episode14〜デビュタント〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
会場いっぱいに、美しい音楽が流れる。
色とりどりのドレスを身に纏った女性達。
そして、数名の純白のドレス達。
国王陛下に拝謁するため、本日デビュタントを迎える女性達が、パートナーと共に列をなしていた。
その中に、カヌア達はいた。
そんな彼女の顔色が、少しばかり青くなり始めていたのだ。
(あぁ酔ってきた。自分の緊張に加え、彼女達の緊張が… フラフィーを介して… )
すると、隣にいたウィルが身体を支えてくれていた。
「大丈夫か? 顔色が… 」
(しまった! こんなとこでくたばってたまるもんか!)
勇者のようなセリフである。
カヌアは目をかっぴらいた。
「はい。ちょっと緊張が。でも大丈夫です」
「そうか。無理はするな」
彼がとても心配そうにしてくれているのがわかる。
だがここは絶対に成功させるという気持ちがある。
次々に女性が挨拶していく中、ついにカヌア達の順番が来た。
カヌアは慎重かつ華麗に階段をのぼり、国王陛下の前に出た。
一礼をしながら、口上を述べる。
「国王陛下、王妃様におかれましては、ご清祥のこととお喜び申し上げます。本日カヌアーリ・ヴァ・リヴールによるデビュタントの場を与えてくださり、誠にありがとうございます」
「カヌアーリ嬢、この度はお祝い申す。とても美しい。な、ウィル」
陛下はそう言うと、チラリと息子を見た。
カヌアの少し後ろに下がっていたウィルは、軽く会釈をした。
「今宵を存分に楽しむと良い」
「ありがたきお言葉」
一礼して下がろうとしたその時、少しグラついた。
いや、天井が見え…
「っと! 危なっ」
間一髪、ウィルが支えてくれたのだ。
一番不安であったことが起きた。
挨拶が終わり少しホッとしたのか、裾を踏んでしまったのだ。
油断した。
「本当に危ういな、お前は」
ウィルが微笑んだと思ったら、身体が宙に浮いた気が…
いや、浮いていた。
(おおおおぉお姫様抱っこ! これぞ本物!!)
カヌアを腕の中に抱きながながら、ウィルは階段を降りた。
そう、皆に見せつけるかのように。
周りの皆がキャーーっと、興奮しているのがわかる。
陛下もそれに然り。
階段を下りると、ウィルはカヌアをゆっくりとおろした。
「あ、ありがとうございます… 」
カヌアは、これ以上ない真っ赤な顔でお礼を言った。
(やらかしたのと恥ずかしいのとで、んもうっ!!)
顔を上げられない。
チラリとウィルを見るカヌア。
彼はなぜか、満足そうな笑みを浮かべていた。
(王子が何を考えてるのかわからない)
公の場でぶちかましたカヌアが、陛下への最後の挨拶だったので、これからダンスが始まろうとしていた。
動悸が収まらないまま位置につく。
(はぁ落ち着け落ち着け。もう失敗できないんだから)
パートナーことウィルと手を組む。
幸せそうに微笑むウィル。
カヌアの顔から目を離さない。
周りには、息を呑むような美しさに見えたであろう。
そのくらい息が合っていた。
練習の成果が出たのか、事なきを得ることができた。
一曲目はパートナーと踊る。
その後は他の方とも催促があれば、踊ることになるのだが…
(まぁさっきやっちまったしな、へっ)
カヌアは少しやさぐれていた。
すると仕事中にも関わらず、リヴール家のイケメン集団がカヌアの元へと真っ直ぐに近づいて来た。
(華ガ歩イテ来ルヨ。目ガ潰レルホド眩シイヨ)
すると、まず目の前に手を差し伸べて来たのが、四男ミルサであった。
「カヌアーリ、私と一曲踊っていただけませんか?」
「はい、ミルサ兄様」
そう言いながら、手を取る。
リヴール家の兄弟達は、他の誰とも踊らず順番に待っている。
他の女性達の視線がキツイ。
(いや、皆様、ほら身内ですよぉ。何で睨まれなきゃあかんのですか!)
そして、次々と麗しの兄達と踊っていく。
すると、今か今かと待ち侘びている人物が見えた。
父ラスファだ。
兄達と踊り終わると、とても嬉しそうにラスファが前に出て来た。
「カヌアーリ! 私と踊って頂けませんか?」
(満っ面っの笑み!)
「はい。喜んで、お父様」
慎ましく、微笑み返す。
こうして、家族全員と踊り終わったカヌア。
全員職務中にも関わらず、しっかりと踊れたのも陛下の計らいであることに気が付き、感動する。
(はぁ、疲れたな、もういいかな)
勝手に終了モードに突入しようと思ったその時、カブラがぬっと顔を出してきた。
「ほほぅ。殿下からの贈り物ですね。真珠の首飾り、とても似合っておりますカヌア様」
意味ありげに、声をかけて来た。
すると、カブラが手を差し伸べて言った。
「カヌアーリ様、私と一曲踊って頂けませんか?」
これで終わりじゃなかった。
(従者が主人のパートナーを誘っていいものなのか? まぁパーティーってそんなもんか)
「はい。喜んで」
手を取り、踊り始めると、ある方向からヒシヒシと鋭い視線を感じた。
(ほら、やっぱよく思ってないじゃん)
彼の主人であるウィルが、目を細めてこっちを見ていた。
カヌアの居心地の悪さをよそに、鼻歌混じりで踊るカブラはとても優雅だ。
(上手いな)
そうして、踊り終わるとカブラがお礼を言った。
「とても楽しいひとときをありがとうございました。そしてこの度は誠におめでとうございます」
そう言いながらも、じぃーっとカヌアの首元を見つめる。
「そういえば確か真珠の宝石言葉は健康、長寿、富、純潔。そしてネックレスを贈る意味は… 絆を深めたい、あるいは永遠に一緒にいたいと… なるほどなるほど」
「えっ!? それはつまり?」
「はい、つまり?」
ニッコリと解答待ちしている。
「ん? つまり?」
(永遠に… 長生き… うむ、健康でいて欲しいってことか!)
違う点と点が繋がってしまった。
「あぁなるほど。大丈夫です! 健康には自信があります! それに身体だけは丈夫ですから! ウィル様には、そのことは何度もお伝えしてるはずですが、足りなかったですかね… ?」
「ん???」
カブラの顔が、少し曇った。
「おい、余計な事を吹き込むな。ほんとお前は物知りにもほどがある」
後ろからウィルが制止した。
「これはこれは。カヌア様との貴重な時間を、お借りして申し訳ありませんでした」
それではまたと言うふうに、カブラはすぐさま捌けた。
(あぁ、ほんと疲れた、人もフラフィーも多いし帰りたい)
カヌアはもう、お腹いっぱいであった。
知り合いではない人とも普通ならば踊るのだが、ウィルの牽制が効いたのか、他に誰も誘いに来ない。
カヌアには、嬉しいことなのだが。
そのウィルはというと、他の来賓と話し始めてる。
「お話し中失礼致します。わたくし、少しあちらの方で休んでいますわね」
カヌアは一言かけた。
「あ、俺も一緒に… 」
そう言おうとしたが、今がチャンス! と言わんばかりに、重鎮達がここぞとウィルを囲んでしまった。
(王子って大変だな)
振り向きながらも気にも止めていないカヌアは、会場端にあるソファに座った。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。