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episode45〜限りある時間〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。



夜の剣舞練習が始まって以来、カヌアはみるみるうちに上達していた。


カブラが用意してくれた演奏者の方々と、リュカのマンツーマンのレッスンのお陰で、ほぼモノになってきたのではないか。


そしてついに、遠征の出発の日が明後日と迫っていた。


(あ、ヤバい…遠征の準備全くしてないけど…衣装とかは準備してくれるって言うから、着替えとか生活用品もろもろ、あと剣とかってことか?まぁそんな荷物無いしすぐできるな)


とカヌアは思っている。


しかし、皆様お忘れではないでしょうか?

いや、ちゃんと覚えてますよね?

武術稽古の初日のことを。


カヌア嬢は、それはもう本人より大きな荷物を背負って、この王宮にやってきました。


一泊するわけでもないのに…


なので、今回の遠征ではどのくらいの荷物を背負って、いや引いてくるのかもしれない。

とても心配です。


そんなカヌアはというと、剣舞の最終調整に取り掛かっていた。


「今日はここまでにしましょうカヌアさん。とても上手になってきてるから心配はないと思うけど、一応最終確認ということで明日も夜間練習するでいいかな?」


優しくリュカがそう言うと、カヌアは笑顔で頷いた。


すると、リュカがカヌアの耳元で囁いた。


「では、明日は気分を変えて庭の方でやりましょう。同じ時間に庭園の時計塔の下で待ってるね」


カヌアは何も疑わずに笑顔で返事をした。


そして次の日の最終レッスンの日。


「皆様、今日まで大変お疲れ様でした。しかしこれからが本番です。アルガダ王国への道中、怪我などには十分気をつけて下さいね。わたくしも同行しますので、それまでに何かあれば遠慮なく聞いて下さい」


リュカが最後の言葉をかけ、締めた。


(そうか、リュカ様も同行するのか)


カヌアは結構無知である。


するとサラが声をかけてきた。


「カヌア!本当に上手になったね!すごく頑張ってたもんね。本番とても緊張するけど、一緒に頑張ろうね!」


「うん!頑張ろう!私も足引っ張らないように、頑張るね!そういえばレイルお兄様も、今回の遠征に同行するんだよね!良い思い出作れると良いね!」


カヌアがそう言うと、サラは意識しまくりで顔が真っ赤になっていた。


(ウフフフフフフ。何か発展があると良いね!)


とカヌアは密かに思った。


レッスン後、今日の報告をしようとウィルのいる公務室へ行ったカヌア。

しかし、遠征前日ということもあり、忙しいウィルには会うことができなかった。


カブラもいなかったため、他の従者に伝言をお願いした。


それからカヌアは、昨夜リュカに言われた場所に来ていた。


ここは王宮内にある庭園。


色とりどりの花や木が植えられている。


特に見事なのが、大きな花びらを何枚も重ねた牡丹の花であった。

至る所から良い香りが漂ってくる。


(こんな素敵なところがあったんだ。うふぅ〜良い香り〜)


あまり花には興味がなかったカヌアだが、この見事な庭園に感銘を受けざるを得なかった。


夕刻ということもあり、薄暗い庭園に街灯が灯り始める。


(うわぁ〜素敵素敵〜)


すると、庭の奥の方に少し開けた場所があった。

そこには、精密に彫られたであろう石造りの時計塔が見える。


(これが時計塔…何か不思議な模様だな…)


近づいてまじまじと観察するカヌア。


珍しさのあまり、人が入ろうとしないような狭い裏にまで回って観察しようとしていた。


(折角だから裏も見ーちゃおっ!狭めぇな…ん?何だこれ?何か……)


狭いし暗いし錆がついているせいか、とても見えにくいが、その裏に何か絵みたいなものが彫られているのが見えた。


手で摩ってみるカヌア。


(ん?何だこれ?これって…)


カヌアはその彫り物を何度も摩る。


(やっぱり!トゥバンの丘にあった蛇の絵と似てる…それにあの時見た夢の…)


すると、隙間から漏れる光が突然遮られた。


「カヌアさん?見つけた。確かに時計塔の下で待ってるとは言ったけど、こんな真下じゃなくても大丈夫だよ?」


笑みが溢れてるリュカが顔を覗かせていた。


カヌアは恥ずかしそうに、ごきげんようと挨拶した。


リュカが手を伸ばしてきて、その場所から出るカヌアを優しく支えてくれた。


(こいつバカだなって絶対思われてる…)


「少し汚れちゃってるね」


とリュカは言い、軽く服をはらってくれた。


「すすすすいません!大丈夫です、ありがとうございます。この時計塔、造りが何だか珍しくてつい隅々まで見てしまいました。それにしても王宮内にこんな素敵な場所があったんですね!もっと早く来れば良かった」


カヌアは恥ずかしさのあまり話を逸らした。


「これはクロノスの塔だね。アルデリア王国が設立された時からあるみたいだけど…それにしてもここには初めて来たの?そうか…カヌアさんの初めてを一緒に過ごせて良かった」


と街灯に照らされてるリュカは、いつもより麗しく見えた。


「あのぅところで、演奏者の方がまだ来られてないですよね?」


そうカヌアが聞いた。


「うん。今日は最後だし二人だけでやりたかったんだ。彼らには昨日のうちに今日は大丈夫って言ってあるから。だから今は二人きりだよ、ふふふ」


と含みのある言い方をされたが、カヌアは特に気にしていなかった。


(まぁ演奏者の人も、一週間も夜間練習に付き合わされて嫌だったよね)


「明日は朝早いだろうから、今日は少しだけにしておしまいにしよう。ではカヌアさん、今日はここでやってみましょう。私が軽く演奏しますね」


とリュカは言い、カヌアは音に合わせて舞い始めた。


街灯の灯りや周りに咲き誇る牡丹の花、それらに囲まれてカヌアは舞う。


リュカは演奏しながらそれを見ていた。

ただただ見ていた。

指導者としてではなく、ただ一人の男として。


舞い終わると、楽器を置いたリュカがカヌアの元へ来た。


「完璧です、カヌアさん。素敵だ…本当に…」


そう言うと、リュカはカヌアの後頭部に手を回した。


カヌアは不意打ち過ぎて頭が真っ白になっていた。

そしてそのまま口付けを…。


(ん?少し固…)


していなかった。


二人の目の前には大きく広がった手があったのだ。


そしてカヌアは、その手にそのまま口元を覆われながら、誰かに後ろから抱きしめられる感覚があった。


「え?えっ!?ウィル様!?どうしてここに!?」


そこにはウィルの姿があった。


珍しく息を切らしている。


「現行犯ですよ?兄さん」


と言ってカブラがリュカの両手を掴んでいた。


「リュカ?もう一度言う。カヌアには手を出すな。これはお願いじゃなく命令だ」


とウィルが鋭い表情で言うと、リュカは軽くため息をついた。

そしていつもの笑みで言った。


「かしこまりました殿下」


(寸前のところでダメだったか…先手を打ったはずなのに、また失敗か…)


と残念がるリュカは、カブラに連れられて王宮へと戻って行った。


呆然とその場に立ち尽くすカヌア。


しかしウィルの腕は、カヌアの身体を離さないままだ。


「あ、ウィ、ウィル様?もうお二人とも行ってしまわれましたよ?」


「………」


無言のまま抱きしめるウィルの腕の力は強まる。


「きょ、今日はお忙しかったのでは?」


顔が真っ赤になりながらカヌアは聞いた。


すると腕は緩めずに、下を向いたままのウィルが静かに口を開いた。


「あぁ、でも間に合って良かった…」


(やはり…やはりあの時止めておけば良かった…あいつと二人きりにさせないようにしてたのに…本当に油断も隙もない)


ウィルは考えに耽ながら、しばらくそのままカヌアを抱きしめていた。


(……何これ何これ何これ!?)


カヌアは今まで経験したことのない出来事が続いたため、頭のパンクゲージが容量を超えた。


そして訳がわからなくなり考えるのをやめた。


なぜこうなる?

カヌアは恋愛偏差値が低すぎて、それに関しての状況を読み取る力が皆無であった。


その後、何故か肩を寄り添われながら王宮へと戻って行ったが、カヌアは脳内にその記憶を頭に残す力はなかった。


カヌアは自宅の屋敷に戻ると、ベッドの上でやっと先ほどのことと向き合った。


(あぁ〜何かどっと疲れた…………あれ…?やっぱりあの時……リュカ様、私に…キキキキキキスッしようとした!?…………いや、だよね、ありゃ…マジか!マジかっ!何で私!?ギリ未遂に終わって良かっったぁ〜…そんでもってウィル様のあれも何だったんだろ?あれは……あーやめだやめだやめだぁ考えるのやーめたっ!明日の準備しよう〜っと)


カヌアは顔が赤くなり、ぐったりしてやはり考えるのをやめた。


脳を違う方向へと向けるため、遠征の準備に没頭した。




ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

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