episode21〜腕試し〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
武術稽古、一日目。
まず、カヌアは武術場へと向かった。
最近のカヌアは、人混みにも慣れて来たので余裕で入れる。
むしろ、フラフィーを避けるため、瞬発力を手に入れていた。
中へ入ると、フラフィー達はまぁまぁ殺気立っていた。
武に自信がある者、家族から無理矢理連れてこられた者、強くなりたくて勇気を出して来た者、ほとんどが体格の良い屈強な男達であった。
しかし、その中にも線の細い男も混ざっていたりする。
それぞれが思い思いに、師が出てくるのを待っていた。
そんな中、意気揚々と入って来たカヌアを、物珍しそうに周りが見てきた。
(え? 何だろ? 女の子だから? あ、もしかしてお嬢様感出ちゃってるかな? 染み付いちゃってるからなぁーアハハハ。気をつけないとね!)
違う。
そうではない。
そこは心配しなくとも大丈夫である。
そんな事よりも気にならずにはいられない、その身体よりも大きな荷物が問題だった。
しかも、鼻歌混じりで堂々と入って来たとなれば、目立つに決まっている。
すると、なぜか皆が目を逸らし始めた。
あまり関わらないようにしよう… となぜか場の空気が一つになっていた。
(とりあえず、荷物を端の方に置いてっと… )
カヌアが準備運動を念入りにしていると、入り口から大柄な男… ではなく小柄な老婦が入って来た。
(ん? 初日から先生は休みなのかな? それにしても可愛いおばぁちゃ… )
「おいっ! てめぇら! 心してかかれっ!」
全然可愛くなかった…
巻き舌で喝を飛ばすそのババ… 老婦は一瞬にして、その場の空気を凍りつかせた。
「ここでは手ほどきはしない。常に個人個人で闘ってもらう。死ぬまでな!!」
もちろん嘘である。
老婆ジョークだ。
ただここにいる誰しもに、それは通じてはいなかった。
「その中で、その都度私が矯正していく。そうだ! 一層の事殺し合… 」
するとすぐ側にいた男性が、笑顔でデスメタル過ぎるその言葉を遮った。
「皆様おはようございます。この方は今回の武術でご指導していただく、レア様です。お見知り置きを」
お見知り置きしなくとも、全員が一瞬にして脳に焼き付けられた。
しかし、その男性を見てカヌアは驚愕した。
(え!? フーリお兄様!?)
そう、彼はリヴール家次男のフーリであった。
この場におけるレア指南の補佐を請け負ったのだ。
(カヌア、本当にこんな所に来て大丈夫か? 到底続くとは思わないが。怪我をしないか心配過ぎる)
妹思いの兄である。
(お兄様が来るなんて知らんかった。私が出ることはもちろん知ってるよね? 心配で見に来てくれたのかな?)
すると、レア指南が仕掛けて来た。
「まぁ手始めに、そうだな、お前とそこのお前、やり合ってみろ」
促されるままに、指名された二人の男が出て来た。
そして二人は互いに礼をすると、組み手をし始めた。
勝負は五分五分といったところか。
「つまらん」
レア指南はそう言うと、何かを物色する様に顔を上げた。
「今度はやりたいやつを指名する。誰か… 」
そう言いかけたところに、咄嗟に細い腕が集団の中から伸びる。
カヌアだ。
ウズウズが止められないカヌアは、すぐさま手を挙げたのだ。
レア指南ともバッチリ目が合う。
しかし…
「あーそこのデカブツだな。あとは… 他にいないのか」
ガン無視された。
カヌアの四倍はあるのではないかという男が、手を挙げていたのだ。
奴のフラフィーも自信ありげだ。
そしてカヌアは、手を挙げ続けている。
「あー仕方ない… じゃあ、そこのお前だ。やれ」
仕方なくレア指南は、カヌアを指名した。
もちろん条件[1]の男性から女性への手合わせの誘いをしないというのは、満たされているため許可された。
(チッ、あの小僧にあまり危険なことはさせるなと、言われているんだが)
レア指南は困惑していた。
まさか自ら手を挙げるとは、思っていなかったからだ。
フーリが、不安な気持ちで見つめている。
周りが騒つく。
しかし、すぐ様大きなどよめきに変わる事となる。
お互いが礼をした瞬間、鈍い音と共に地面に大男が天を仰いでいた。
それはまるで、熊が仕留められていたかのようだった。
その熊さんも一体何が起こったのか、というような顔をしている。
その場にいる誰もが目を見張った。
カヌアは一人満足げな顔をしていたが、ふと周りを見て我に返った。
(あれ? なんか間違えた?)
フーリが驚きのあまり、声を漏らした。
「カヌア… お前… 」
(そうだった! 私、兄様達の前で武術は見せたことなかった… んだった)
少し青ざめるカヌア。
すると、意外な言葉が返って来た。
「すごいな! いつの間にこんな… 」
「あ、えと、クーロス叔父様に何年か指導して頂いて… そのやってるうちに、のめり込んでしまって、その… 」
カヌアが罰が悪そうにしていると、その様子を見ていたレアが口を開いた。
「クーロス? クーロス…… クーロスってあのカリストの森のか?」
(ん? 叔父様の知り合い?)
「はい。クーロス叔父様は母の弟にあたる方です。彼に指導をして頂きました。えと、お知り合いでございますか?」
「あぁ、そうか、なるほどな。どおりで」
レアはそう言うと、ニヤリと笑った。
「それよりお前、まぁまぁな腕なのはわかったが、いきなりこんなデカブツを相手にするなど無謀すぎるぞ。弱かったからいいものを」
(熊さんすごい言われようだな)
「はい、肝に銘じます!」
男らしく言ってみた。
「それと… あのでかい荷物次からは持ってくるな! 邪魔だ!」
「肝に… 銘じます… 」
顔を赤らめて言った。
「では各自、手合わせ開始っ!」
開始の合図とともに、カヌアは気合いを入れた。
(よしっ! レア指南の言うように、今度は同じような体格の… )
そう思い周りを見渡したが、またなぜか誰もが目を逸らし始めた。
あまり関わらないようにしよう… と、今度は違う意味で。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




