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episode15〜悩める令嬢〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。



「ふぅっ… 」


カヌアは一息吐きながら、会場脇のソファに腰を下ろした。


周りの人々の華やかで楽しそうな姿、華麗なダンスなどを眺めていた。


そんな浮かれフラフィー達の中に、この会場に似ても似つかないフラフィーがフワフ… いや、ヨロヨロ〜と目の前に現れた。


(おっと? そんな悲しそうな顔して、一体どうしたんだい? 誰のフラ…… )


「ぅわっ!」


隣にいた! めちゃくちゃ隣にいたのだ!


(誰!? 多分この子だよね? ヨロフラちゃんの主)


その女性は少し俯いて、視線を下に向けたまま口を開いた。


「… ごきげんよう」


(ごきげんよう感全然ないけど?)


「ご、ごきけんよう」


すると、こちらに向き直って彼女は言った。


「カヌアーリ様とお見受けします。先程は、素晴らしいパフォーマンスをありがとうございました!」


(いやいやいやいやいやいやいやいや。偶然の産物ですよ? 催し物ではありませんよ?)


「あ、えと、先程のは私のミスで… 」


困惑しながら弁明しようとしたが、彼女の熱の方が上回った。


「わたくし、あのような胸踊る光景を見たのは初めてです! もう胸がキューって、もうキューって! 私にとっては夢物語ですわ!」


「そう… ですか?」


(あれ? てかパートナーは?)


辺りを見渡すカヌア。


しかし、それらしき人は見当たらなかった。


「いえいえ。本当に思ってるようなものではございませんのよ?」


ニコリと否定したが、響いてるのか響いてないのかわからないほど、今度は声が漬物石のように重く沈んでしまった。


「わたくしなんて、パートナーの方は両親がお呼びした即席の方ですの。本日お会いしたばっかで。形式上の事を済ました後は、すぐ姿が見えなくなりました。もう顔も覚えてません。この社交界が終われば、わたくしはまたあの生活に戻って… きっと顔も見たことないお方と、一緒にさせられるんでしょう。好きな人とは巡り会えない… そういう運命… 」


嘘は、言っていないようだ。


(うーん、浮き沈みがすごいな。それにしてもどんな生活を送ってるんだ? そんなに酷いのか? 何でこんな… )


「だからこそ、わたくしはこの日をとても楽しみにしてました。特別なドレスに身を包み、華やかな音楽、心も身体も躍るダンス。こんなわたくしが夢のようなひとときを一瞬でも味わえたのですから、こんな幸せな事ってないですよね?」


心なく笑う。


カヌアは、何だか悲しい気持ちになった。


それと同時に、沸々と怒りのような感情が込み上げてきた。


(それって… 幸せ者とは違う気がする。なんだろ? ご両親は一体… この娘を何だと思ってるのかしら?)


拳に力が入る。


「あ!! 申し遅れました。わたくし、トラストル家長女のアリー・ラ・トラストルと申します!」


これが本当の申し遅れだ。


カヌアは彼女の話ばかり聞き入ってしまっていたが、よくよく見ると自身と同じような純白のドレスを着ていた。


それに加え綺麗な赤毛。


「アリー様も本日はデビュタントでしたか。ドレス、とてもお似合いです。私達、同い年なんですね」


少しでも気分を明るく戻してもらいたいと思い、笑顔で接した。


すると彼女のパートナーらしき人物が、渋々迎えに来た。

家の者が迎えの馬車を寄越したようだ。


(この人きっと、金で雇われたんだろうな)


「カヌアーリ様、少しでしたがお話できてとても楽しかったです。もしまたお会いすることがありましたら、その時は… 」


そう、何か言いたげだったが、ふと顔に嘘の笑顔を灯して一礼した。


しかし、カヌアはその手を捕らえた。


「ありますよ! その時は! 必ずまたお会いしましょう! アリー様」


アリーの顔は一瞬にして明るくなり、嬉しそうなフラフィーと共にその場を後にした。


(無理に笑わせるような… そんな事させてるのは誰?)


心の中のモヤモヤが消えない。

イライラに変わりつつある。


(トラストル家か… ちょい調べてみるかな)


アリーを見送ってから、悶々と何かを考えていたカヌア。


「わっ!」


ウィルがすぐ隣に、腰を下ろしていたのだ。


(何でこうも皆、気配を消して側に来るんだろ?)


「ウィル様? お話はよくできました?」


彼は少しばかり、不機嫌そうに見つめてくる。


(置いていったの、怒っているのかな?)


「あ、何かお飲み物でも?」


カヌアがソファーから立ちあがろうとしたその時、腕を掴まれて引き戻された。


(え?)


「また置いていくのか?」


(やっぱ根に持っていたのか。てか手… )


ウィルは、カヌアの手を握ったまま離さない。


(なんか最近気安… いや、馴れ馴れし、いや… う〜ん、近すぎやしないか?)


言葉を抑えた。


すると、突如質問が始まった。


「カヌアーリ令嬢の本日のパートナーは?」

「ウィル様でございます』


「先程、共に素晴らしいダンスを踊ったのは?」

「ウィル様で、ございます」


「今宵一緒に過ごしたいのは?」

「ウィル様で… ございます?」


(え? 何これ?)


「よろしい」


握られたその手をそのままに、ウィルは満足そうに笑った。


カヌアは困惑しながら、今宵を楽しむ人々を再度眺めた。





ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

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