、リヴール家に住まわせるだと!?カヌアと共に生活…同じ家で、共に生活…)
ウィルは一つ屋根の下が羨ましくてたまらなかった。
(ん?待てよ?暗い所?どこかで…?てか最近、どこかでどこかでが多くないか自分?)
カヌアは外を眺めながらふと思ったが、そのうち思い出すだろうと、母アメリをどう説得するかの考えに耽った。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




