episode40〜良いも悪いも〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
サラを奪還した帰り道、彼女はひとときもその腕を離さなかった。
そうカヌアの腕から。
(お兄様…ごめんなさい。きっとそのうち…)
レイルは顔には出さなかったが、フラフィーがめちゃくちゃ羨ましそうにこちらを見ている…というかカヌアの肩に乗って来ている。
カヌアはサラの短くなった髪を、寂しい眼差しで見た。
するとサラはその視線の意図に気が付き、微笑みながら言った。
「あ、これ?ふふっ意外と似合うでしょ?いつかのカヌアと同じだね。そういえば…よく私の家がわかったね!お父さんにも会ったんでしょ?」
とサラは純粋に質問してきた。
「あぁそれは…」
とカヌアはチラッと兄を見た。
しかし、レイルはふるふると小さく首を横に振った。
「うん、色んな人に聞き回ったんだよ〜お父さん、すごく寂しそうだった…だから早く帰って安心させてあげよう?ねっお兄様?」
とカヌアは察して言った。
「あぁ、とても喜ぶだろう」
とクールに言ってはいたが、フラフィーを見る限りレイルも同じくらい喜んでいた。
「そうだね。本当にあのまま、あの家で過ごすと覚悟してたから、まさか二日で済んだなんて……私ね今日の事一生忘れない…二人に何かお礼を…」
と照れくさそうに言うサラは、少しずついつもの彼女に戻っていた。
「…本当に何もされていないのか?」
と心配性のレイルは念入りに聞いた。
「はい。本当に何もされていません。昨夜はだん…あの男は仕事でいなく、今朝方帰って来たので」
というサラの言葉を聞いて、レイルはホッとした表情を浮かべた。
カヌアも安心したが、兄のその顔を見てすぐにニヤつきに変わった。
サラは家に着くと、外で作業をしていた父親に駆け寄った。
二人は静かに、そして深く抱き合って喜んだ。
その目には涙が浮かんでいた。
ふとカヌアはまた兄を見た。
微笑むように安心した顔で、レイルは笑っていた。
その視線に気が付いたレイルは、不審な顔をしてカヌアに言った。
「お前…さっきからチラチラニヤニヤと気色悪いぞ?」
「フフフフフフ…良かったですね、お兄様っ」
とカヌアは少し茶化すように言った。
大きな手がカヌアの頭をワシワシと撫でた。
まるでお礼を言っているように。
(ち、力強い…)
カヌアは苦笑いをした。
既に日は落ち始めていた。
サラを見送った後、兄妹はリヴール家の屋敷にではなく、王宮へと向かっていた。
レイルは留守にしてしまった剣術場へと。
カヌアはもう夕方なので、一日の報告をしにウィルのいる公務室へと向かっていた。
部屋に着くと軽くノックをした。
すると、いつもながら美しい側近カブラが出てきた。
しかし今日はすんなり入れてくれなかった。
「こんばんわ、カヌア様。申し訳ないのですが、ウィル様は只今…」
と言いかけたその時、これまた髪の美しい巻き髪の女性が出てきた。
「いいわ、もう話は済みました。また来ます」
と言って、部屋から出て行ってしまった。
(うぅわっ!めっちゃ綺麗!え?誰?誰?)
彼女のフラフィーはよく見えはしなかったが、怒ったような困ったような顔をしていた。
すると中からウィルの声が聞こえた。
「カブラ、何だ?」
カブラが部屋の扉を開けて、カヌアを中に入れてくれた。
「カヌアッ!すまなかった。待たせたか?」
と気にかけるようにウィルは言う。
「ごきげんようウィル様。あ、いえ、今ちょうど来たところです。それより今の方は…?」
とカヌアが聞くと、少し難しい顔をして言った。
「あぁ、特に大した用ではない。それより今日は一日どうだった?」
とすぐに和かな顔に戻った。
(なんか意味ありげだな…まぁいいか)
と少しモヤっとしながら、先程のサラの出来事を話した。
「そうか…そんなことが…レイルが一緒だったなら良かったが、あまり無茶はするなよ…それにしてもベンゼルマンか…いい噂は聞かないな。確か階級は子爵……」
(ん?ベンゼルマン?トラストル家と確か…調べる価値はありそうだな)
と言いかけると、途中でウィルは考えに耽った。
すると本日の要件を伝えたカヌアは、これ以上いたら色々と迷惑だと思い、挨拶をした。
「それでは、ウィル様。わたくしはこれにて失礼致します」
と礼をして踵を返した。
考えから抜け出したウィルは、ハッとして声をかけた。
「あっカヌア…」
と手を少し伸ばしたが、既にカヌアのうっすらと残った影が見えただけだった。
そしてすぐに消えた。
(なんとも…まぁ…)
カブラは気まずそうに立っている。
主人の悲しそうな顔が見えていたからだ。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




