episode19〜頼み〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
あの狙われた事件から、二週間ほど経ったある日。
カヌアはというと…
「ハッ! フゥッ! リャッ… ! ハァハァハァ… 」
「どうしても左足が上がりにくいな」
師匠と武術に明け暮れていた。
例の矢を放ってきた男は、現在も王宮内の地下牢に監禁されている。
何を聞き出せたのかは、知らぬまま。
この国も安全じゃないとわかり、大切な人達を守れるようにと、その身体を鍛えていた。
そう、公爵令嬢が身体を鍛えているという、異様な光景である。
それに付き合ってくれるのは、彼しかいない…
カヌアの大好きな大好きなお師匠様である。
(あぁー強い! かっこ良すぎるっ! お母様の弟じゃなかったら、求婚してたかもしれない!)
危ない関係に、なり得るところである。
彼はカヌアの母アメリの弟であり、この森を管轄しているクーロスだ。
このカリストの森は、リヴール家から程遠くない北に位置しているため、いつもここで指導を施してもらっている。
「そういえばっ… フッ! 今度っ! からっ! ンッ!」
「何ですか!? ンァッ!」
「ハァハァハァ… 今度から、王宮内で武道の練習場が設けられるそうだぞ? 騎士団等の強化が目的みたいだが、それ以外に街の強化に備えて街の男達にも特訓させるようだ。俺も教官として呼ばれたが… 断った」
クーロスがそう言うと、カヌアが食いついた。
「え!? 男性のみですか?」
「女性もあるぞ。ダンスのみだがな」
カヌアは、何も聞こえなかった。
「武道の項目は何です?」
「確か、武術、馬術、剣術、弓術だったな」
「え!? 私、弓術をやりたいですっ!!」
「いや、だから、女性は… 」
「やりったいっですっ!!」
食い気味を通り越して、もうめり込んでいる。
(やりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいっ)
「しかし、俺にはどうにもできないぞ? 断った件だし、関係者でも何でもないからな。それに… 」
(あそこには、知る顔があるから行きにくいしな)
「そうだわ! フッ、フフフフフフフフ… 」
カヌアは、不気味な笑いを浮かべた。
(ウィル様に頼もう。フッ)
「お前… 」
(大丈夫か?)
クーロスは、不審がっていた。
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そして、そうとなればやる事は決まっている。
そう、午後には王宮の前にまで来ていた。
(あ、ヤバい。急に来ちゃったけど、さすがにアポなしでは入れないよね?)
「う〜ん… 」
考えながら右往左往していると、ささささーっと素早いフラフィーが、塀の上を動いてるのが見えた。
(ん?)
周りに誰もいない事を確認し、軽い身のこなしでジャンプして塀の向こう側を覗いた。
「あ!! あの時のっ… !!」
カヌアはその何かを見ると、驚いた勢いで下に落ち尻餅をついてしまった。
しかし、強靭な尻である。
痛みを堪え、すぐに立ち上がった。
(っっったぁ! っそれより! 奴だ! あの左耳の飾り! 猿だ!)
カヌアが見たのは、例の事件で素早い動きを放っていた猿であった。
口元が布で覆われてわかりにくいが、確かにあの時の猿である。
左耳の黄色い耳飾りをしていたので、すぐにわかった。
急に、目の前に知っている顔が見えたのだ。
(なぜわかったんだ?)
少し焦って猿は素早く王宮内に入り、主人の方へと向かって走っていた。
そう、猿と勝手に呼ばれているこの男、敵ではなくウィルに仕える従者の一人であった。
よって、王宮内にいるのは不自然ではない。
だが、カヌアはあの日のことが、脳裏に浮かんでいた。
(どうしよう! ウィル様に伝えないとっ! そうよ! 緊急事態! よし! 王宮へ!)
チャンスと思っているこの娘。
不純な気持ちも出てきている。
すると、騒ぎを聞きつけた護衛の者が集まってきた。
「おいっ! 何してるっ!」
「あ、えと、さっ猿がっ!」
説明が、安直になってしまった。
「は? 猿? お前…… 怪しいな」
(ちょっ! ここで捕まって、牢屋に入るとか勘弁してよ! もしくはこの人数なら… ヤれるか)
更に、ヤバい結果を招くような考えに至っていた。
すると、王宮の方から群衆の道を開けて、向かってくる人達がいた。
ウィルである。
後ろに、見覚えのある従者達も控えていた。
そして、ウィルは颯爽とカヌアの前まで来た。
(助かった… )
カブラが手を挙げ、口を開く。
「この者は! ウィルテンダー殿下の…… 」
(ん?)
「… ご盟友である!」
カブラは一瞬考えたが、護衛達をそう統括した。
(何で一瞬止まった? まぁいいか。とりあえず助かったー!)
しかし、ウィルはほぼ聞いていなかった。
カヌアだけを見ていたからだ。
真顔であるが、感動のあまり立ち止まって動けなくなっていたのである。
(カヌアだっ! 二週間ぶりのカヌア!)
カブラが一瞬だが、カヌアの方を少し鋭い視線で見た。
(ん? カブラ様、少し雰囲気変わった? フラフィーが何だか… )
しかし、カヌアは好機という顔をして言った。
「ごきげんようウィル様。騒ぎを起こしてしまって申し訳ありません」
「なぜこのようなことに? 大事はないか?」
「はい、この通りピンピンしております。身体だけは… 」
その言葉を聞いて、ふふっとウィルが笑う。
「身体だけは丈夫だもんな?」
(あ… 三度目か、このセリフ)
カヌアも笑みを溢した。
しかし、それを目の当たりにした従者や護衛達は驚いた。
((((笑った! あの殿下が!))))
そんな事はつゆ知らず、カヌアは思い出した。
「そうなんです! 実は先日に見… あぁ!!」
カブラの後ろに控えていた猿と、バッチリ目に入った。
「あっあいつです! 左耳の黄色い飾り! あの男… が… ん? あ、れ? なぜ皆様の中に?」
カヌアは、少し口調が乱れてしまっていた。
「ん? 知ってる顔か? あいつは護衛の者だが。どこかで会ってるのか?」
「えっ!? 従者!? ですか? それは失礼しました。この間襲撃された時、現場で見かけたものですからてっきり… 」
(なるほど合点がいった。だからあの時襲撃犯を追いかけていたのか… 猿、いや忍者か?)
カヌアは、その猿男を見て納得した。
「そうか。神経を使わせてしまったな」
ウィルはカヌアの心配の方が大事なので、気にも留めなかったが、カブラは違った。
(あいつが見えたのか? こいつはかなり素早いぞ? 身を隠すのに、特化しているはずなのだが… )
カヌアがふと、カブラの方を見た。
(ん? やはりカブラ様のフラフィーが、不審がってるように視える… ような。なんか変なこと言ったかな?)
「ウィル様、ここは目立ちますので… 」
カブラが、中に入るよう促した。
ウィルは自室に連れて行くと言い出し、案内させた。
(まさかのウィル様の部屋! 二回目よね。確かあの時はウィル様を池に落としてしまい、風邪を… )
苦い思い出が蘇った。
自室に来てくれた喜びで、ウィルはウキウキしていた。
ソファーに腰をおろすと質問した。
「それで? 王宮の前にいた理由は?」
(そうだ! 本題本題!)
「はい。急にお伺いして申し訳ありませんでした。実は… 今度王宮内で街の方々も対象にした、武道の練習場が設けられると小耳に挟みました… その、えー、つまり私も… 出たいなと」
無自覚に少しばかり、上目遣いになった。
言わずもがなウィルの顔は赤くなる。
すーぐ赤くなる。
(え? 俺に会いに来てくれたのか? やはり想いが届いていたのか?)
全然届いてはいなかった。
むしろ、武道の参加の口実に利用されつつある。
「そうか… 。情報が早いな。すまないが、武道の方に女性の参加資格は、今のところ設けないつもりだ」
(今のところ?)
「その代わり、ダンスのレッスンは男女参加可能だからそっちの方に… 」
(知ってるもん。でも私が出たいのは… )
一瞬また上目遣いになったが、すぐに下を向いてしまった。
「そ、そっちの方が、社交界でなくともカヌアと毎日… その… 」
ウィルは明後日の方向を見ながら、何だか言っている。
カヌアの方なんて、まだ俯いている。
(この二人は、どこ見ながら喋っているんでしょうか… しかもウィル様は、稽古場に毎日出るおつもりか? 公務もおありなのに… )
そう思い、カブラはウィルの耳元で小さく話す。
「お話し中失礼致します。お言葉ですが殿下、稽古場の方に毎日お出になられるのは難しいかと… 例の進行具合もあまり良くないですし、今回の場はそのための対策ではありますが… 」
「… わかってる。しかし… 」
すると、カブラが姿勢を直しカヌアに言った。
「そうそう、女性が参加できない件に関しては、まだ未定事項でございますカヌア様。このカブラディアが掛け合ってみましょう」
カブラスマイルを放った。
「え?」 「えっ!?」
二人の発した言葉は同じだったが、反応はまるで違った。
ウィルはこんなにも、か弱い身体では怪我をするに決まっていると思っている。
カヌアの本当の強さを知らないからだ。
一方のカヌアは、希望の眼差しでキラッキラしていた。
カブラの企みが、うまくいくかどうかはまた今後の話。
そう、カブラはこの武道の場に、カヌアを参加させて、その実力とウィルにとって、危険人物かどうかを見極めようとしていた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。




