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episode18〜跳躍〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。



「ロザリー、一緒に少し走ろうか?」


そうカヌアが言うと、天使の笑顔で頷いた。


トゥバンの丘をもう少し海沿いまで走ると、何やら珍しい物が見えてくる。


何かの絵が描かれた石が所々に落ちていた。


よく見ると、少し地面に埋め込まれてるように見える。


馬から降りると、カヌアは話し始めた。


「このお石さん達ね、私が生まれる前からあったんだって。小さい頃この上に乗って、石と石の間をジャンプして渡ったりしてたわ。その時は何も気には留めてなかったけど、今は何かの大切な意味があるんじゃないかって、お墓だったらどうしようか… なんて思い始めて。だから踏んじゃって、ごめんなさいって思ってるの。たまに見に来て手を合わせたりしてるんだ」


その話を聞いて、興味深そうにロザリーは頷いている。


「ここに描かれてる模様は、何でしょう? 波打ってますね。擦れててわかりにくい。… あ! でもこっちのは、もう少し綺麗に見える! 蛇? かな? 二匹いる?」


ロザリーが、少し石に触れて言う。


それに対し、カヌアが覗き見た。


(ほんとだ。今まであまり気にしてなかったけど、二匹の蛇みたいなのがいる。ん? あれ? どこかで… )


キューン、ギュル、ルルルルル


「え!? 何の音!? カヌア様!? 蛇さんが怒こりに来たんでしょうか!? 私が勝手に触ったりしたから?? 怖い!」


「大丈夫大丈夫! 踏みつけてた私が、今まで何ともなかったんだから。さっ、そろそろお昼を頂きに皆の元へ戻りましょ!」


そう言いながら、怯えるロザリーをなだめる。


カヌアは言えなかった。

とてもじゃないけど言えない。


その音が、自身の腹の鳴る音だったなんて…


(ロザリー、怖がらせてごめん)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


帰り道、馬の相乗りは行きとは違った。


ニーナは、ウィルと愛馬アルタイルに乗っていた。


道中、ニーナは兄にずばり聞いた。


「お兄様? 一体いつになったら、カヌア様とご婚約されるんですか!? 早く私のお姉様になって頂きたいのです! ちゃんとカヌア様の心を掴んでらっしゃいます? と言いますかカヌア様はまるで、お兄様の気持ちに気づかれてない様に見えるのですが?」


ニーナは、今日一日の行動を見て思ったらしい。


彼女は兄の前だと少しわがままで、そしてしっかりとした口調になる。

兄も妹の前では、少したじろぐ。


「… わかっている。俺も策を練ってはいるが、うまくいかない事もある」


うまく伝わらないことは本当に多い。


(その策って何かしら? お兄様不器用なとこあるから心配だわ)


「む、心配するな。意外と順調にいっている」


本心である。

ウィルは本気でそう思っていた。

ニーナは疑いと心配の目を向けた。


そんな中、ロザリーは従者カブラの胸の中で、幸せそうに眠っていた。


(ふふふ、本当に天使。疲れたんだね。今日は楽しんでくれたかな?)


カヌアがそう思っていると、突然左側の髪の毛が、鋭く前に靡いた。


(え?)


後ろから、何者かが矢を撃ち放ったのだ。

その矢がカヌアの左側をかすめた。


「何やつ!!!」


即座にカブラが大声で叫んだ。


その騒ぎで、ロザリーもビクッとし、目が覚めてしまった。


一同が矢が飛んできたであろう後方を、振り返り見た。


(いた! あいつか?!)


一番先に反応し追いかけたのは、カヌアだった。


いや、違った。

もう一人いたのだ。


誰かが、木の上から矢を放った奴を追いかけていた。


(誰!? 木から木へと飛んでる!! すごい! 猿かよ! ん? 耳に何か… ?)


キラリと猿のような男の耳元で、何かが光るのが見えた。


ウィル達は、カヌアの後を追っていた。


ウィルとカブラは、姫達と共に馬に乗っていたため、身軽に走らせる事ができなかった。


(クソッ! また無理しやがって! 頼むから怪我だけはするなよ!)


とにかくカヌアは速かった。


(猿人間はとりあえず後にして、あいつだ! 逃げられると思うな!)


その通りだった。


彼女はめちゃくちゃ馬術に特化している。


案の定、矢を放った奴に追いついて、回り込む。


「ハァハァ… 」


カヌアは息をのんだ。


すると、その身を馬から馬へと飛び移らせ、カヌアは軽々と奴の身体を捕らえ、更には地面にねじ伏せて矢を奪った。


「さぁさぁさぁさぁ! 吐きなさい!」


アクの強い牽制で尋問し始めた。


「お前は誰だ!? なぜ矢を放った!? この矢が身体に刺さるとどうなる? 痛いよな? 痛くないか? あぁ? 試してみるか? お前のその身体で」


カヌアは生まれて初めてこの身を狙われたため、我を忘れていた。

というか、本来の性格に戻っていた。


カヌアがその矢を奴の目の前に… そう文字通り ’目’ の前に突き出したので、男はビビって気絶してしまった。


(ハッ!!)


カヌアは偽りの我に返り、当たりをキョロキョロと見渡した。


(良かった、誰にも見られてない。マジ、ヤるとこだった)


すると、遅れてウィル達が来た。


「おい!! 大丈夫か!!」


ウィルがそう言うと、カヌアは猫を被った。


「はい… 間一髪でしたが… 」


(間一髪ヤるところでしたが… )


「私、あまりのことに驚いてしまい、足がこの子(馬)のお腹に当たっちゃって。それで、急に走り出したもので、追いかける形になってしまいました… 」


ご覧のとおり、真っ赤な嘘である。


武術にも馬術にも劣らず、この娘は演技力もやりよるのである。


カブラが奴を確認していた。


「ウィル様、気を失っております」


ふぅと息をつくウィル。


(落馬でもしたのか?)


「とにかく無事で良かった。またカヌアに何かあったら俺は… 」


悲しみの表情を浮かべている。


「心配をおかけしてすみません。すごく怖かったです」


か弱い乙女ぶった。


本当は血が上って、ヤるところだったとは口が裂けても言えない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その夜のこと。

矢を放った男は、王宮の独房に入れられていた。


奴はまだ気絶している。


その独房の前に、ある二つの影があった。


カブラと例の猿人間である。


猿がひざまづいて、カブラに何やら報告していた。


「何!? そんなはずなかろう? 誠なのか?」


カブラが思わず声を上げた。


昼間、矢を放った奴をねじ伏せ、気絶させたのはカヌアであると知らされたのだ。


そう、あの時猿人間にバッチリ見られていた。


(これは… どう報告したものか。何者か少し様子を見るしかないな)


この出来事を皮切りに、カブラの監視目的が変わった。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

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