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episode53〜絶対に〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。



先程まで行われていた剣術は、無事に終わることができた。


そして、剣舞は夕刻から夜にかけて行われる。


それまでの間、各自休憩なり準備なりをするのだ。


カヌアはもちろん演者側なので、衣装の準備や踊り合わせなどで忙しい。


そんなカヌアはと言うと…


(アガガガガガガガ…コワイ、デキナイ、カエリタイ)


極度の緊張に見舞われていた。


とりあえず、演者達が集まる部屋に行こうと足を動かした。


すると、中から慌ただしく多くのフラフィーが飛びかっていた。


(何だろ?)


カヌアは嫌な予感に襲われ、急いで中へと入る。


そこには見るも耐えない、悲惨な光景が広がっていた。


そこへサラが駆け寄って来て言った。


「カヌア!楽器が!壊されて…誰かが…」


そこには本来剣舞で使うはずだった楽器類が、めちゃくちゃになって破壊されていた。


「どうしてこんな…こんな事に…」


それはこの国が用意してくれた物がほとんどだった。

恐らく前日から用意して置いといてくれたのだろう。


皆が悲しみと絶望に伏せている。


カヌアは怒りが込み上げて来た。


しかし、すぐにそれよりも今この場をどうすれば良いのか、という考えの方が強まってきた。


すると部屋の隅の方で、リュカとアルガダの人が何やら話し合っていた。


カヌアは彼らに話をしようと近づいた。


「アルデリアからの楽器は今ここへ持ってきたばかりなので全て無事です。しかし、それでも限りがあり、演奏に支障が出てしまうかと…」


そう言うリュカの声が聞こえた。


カヌアはその話を聞いて、リュカの所まで行かずに振り返り楽器を確認しに行った。


(うーん、確かに弦楽器や管楽器類はあるけど、大きい打楽器系は壊されてしまってるのか……確か…いや、うまくいくかな…でも…やってみるしかない!)


カヌアは何やら考えついて、おもむろに部屋を飛び出した。


そして、カヌアはそのまま王宮の調理場へと向かった。


(あそこなら絶対にあるはず…)


途中使用人に聞いて、案内をしてもらったりもした。


そして調理場へと着くと、それを探すのにさほど時間は要しなかった。


「あった!!」


カヌアが手にしたそれは、大人数でないと使わないような大きなボウルだった。


「すみませんが、このボウル二つほどお借り…いや、頂けせんか!?」


そうカヌアがわざわざそう言い直したのは、この後このボウルがもう調理用として意味をなさないのをわかっていたからだ。


それともう一つ、肉を叩く用のトンカチが目に入った。


「すみませんが、こちらもお借りできませんか?」


その場にいた使用人達も、カヌアの必死な様子を感じてすんなり渡してくれた。


「ありがとうございます!」


カヌアはそのトンカチと大きなボウルを二つ抱え、猛ダッシュで控え室へと戻った。


そして…何やらトンカチを振りかぶった。


カーンカン、カーンッ!


トンカチとボウルの当たる音が、何度も何度も響き渡る。


そのトンカチでそのボウルの中を叩きまくっているカヌア。


周りの人達は当然その行動に驚愕したが、カヌアはそんなのを気にする余裕もない。


ボウルの内側に拳サイズの凹みを均等に何箇所か作る。


そして、さらに小さいサイズの丸い凹みも何箇所かに。


それをもう一つのボウルも同じようにやる。


前世で見たことあるその楽器を、いま頭をフル回転させて作っているのだ。


(時間がない…そしてこれを使いこなせるのはきっとあの人だけ!これで本当に合ってるのかも…あやっしいっけっどっ!…できた!)


するとカヌアはそれを持つと、急いでリュカの所へ行った。


「リュカ様!!これを!これで本番、壊れた楽器の代用に出来ませんか!?」


リュカはとても驚いていた。

普段冷静な彼のフラフィーも困惑を隠せていない。


この楽器を初めて見たという表情だ。


カヌアが即席で作ったその楽器らしき物は、‘スティールパン‘という楽器を、似通うにして作り上げた物だった。


「これは…?打楽器の仲間らしきなのは、わかるけどどうやったら…」


リュカが少し困ったように言う。

カヌアはどうにかして繋げたかった。


そして本来壊れてなければ使ったであろう打楽器の中から、使えそうなスティックを選んだ。


そして、そのボウルと同じような素材の大きめの器の上にその楽器を置いた。


「少しだけ聞いてみて下さい」


カヌアはそのスティックを持ち、そのボウル内の凸凹を優しく跳ね、そしてなぞった。


すると何とも言えない音色が響く。


ボウル内の凹みの大きさによって音色が異なる。


周囲の人達も感嘆な表情で笑みを溢した。


「これは…」


「すいません!説明は後です!不躾なお願いですが、これができるのはリュカ様しかいないと思ってます。よろしくお願いします!」


カヌアは最大限に頭を下げた。


「うん…わかった、やってみる」


リュカは少し緊張したような笑みで、承諾した。


カヌアは笑顔を全開にすると、再び深々とお辞儀をした。


そして急いで衣装に着替えに行った。


(カヌアさん…本当に驚かされるよ…だから惹かれる)


リュカは走り去る彼女の後ろ姿を見て想った。


そして本番。


楽器が壊されたと、既に王宮内では噂になっていた。


不安な面持ちで皆が見守る中、まずはアルデリア国から魅せる。


すると、リュカがその二つのボウルを使って器用に弾き始めた。


やはりこの国でも聞いたことがないのか、その美しく響く音色に皆は感嘆な声をあげる。


カヌアが即興で作り上げたその楽器は、歪で本来とは違う位置になってしまっていただろう。


この音色達を本来に近い音にできたのは、今この場ではリュカが最適であった。


そしてリュカがこの短い間で仕上げられたのは、今までの経験と彼の持つ絶対音感がそうさせていた。


そして、その音や他の楽器と共に演者が華麗に舞う。


それはそれは不安なんて吹き飛ぶような完璧な演技と演奏。


誰もが素晴らしいと感じたであろう。

もちろん、その中にはウィルやキルラもいた。


(なんなんだ…あいつは…なぜこんなに心を惹きつける…ただの嫌な小娘だと思ってたのに…)


キルラはそんなカヌアに惹きつけられていた。


そしてこの国の陛下も、この剣舞に大変感動していた。


演奏が終わり、リュカが近寄ってきた。


「カヌアさん、本当に助かったよ。心から礼を言う。ありがとう。それにしても一体この楽器は?」


「えと、以前何かの本で読んだんですよ。それを見て参考にしたまでです。急いで作ったので歪でしたよね?それなのに使いこなすなんて本当にすごいです!さすがリュカ様!」


カヌアは屈託のない笑顔で言った。


「いや、こちらこそ新しい経験をさせてもらったね。それに…すごく素敵な舞いだったね!よく頑張ったね」


その褒め言葉に、カヌアは少し照れたように返した。


「リュカ様にたくさんご指導頂いた成果です。ありがとうございました。そういえば、この遠征中で初めてお話ししましたね!」


「うん…まぁウィル殿下にキツく言われているからねぇ。カヌアさんに近づくなって…俺としては毎日話したいんだけど…困った殿下だよね、ほんと。ふふ」


残念がるリュカ。


それに対して不思議に思うカヌア。


「何でですかねぇー?」


「ねぇー?……うっ…」


すると急に、リュカは猛烈な寒気に襲われた。


「ん?どうしました?」


カヌアが心配する。


(なんか寒気が…)


「いや、大丈夫だよ。今日はお疲れ様。食事をしてゆっくり休んでね」


身体をさすりながらリュカはその場を後にした。


ウィルが遠くの方で、殺気を送っていたのは言うまでもない。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

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