episode29〜昼食にて〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
ここはグランシャリオ王都。
それはそれは、とても美しい街並みである。
そんな情緒溢れる都を、二人の男女と一人の従者が歩く。
(グランシャリオ。確か前世でそう言う名前のフレンチレストランがあったなぁ。あぁ死ぬ前に一度行ってみたかった。お腹空いた…)
するとその様子を見ていたカブラが、微かな音を察知したのか、少し大きめの声でウィルに話しかけた。
「ウィル様、そろそろ昼食のお時間(グルルルロロロロォ〜)ですので、せっかく都に来たことですし(ギュルル)何か食べて行かれます?」
聞こえてるバック音は、カヌアの腹の虫である。
カブラが音を掻き消して?くれたのだ。
ウィルは、ん?と言う顔をしたが、特に気にすることもなく応えた。
「あぁ、そうだなどこか店に入るか」
カヌアは真っ赤になって唇を噛んでいた。
それにしてもカブラの察知能力がすごい。
そして大通りから少し脇道に入ると、入口がとても広いレンガ造りの店があった。
その趣のある店に、一行は入ることにした。
中に入ると人気店なのか、中々の人の入りであった。
左奥にちょうど片付けをし終わったテーブルがあり、カヌア達はそこに案内された。
店を見渡すと、上品な造りの照明が至る所に天井に取り付けられている。
壁側の上の方には、その造りと揃えたであろうランプ型の照明がかかっていた。
幸せそうなフラフィーがたくさん浮遊してる。
メインや前菜などのある程度のものを、カブラが注文してくれた。
何か食べたい物はあるか、苦手な物は?などとカヌアは聞かれたが、特に何でも食べれるのでお任せした。
ウィルはカヌアの好物が聞けると期待してたみたいだが、叶うことはなかった。
すると、少し離れた席でフラフィーが騒つき始めた。
(ん?なんだ?)
少し体格のある男が、その後ろのテーブルに座っている若い夫婦に絡んでいるようだ。
「邪魔だなーこんなでかいものに乗って来るなよ!通路を通れねえじゃねぇか!」
(感じ悪いなあの男…店内中に聞こえてますけど)
とカヌアはのイライラゲージが少し上がり始めた。
そこには車椅子に乗った青年がいた。
隣には小柄な女性が少し困った顔をして座っている。
その横のフラフィーがとても怯えているのが分かる。
その女性は震える声で言った。
「か、帰りましょうかあなた」
車椅子の青年が悲しい笑みを浮かべて言った。
「そうしようかロディー。折角の結婚記念日なのに嫌な思いさせてごめんな?」
彼はそう言うと奥さんらしき人が応えた。
「いいのよあなた。お料理は一通り食べれたし、お家でデザートでも作って頂きましょう」
(結婚記念日、レストランで食事、嫌な客…)
カヌアは目を瞑って頭の中で唱え始めた。
すると、絡み足りないのかチッと夫婦の後ろのテーブルから舌打ちが聞こえてくる。
「貧乏人がこんなとこ来やがって、なぁ」
と周りを見渡しながら言う。
カヌアはまだ目を瞑っている。
(折角の結婚記念日、素敵なレストランで食事、傲慢な嫌な客…)
イライラゲージが…
「態度がなってねーんだよ。周りの迷惑も考えろ」
と傲慢男は貧乏人ゆすりしながら、更にでかい声で言う。
周りからも不穏な空気が流れる。
(ブチッ)
キ、キレたっ!
皆さーん!避難してくださーい!
過去最大級の大噴火が起きますよー!
そして男がまだ何か言っている中、静かに歩み寄る足音がする。
「飯が不味く…」
その時男の頭が濡れた。
カヌアが頭から水をぶっかけたのだ。
顔を伏せながら言うカヌア。
「…ぇだよ」
「あん?何しやがる!?」
「お前だよ…お前が一番迷惑な、ん、だ、よ!!」
とその指を強く、男に突き出しながら言った。
周りがシーンと静まり返る。
ウィル達も唖然としている。
しかしカヌアはもう止められなかった。
「そもそもおめぇが、不快な言葉を発してなければこんな飯が不味くなるような事態にはならなかったんだろーが!あ?それともお客様、誰が?不快に?してるのか?と言うことがおわかりございませんか??
お、ま、え、だ、よ!!そうやって人を脅迫するしか脳のねぇーやつは泥だんごでも喰ってろ!
あの人達に謝れ!謝れよ!!」
「てんめっ!」
男がカヌアに拳を振り上げようとした時、瞬時にカブラが拳を遮った。
しかしカヌアのその眼は開けたまま、男から逸らしてはいなかった。
ここにいる皆様が、あなたのせいで折角のお食事が不味くなっております。どうかお帰りを」
とカブラが静かに怒りを放つ。
「くそ、ぶざけんな!なんで俺がっ…」
すると男は何やら見ると怯えて代金を叩き置き、走って出て行ってしまった。
店の中は静まり返ったままだ。
「…………」
(や、や、やや、ややややややややややっちまったーーー!これはもう言い逃れできないよ!大勢の人の前で、しかもウィル様の前で。やらかした…ついに追放だ。今日までの私…令嬢ライフ…さようなら)
すると、店中からわぁーーっと歓声が沸き起こった。
フラフィー達も踊ったり、飛び跳ねたりして喜んでいた。
「ねぇちゃんやったな!かっこよかったぞ!」
「胸がスッとしたわ!ありがとう!」
そう、店の客達が称賛の声を上げた。
(え…?)
絡まれた夫婦も、笑顔でお礼を言っている。
「ありがとうございます!とても胸が晴れました。なんとお礼を言っていいのか」
「いえ、私も、その…大きな声で騒いでしまってすいませんでした」
とカヌアが言う。
すると、ふるふると首を横に振りながら車椅子の青年は言った。
「私は見ての通り脚が不自由でして、普段は中々外食が出来ないのです。でも今日は私たちの結婚記念日ということもあって、慣れていないのにこんな素敵なレストランに来てしまい…」
「記念日おめでとうございます。でもそれは違います。誰であろうが、美味しく頂く権利はあります。どうか、最後のデザートまで美味しく頂いて下さい」
とカヌアは微笑んで言った。
夫婦は深々と頭を下げて、席へ戻った。
周りのお客さん達からは、夫婦に向けてのお祝いの言葉が飛び交っていた。
カヌアは席に戻ろうと、その重い脚をどうにか進ませていた。
(あ〜ん…ウィル様の方見れない、戻れない、喋れない。どうしよう)
すると、ウィルが優しい笑みを浮かべて水で濡れたカヌアの手を拭いてくれた。
「あ、ありがとうございます。すいません、私…つい頭に血が上ってあんなことを…」
とカヌアはお礼を言うと、ウィルは優しく応えた。
「確かに少し驚いたが、勇敢だった。あれはそうそうできるものではない。ただいつも無茶をするその性格は、感心できないな。いつも言っているが、俺はカヌアに何かあったらと…」
(いつも?言ってたっけ?それにしてもあまり驚いた感じしてないな?…いやぁでも流石に引いたでしょ、あれは…ん?カブラ様?)
と顔を上げた。
そうとは知らず、ウィルは頬を染めていた。
「…でもそんなカヌアが…俺は好きだ…」
とノミほどのちっさな声で言った。
(言ったぞ!言った!自然な流れで!さすがにカヌアも…)
全然届いてなかった。
というか聞こえてなかった。
しかも既にカブラが、こちらへとカヌアを呼び寄せていた。
テーブルの椅子を引いて、カヌアを座らせている。
(カブラめ…わざとか?)
一波乱あった後には美味しいご飯を、という事で注文してた料理を美味しく平らげた。
そろそろ帰ろうと店を出た時、出待ちをしていたのか先ほどの夫婦が近づいてきた。
「あの!先ほどは本当にありがとうございました。高貴なお方だとお見受けします。申し遅れましたが私はファイスと言うものです。こちらは妻のロディーで私ども夫婦は、フェクダの外れで鍛冶屋を営んでおります。高貴なお方には物足りないかもしれませんが、剣などの武器の仕立てや整備等、何かございましたらいつでもお力になりますので、近くをお通りの際は是非お立ち寄りください」
「はい!ありがとうございます!その時は是非立ち寄らせていただきます!では良い一日を過ごして下さいね!」
と前のめりに出てきたのはカヌアだった。
そう言うと、夫婦を笑顔で見送った。
(後ろの御二方に言ったはずなのに、不思議なお嬢様だな)
と思いながら、仲良く夫婦は都を出た。
カヌア達が都の街並みを見ながら帰っていると、カブラが路地の隙間から不穏な影を見つけた。
「ん?あれは…」
そこには商人らしき人物が何やら、大きな荷物を渡していた。
フードを被っている全身黒ずくめの人の姿もあった。
するとカブラは上を見て目配せして何やら目で合図した。
控えていたワイムがその影を追って行った。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




