episode42〜駆け引き〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
剣舞の件を聞いたあの後、カヌアの 必殺‘念じる‘ が炸裂したため、ウィルは剣舞の承諾を与えざるを得なかった。
その技は、ウィルには抜群の効果があった。
言葉はいらない。
カヌアはウィルの両手をがっちり握り、さらには上目遣いを武器にして顔を近づけて念じただけのだから。
ウィルは至福の極みを感じていた。
(あれは反則だ…可愛すぎるだろ。そのまま…)
とウィルが思っていると、心を読んだのかバレバレなのか、カブラが口を出してきた。
「そのまま口付けでもハグでもして差し上げれば良かったのでは?」
と、ウィルがカヌアに甘すぎて、少しうんざりして来たカブラはさらに意地悪そうに主人に言った。
「お分かりですか?ウィル様?剣舞を許すということは、カヌア様も例の国に同行させると言うことになり得るのですよ?彼女なら言いかねない。あの長い道のり…私は心配です…色々と!」
と、珍しく怒っているカブラ。
それに対してウィルは応える。
「あぁ、わかっている。ちゃんと守りも固め、対策も取る。それに…カヌアとの長旅、初めての…長い夜…」
(あぁぁぁあー全っ然わかってない!)
カブラは更に頭を抱える問題を背負った。
剣舞といってもこの国のそれは、カヌアが前世でいた国にあったようなものとは少し違うらしい。
剣を使って技を見せたり、舞いをしたりはするが、もう少し軽快な音楽に合わせて披露するいう。
言わば大道芸寄りである。
数日後。
その日カヌアは浮かれていた。
以前から剣舞を一度やってみたかったのだから。
数日前にウィルからお許しを頂き、舞い上がっていたのだ。
(あれ?でもどこで披露するんだろ?…まぁいっか!)
剣舞さえできればどうでも良かった。
今日はいつもの厩通いを終えて、今から弓術場へと向かっているところだった。
すると、途中で人だかりができていた。
フラフィー達も群がる。
(お?なんか皆盛り上がってるな)
カヌアも何事かと思い、近くにいた人に聞いてみた。
「あのぅ、何かあるのでしょうか?皆さん集まって…」
「あぁ、なんか隣国のアルガダまで遠征するための同行者を募集してるらしい。張り紙が朝来たら貼ってあったんだよ」
と教えてくれた。
「え!?」
驚いたカヌアはその人にお礼を言うと、失礼と言いながら、人混みを掻き分け掲示物の前まで来た。
その掲示物を見て、カヌアは目をキラキラさせた。
そこにはこう書かれていた。
以下の者をアルガダ王国の遠征の同行者として求む。
・剣術の評価を高く受けている者、
または自信がある者
・剣舞の経験者、または自信がある者
・男女問わず(応相談)
希望者は、剣術指南レイルまで
カヌアはもちろん即応募の意思を固めた。
(ほんとだ!っかぁぁぁあー!やりぃ!あれ?剣舞?でも私の剣舞の稽古とは関係あるのかな?ないのかな?それにしてもだ、帰ったら早速お父様達にお許しをもらわないと…)
そう意気揚々としながら、予定通り弓術場へと足を運んだ。
ほぼ毎日通っているお陰か、少しずつ腕は良くなっている…と思っている。
相変わらずいつもの場所で、ノゥリアが全集中して弓を射っていた。
(いつ見ても綺麗なフォーム…)
そう思いノゥリアを手本にしたり、リビド指南に指導してもらったりして練習を終えた。
その後は剣術場へ向かい、掲示物の事を兄こと指南のレイルに聞きに走った。
レイルはやはり来ると思った、という顔をしながらこちらを見て言った。
「おい、カヌア。気持ちはわかるが答えは‘ダメ‘だ。お前を危ない所になんて行かせるわけないだろう。ましてや父上だってダメって言うに…」
カヌアがニヤニヤしながら聞いていたので、話す気が失せたらしい。
「お兄様?わたくしまだ何も言ってませんよ?何のことですか?あ、ちなみになんですけど、先日ウィル様に剣舞のお稽古を承諾してもらいました。本当に楽しみですぅ」
と、カヌアはカマをかけてみた。
その剣舞のお稽古と遠征の件は別だろうとは思っていたが、どうにか兄にイエスと言わせたいというカヌアの企みである。
すると予想通りレイルは反応した。
「なっ!お前!いつの間に!しかも剣舞を始めるだと?剣舞やったことないだろ?ん?ないよな?」
「ンフフフフフフフフ〜」
カヌアは含みのある笑いをしたが、もちろん剣舞のけの字もしたことはない。
「しかも既に殿下に掛け合っていたとは…そうなると断るにも断れないだろう。殿下に最終決定権があるからな」
とレイルから半ば無理矢理承諾を…いや騙したと言っても過言ではない…とりあえず、OKをもらえたので、カヌアの気味の悪い笑いが増してく一方だった。
(やったやったー!あとは本当にウィル様から承諾を得れば…イィヒヒッ)
剣術場でその様子を見てたサラは具合が悪いのかな?と思ったそう。
サラはその日、カヌアに話しかけるのをやめた。
そして、ウキウキで剣術を終え、本日の報告をしにウィルの元へと向かった。
部屋に入るといつものように微笑みながら待っていたウィル。
カヌアも本日の報告を素早く終わらせた。
そして本題へ。
「あの、ウィル様。今朝、掲示板の張り紙を拝見したのですがあれは…」
とカヌアが例の話題を持ちかけた。
(キタ…予想通りだな)
そう思うウィルは構えに入った。
「先日私に剣舞をさせてくれるとおっしゃいましたよね?それって今回の遠征先のアルガダ国で披露するためのものですよね?」
(違うか?違うのか?来い!来い!)
カヌアはそう言って念じた。
「フゥ…カヌアの言いたいことはわかっている。その件で俺も話がある」
と言ってレイルは厚めの冊子をカヌアに渡した。
「ん?これは何ですか?」
そう言うカヌアの質問にウィルは応えた。
「これが条件だ。もちろん本当は…」
と言いかけた瞬間、ウィルの身体に衝撃が走った。
カヌアが感極まって、ウィルに抱きついたのだ。
ウィルは驚いたのと同時に顔が真っ赤になって、カヌアの背に手を回すのが遅くなってしまった。
そしてすぐにカヌアは我に返ると、喜びを言葉として発していた。
「あの!あの!ウィル様!!本当に本当に嬉しいですっ!嬉しくてたまりませんっ!」
(あ、まだ同行していいとは言ってな…まぁいいか…)
とウィルはそう思いながらも許していた。
その冊子の表紙にはしっかりと‘同行するにあたって‘と書いてあるのだから。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




