表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/134

episode4〜予想外の謁見〜

初投稿からの続きになります。

広いお心でお読みくだされば幸いです。


カヌアは今、暗闇の中にいる。


そう、自分だけの世界… そしてこのまま…


(昨日、あんなにあんっなに平穏を願っていたのに!! バカ! 私のバカ!)


「カヌア! 一体いつまでそうしてるんですか!?」


母アメリだ。


その言葉に、カヌアはその暗闇という布団から顔を出した。


(このまま出たくなかったのに)


しかし母は容赦なく、その暗闇を剥ぎ取ろうとする。


「早く支度なさい! わかっているわね? 他所行きのドレスよ! エミリア、よろしくね!」


「はい! 奥様!」


使用人のエミリアが、張り切り始めた。


さっきから、家中で慌ただしい声が聞こえてくる。


(わからないぞ? 何だ? 何だ? 出掛けるのか? 今そんな気分じゃ… ぁぁあ)


カヌアはそのまま布団を引っ剥がされ、あっという間に着替えさせられた。



昨日の出来事は、光の速さのごとく街中にまで広がっていた。


しかし、リヴール家は特に音沙汰は無かった。


そのはずなのに、カヌアは何故か、王宮へと向かう馬車の中へいる。

しかも一家勢揃いで。


今日の正午過ぎ頃、王宮からの使いの者が来たのだ。


その内容とは、夕刻の時、国王陛下との謁見により、王宮へ来いとの事。

そして、何故か晩餐を頂きに行くとの事。


(はて? 何故だ? 懲罰ではなく晩餐とは… まさか毒殺か? 最後の晩餐… ってやつか? お前らやっぱ死刑!! ってなるんか? そうなんか?)


カヌアは、最悪な事が頭によぎりまくっていた。


家族は落ち着いて静かに馬車に揺られているが、その周りのフラフィー達は、案の定落ち着きがない。


何でだ? 何でこんなことに!? と爺さんの顔をしきりと覗かせている。


(んー、可愛い。ほっこり…… じゃなーーーい! 反省せぃっ! 自分! こんのっこんのっ)


ガラスのハートは、前世からも引き継がれてる… はずだった。

しかし、この世界に来て少し強くなったようにも感じられた。


何故あんな事をしたのか…


悶々と悪い方向へ考えてしまう頭を抱えながら震えていると、馬車の揺れが止まった。


「着いたわよ。ほら、全員背筋を伸ばして、失礼のない様にね!」


そう言う母に、尊敬の眼差しを向けるカヌア。


(お母様… 頼もしすぎます! こんな訳わからん状態の中でも、リヴール家の女主人の威厳が眩しすぎます!)


馬車から降りると目の前には、夕陽を浴びた美しい城が私達を迎えてくれた。


(こんな状況下でなければ、心ゆくまで眺められたのに… )


今はそんな余裕が入る隙間なんぞ、ミジンコの隙間ほどもない。


「大丈夫だから」


その夕陽よりも眩しく、そして優しい笑顔で四男ミルサが肩を摩ってくれた。


それがカヌアの目の保養に、心の支えになっている。


(眼福〜)


「カヌア、俺たち全員が付いてる。心配ない」


クールながら、優しく頼もしい三男レイルの声が耳に入る。


こちらも耳の保養。


(イ・ケ・ボ)


心なしか、彼らのフラフィーもイケメンに視えてしまう。


(あー幸せ! この幸せを失いたくない!)


しかし、すぐさま現実に引き戻された。


昨日の事を思い出したのだ。


あの後帰ってからというもの、びしょ濡れのカヌアを見たお母様が、倒れそうになったのを兄様達が必死に介抱していた。


(え? そっち?)


もちろんお説教という名の雷が落ちたのは、言うまでもない。


そして、リヴール家にはあと二人の家族がいる。


長男のロイドと次男のフーリは現地集合だ。

既に王宮にはいるはずだ。


この国では齢十六ともなると立派な成人である。

リヴール家は代々王宮に仕えているので、十八歳と二十歳の兄二人は、既に王宮に勤めているのだ。


もちろん、父ラスファも王宮勤めだ。

しかも近衛隊長という強者。

父様は強いのだ。

ものすごく。


そうして、到着したばかりのリヴール家が王座の広間へ行くと、既に兄二人の姿があった。


すると、程なくして号令がかかる。


「リヴール家、全員前へ」


そう言われ、リヴール家当主である父ラスファを筆頭に、一家全員が王座の前へとひざまづいた。


そこに威厳を放ち座っているのが、ヴォルノフ国王陛下である。

王が静かに口を開く。


「発言を許す」


(そうか、勝手に話し始めたらだめなのか)


片膝を付き、胸に手を当てラスファは挨拶を始めた。


「本日は、リヴール家一同を王宮内へとお招き頂き、感謝申し上げます」


(あぁ陛下のフラフィーの表情がわからない。怒っているのか)


そう、フラフィーの視え方には、もう一つ欠点があった。

水に濡れると視えにくく、そして遠いと視えない。

単純に遠いから見えないのである。

小さいのでね。


陛下は言葉を出した。


「うむ。此度はご苦労であった。今日ここに呼んだのは… こちらへ」


陛下が横目でチラリと見た。


すると横の方から少女が…


(ん? あの子は… )


遠くて見えにくいが、あの時のいじめっ子達に囲まれてた黒髪美少女であった。


(え? ん? どゆこと?)


「リヴール家の娘。名をなんと言ったか」


カヌアは突然ふられて驚いたが、ここは令嬢、平常心を保って応える。


「はい。リヴール公爵家の末娘、名をカヌアーリと申します」


「そうか。カヌアーリ。昨日の其方の行動、恐れ入った。あの場で自身を犠牲にして、水を被るなど到底できない。私の娘ニーナを助けた件、見事であった。礼を申す」


それを聞いた従者達は、驚く者もいれば、笑みを浮かべる者もいた。


そう、国王陛下が礼を言うなど珍しいのだ。


(え!!? 礼を? 陛下が? こんの私に!?)


「と、とんでもございません! もったいなきお言葉!」


カヌアは驚きのあまり、咄嗟にそう応える。


「取り急ぎになってすまないが、其方達に食事を用意させた。十分に楽しむと良い」


そう。更に優しいお言葉をかけてくれた。


「は! もったいなき! 謹んでお受けいたします!」


とお父様が一礼し、国王陛下は王座から立ち去った。


それに続き、ニーナ王女も照れながら会釈をしその場を後にした。

萌えである。


(なるほどそう言う事だったのか。あぁー緊張したぁ)


要するに、昨日池の近くで絡まれてた黒髪美少女は、この国の王女ニーナ様だったということだ。


昨日の件で、カヌアが身を挺して助けたのを評価され、今日この場にいると言う事だ。


リヴール家一同は安堵の表情を浮かべる。

フラフィー達はと言うと… 絶賛お祭り騒ぎ中である。


(皆めっちゃ喜んでるぅ! そういえば、ウィル王子の姿が見えなかったな… 呆れられたか? そりゃまぁあんな目に合っちゃ、会いたくないよな)




ここまで読んでいただきありがとうございます。

何かお気づきの点があればコメントよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ