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episode34〜静かな怒り〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。


王宮出入り口の付近で、都の民達が責め立てている声が聞こえる。


それを対応していたのが、カヌアとロゥサであった。


(このままじゃ収拾がつかなくて、もっと大ごとになってしまう…どうしよう)


すると王宮の方から何頭か馬に乗った人達が来るのが見えた。 


それは従者達を引き連れた、ウィルであった。


ウィルを先頭にすぐ後ろにカブラもいる。


恐らく、従者からすぐに事の騒ぎを聞きつけたのだろう。


すると、ウィルが馬に乗ったままカヌア達の前まで来て止まった。


「誰も大事ないか?状況を話してくれ」


とウィルが言うと、泣きそうな顔をすぐに作り変えカヌアは口を開いた。


「…はい。誰一人負傷した者はいないようです。先程馬術の練習中に少し…問題がありまして、馬が脱走しました。しかし…運良く、その、寸前のところで止められたので、事なきを得ました…」


とカヌアが皆の前では言いにくそうに言葉を濁したので、何かに勘づいたウィルは、了解したと言うように頷いた。


「皆の衆。騒ぎを起こしてしまいすまなかったな。誰も怪我することなく無事だった事は何よりである。もし他に怪我など体調が優れない者がいたら使いの者に申し出てくれ。このような事態を二度と起こさないよう約束しよう。今回の件、しかと受け止め対策をする」


と、ウィルはその場を収めてくれた。


ウィルは少しカヌアの方をチラッと見ると、心配そうな顔をしていたがそのまま王宮の方へ戻ってしまった。


(後でちゃんと説明しよう)


カヌアはそう思い、その場にいた民達の安否は王宮の使いの人に任せることにした。


カヌアは先程の騒動の発端である馬術場へと戻ろうと、王宮への道に入ろうとした。


すると、何人かが叫びながら走ってやってくるのが見える。


「おいっ!待て!!逃げるのか!!」


こちらに向かってくる連中の先頭にいたのが、先程ラクレに剣を向けていた男だった。


剣をむき出しに持ったまま走ってくる。


カヌアは門から出ようとするその男を待ち構えた。


(あいつか…絶対に許さない)


カヌアの怒りが静かに込み上げてきた。


「…そんなに剣を振りたいなら私が相手をしよう。どうだ?やるか?」


そう言うとカヌアの眼つきが変わった。


男のフラフィーが嘲笑うような顔をしている。

まるで小娘がと言っているようだ。


「はんっ。ふざけんなっ!お前ごときが!こっちは馬に落とされたばっかで機嫌が悪いんだ!どけっ!」


(あぁ…もう…なんだろ…)


カヌアは怒りのあまり、鋭い眼を男から離さない。


(あんな酷いことしといて…お前ノ…)


男はそのまま突っ走って、カヌアの元に一直線に来ようとしている。


「おマえノコト…ユルサナイ」


カヌアがそう言った瞬間、眼の色が変わった。

そう、左眼だけ緑色に。


そして……カヌアが斜め下から腕を振って剣を突き出した。


その瞬間、スッという感覚と共に男は思った。


(あ…れ?首が飛ん…)


そう思わせるほどの威圧感があった。


ドサっという鈍い音と共に、男は腰を抜かして動けなくなっていた。


カヌアはその鈍い音で我に返る。


何が起きたのかわからなかった。


ふと左腰を誰かが抑えてる感覚にがあるのに気が付いた。


そいつは深い青緑色の帽子を被っていた。


(え……?)


先程のラクレを止めてくれた男だ。


そう、そこにいたのは花模様のアザの男であった。


(いつの間に…)


剣は腰の鞘に収まったままであった。


剣を振り上げた時には、実際にカヌアは剣を持ってはいなかったのだ。


男は一命を取り留めた。


すると、アザの男は口を開いた。


「まだ…早い…その眼をするには…まだ」


「え…?眼…?」


すると、騒ぎに気が付いた王宮の使いの者達が駆け寄ってきて、腰を抜かしている男を拘束した。


しかしその男は既に目の焦点が合っていなく、無気力にただ動けなくなっていた。


カヌアが呆然とその方を見ていたが、ふと左に向き直すと既に花模様のアザの男はいなくなっていた。


(何……………?ん?え!?何!?何なの!?え?私を…止め…た…?あいつを殺ると思ってた…から?)


カヌアは訳がわからないまま、小さく震える手を見ながら立ち尽くしていた。


そして、思い出す。


(そうだ!ウィル様のとこに行かなくちゃ!)


カヌアは急いで王宮へと戻ることにした。


そして今、黒い毛並みの背に乗って早足で王宮へと向かっている。


ウィルの元へと。


レグはもうカヌアの事を嫌がったりはしない。

カヌアはこれが嬉しいはずなのに、心のざわめきが拭えなかった。


(私……あの男を殺ろうとした…?もしあの時あいつが止めなかったら、本当に…)


先程の事が頭から離れず、カヌアは不安でいっぱいだった。


何かを求めながら、王宮へと急いだ。


王宮に着くと、レグから降りたカヌアは早足でウィルのいる公務室に向かった。


しかし、自室に戻ったということで更に足を早める。


(何だろ…なんか…胸が…ざわざわする…何か足りない…怖い…)


胸の辺りをギュッと掴むと、段々と自分の息が上がるのがわかった。


ウィルの自室の前に着くと、カヌアは心を落ち着かせるために一度深呼吸をした。


部屋の扉の枠部分が鏡張りになっているのに気づき、鼻が付きそうなぐらい近づいた。


(眼?眼?何が?その眼って何よ?いつもと変わらない茶色の瞳…まだって何?………やだ。本当になんなのよ…)


そう思うと次第にまた心がざわつき始めた。


しかし、息を整えたいが不安な気持ちがそうさせてくれない。


するとまだノックをしていないのにも関わらず、目の前の扉が開いた。


中から出てきたのはウィルの側近カブラであった。


カブラがカヌアの方を見ると、少し驚いたような顔をした。フラフィーが心配そうな目をしている。


「ウィル様……カヌア様が…」


カブラが部屋の中に向かって呼ぶ。


その声を聞いて、ウィルが部屋の外まで出てきた。


すると、ハッとした顔でカヌアを見る。


「何が……あった?」


ウィル達が見たその不安そうな顔は、涙を流していた。


その事に二人はとても驚いて心配していたのだ。


カヌアはウィルを見た瞬間、さらに涙が溢れる。


言葉にならないくらいに。

止められない。

急に泣き出すなんて無礼者だとわかっている。

しかし止められないのだ。

不安が涙として流れる。


そして、その涙が流れたことによって少しずつ安心に変わっていくのがわかった。


「カブラ…少し席を外してくれないか」


とウィルが言うと、カブラは静かに頷いた。


そして、カヌアを自室のソファにそっと座らせてくれた。


その泣く姿を見て、ウィルは彼女が落ち着くまで静かに側に居てくれた。


どのくらい経っただろうか…


ウィルが渡してくれていたハンカチで涙を拭い、顔を少し上げる。


「大丈夫か?落ち着いたらでいい。何があったのか話してくれないか?」


そう優しく声をかけてくれて安心したのか、カヌアは静かに深呼吸をした。


「はい…申し訳ございません。ウィル様の御前でこんな姿を見せてしまい…」


「それは問題ない。それよりこんな…」


とウィルに言われ、カヌアは力なく笑って見せた。


「すみません。順を追って話しますね」


と少し落ち着きを取り戻したカヌアは、馬術場からの出来事で練習馬が脱走し、それを止めたのが花のアザ模様の男だったこと、練習馬が怪我をしたことまで話した。


「そうか…それは大変だったな…あの状況下で詳しく聞けなくてすまなかった。民の前で言えない事だろうと察したため、こちらで聞こうと思い先に王宮に戻ったのだ。それにしても…」


とウィルは、他に何かあるのではと勘づくようにカヌアをそっと見た。


「はい…それだけではないのです。まだ続きがあって…私は練習馬の…ラクレを傷つけた事が許せなくて、あの男の元へ向かおうとしました。すると、何人かに追われたその男が目の前にやってきたので…その男を見た瞬間、怒りが止められなくなりました」


カヌアが胸が詰まるような思いで話しているのを、ウィルは静かに聞いてくれている。


「それでその男が逃げるのを制止しようと思い、剣の相手をしようと言いました。そして左腰の剣に手をかけました。しかし…気づいたら…目の前に…男が驚いた顔で腰を抜かしててこちらを見ていた。でも…確かに…私はあの時…男の首を…」


と声を震わせながら最後まで言おうとしたカヌアを、ウィルは力強く、そして優しく抱き寄せた。


(震えてる…こんなに…)


そうウィルが思う中、カヌアは安心して目を閉じる。


もう涙は出ていない。


(私、安心したくてここに来たのかな?お母様お父様でもなく、お兄様達でもなく、ここに…)


カヌアはその優しい温もりに救われた気がした。


ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

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