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episode22〜しんゆう〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。




午後になると今度は剣術場に向かった。


稽古のハシゴだ。


(本当は一日で全部廻りたかったんだけど、無理そうだな)


とカヌアは思いながら中に入ると、剣を振る熱気と殺気立つフラフィー達で溢れかえっていた。


例の大荷物を端に置き、剣術の指南を探そうと振り返った。


すると誰かが剣を差し出してきた。


「やはり来たか。お前はこれを使え」


そこにはまた知った顔がいた。


「えっ!?レイルお兄様!?もしかして…」


「あぁ。ここの指南役を請け負った」


彼はリヴール家三男のレイルである。


(殿下の命令だからな。こいつの好奇心旺盛なとこはいいが、たまに頭を悩まされる…それにこいつが剣を振れるとは到底思えない。出来るだけこの軽い剣で負担を減らし…そしてできるだけ弱そうな奴を相手にさせて…いや、一層の事素振りのみにさせるか…こいつが怪我をしないか心配過ぎる)


悶々と考えるこの男、口数は少ないがこう見えて過度なシスコンであった。


妹が心配でたまらないのだ。

横にいるフラフィーも頭を抱えている。


(う〜ん、こうも身内が続くとは…やりにくいな、でもちょっと安心する)


とカヌアは複雑な気持ちだったが少し嬉しかった。


だが、そんな兄の心配をよそに、カヌアは腰につけていた剣を見せた。


「お兄様、お気遣いありがとうございます。しかし、普段使い慣れているものがございますので、こちらで特訓いたしますわ」


兄の前でつい令嬢モードに入ってしまったが、お礼を言うとすぐに切り替えた。


「ご指導のほどよろしくお願いします、レイル指南」


とキリッと頭を下げた。


レイルは仕方ないなと言うように、ため息を吐く。


「分かった。だがこれだけは覚えとけ。絶っ対に無茶な事だけはするなよ?危険な事は避けろ。あと出来るだけ自分と見合ったような奴を…それにだな…」


「あっレイル指南!あちらで指導を待っている方がおられますよ?あっあそこにも!大人気ですね!今仰っていたことは肝に銘じておきますので、私のことはどうぞご心配なく、ねっ」


と笑顔で話を逸らす手段に出た。


(兄様は心配性だからなぁ…ここで止めないと日が暮れちまう) 


(それにしてもカヌアのやつ、使い慣れた剣ってどういうことだ?)


と思いながらレイルは渋々カヌアから離れていった。


(そういえば、さっきのとこよりあまり周りからの視線を感じないな。あ、もしかして馴染めてる?私ってばものにするのが早……あれ?女の子?女子おるやんっ!)


そう、皆の視線の先は、カヌアなんかではなく、そちらの方に向いていた。


カヌアよりも背が高いであろうか?

スラッと縦に伸びたそのスタイルの良さは、とても際立っていた。


高く束ねたその髪は、綺麗な薄い水色をしていた。


(美しい人だな。ちょっと声かけちゃおうか?)


カヌアはその女性に駆け寄ろうとしたが、なんだか目の前をウロウロするやつに遮られて進めない。


(あらやだ、ナンパ?)


決してそうではない。

決して。


こちらを見てニヤニヤしている。

通りすがりたいのに何度も遮られて行けない。


(あん?なんやねんこいつ)


カヌアは少しメンチを切り始めていた。


実はこの男、剣術にはあまり自信がない。

だが、プライドは山の如く高かった。


街の女性にいっちょやってやるか的な大ぼらを吹いたため、後には引けなくなっていたのだ。


言わばビッグマウス男である。


更にこいつは最低な奴であった。


この場に来て自身の威厳を見せつけるために、何故か弱そうな相手を物色しては、倒そうとしていた。


嫌いだ。


「おいお前、なんだぁ?男のくせにそんな細っこい腕で剣なんか振れるのか?まぁなんだ?俺が?手加減して?相手してやってもいいが?」


腹立つ言い方だ。

更にはカヌアを男だと思い込んでいる。


してやったりなのか悲しいのか、カヌアはその事に気が付いていない。


そしてカヌアの顔には、血管が浮き始めてきた。


中々いないぞ?

怒りのあまり顔に血管浮き出す女子。


「では、一つ手合わせ願いますか?」


と丁寧に喧嘩を受けて立った。


(そうよ私、こんな奴…懲らしめてやりなさい)


印籠を持ったじいさん以外中々言わないセリフであるが、こいつに関してはその通りである。


互いに礼をすると、ビッグマウス男がまた何かを言い始めた。


「あーなんだ?まぁ逆に?教えてやったりしても…」


その瞬間、キィーンという音と共に男の剣が飛んだ。


ほざきながらクルクルといじくる男の剣を、一瞬にして捕らえたのだ。


そして場外の方で悲鳴が聞こえた気がしたが、周りは気にするそぶりもなかった。


全員がその状況に圧倒されていたからだ。


「やる気がないなら帰れ」


カヌアはそう言い、立ち去ろうとしたが五秒後には自己嫌悪に陥っていた。


しかし、ハラハラ、モヤモヤという気持ちで見てた周りからは称賛のフラフィーが飛んでいた。


そして先程の次男同様、三男レイルの心配は打ち砕かれていた。


(使い慣れた剣……そういうことか。でも一体どこで…?)


すると自己嫌悪中のカヌアの側に、ある人物が影を作った。


それは良い香りと共にやって来た。

上を見上げるとそれはもう美しい髪の毛の持ち主がいた。


「あの、先程はお見事でした」


そう言って彼女は手を差し伸べてくれた。


本人は無表情だが、横にいるフラフィーは優しい顔をしている。


先程カヌアがナンパしようとしていた娘だった。


「あ、見ておられたのですか?ちょっと頭に血が上ってしまったところもあって…大人気なかったですよね、えへへ」


すると、彼女は首を横に振って真剣に応えた。


「いえ、あれは誰が見ても理不尽でした。だからあなた…は間違ってないと思います」


(あ、名前か)


「そう言って頂けるととても心が晴れます。あ、わたくしカヌアーリ・ヴァ・リヴールと申します。カヌアと皆から呼ばれていますので、もしよかっ…」


ふと彼女を見ると、顔を少し横に逸らして赤くなっていた。


「カ、カヌア…」


(おぅ、いきなり呼び捨てー。まぁ全然良いんだけども。でも何故顔が赤くなっている?)


すると彼女はまたスッと無表情に戻って、今度は自身の名を名乗った。


「私の名は、サラ・ブーディ・リーヴナンド。皆からは…その…サ」


「サラ!サラね!」


とカヌアは笑顔で名前を呼んだ。


サラは、普段はキリ長で綺麗な瞳をまん丸くして、こう思っていた。


(あぁ、これが友達…いやもう親友ね)


この娘、少し早とちりをしやすい性格であった。


でもそれもあながち間違っていない。


そう遠くない未来、この二人の距離が縮まり、心友になるであろうから。


ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

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