表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

131/134

episode130〜黒の女神〜

初連載の続きです。毎日投稿してます。ゆるく読んでいただければと思います。よろしくお願いします。




黄色い飴によって大蛇のような竜を鎮めたカヌア達。

そうして通路から繋がる扉の中へと足を踏み入れた。

そこには、さらに衝撃的な光景を目にすることとなる。


『え…?誰?』


そこには黒いドレスを纏った美しい女性が、椅子に座っていた。


『また誰か入ってきたのか?勝手なことを…まったく、トゥバンは何をしている…』


女性が言うその言葉に、カヌアは反応した。


『トゥバン?』


『そいつの名だ。それにしてもカヌア…まさかここまで来るとは…』


その聞き覚えのある声の方を見ると、そこにはクーロスが立っていた。


『叔父様っ!!やっと見つけた!何故このようなことを!?本当に叔父様が全てやったの!?』


カヌアがクーロスに近づこうとしたが、その腕をウィルが掴んで止めた。


『クーロス、訳を話せ。答えによってはお前をこの場で…』


その言葉を重く受け止めるカヌア。


『説明して。納得するまで動かないから…』

と言って、カヌアはトゥバンと呼ばれる竜の側へと行った。


そしてトゥバンが大事そうに抱える、その黄色い大きな玉に剣を突き出した。


『これが大事なんでしょ?わかる…私には視えるから…』


『お前…その左眼は…!?まさかラジェットの…そうか…まぁ好きにしろクーロス』

と言う黒い女性。


その言葉に反応するカヌア達。


(この女、ラジェットの名を知っている?それにしてもクーロスと知り合いか?)


ウィルがその女性を凝視した。


『カヌア、わかった。全て話すから、とりあえずその剣を置け…』


しかしカヌアは微動だにせず、真っ直ぐクーロスを見つめたままだ。


『叔父様、この人は誰?』


その問いにクーロスは応えた。


『ヘィラは…俺の妻だ』


『え…?えっ!?つ、ま?奥さんいたのっ!?』


『あぁ黙ってて悪かったな…俺がこの一連の騒動を起こしたのは、妻のヘィラを助けるためだ』


(なんてこったい…深すぎる愛ね…いやいやいやいやっ!今はそれよりっ)


『すべてなの?どこまで叔父様がやったか説明して』


『…そうだな…』


『…トゥ…バンにさっき食べさせた黄色い飴…あれが叔父様の小屋にもあった。ケーフ山脈にあった物と同じだよね?それを採掘した後、飴としてトラストル家に依頼して街の人達に食べさせたの?』


カヌアが疑問を投げかけると、思わない方向からの声が返ってきた。


『あぁ、あれは私だ。飴…とは少し違うような気もするが似たようなものだな。ある種族の持つ石を参考に作った。地下に行かせないために、それを与え民を操って入り口を全て塞ごうとした。あれはずさんな出来だったがな…』


ヘィラのその言葉にクーロスが反応する。


『ヘィラ。当たり前だ。あれはそのために作ったんじゃないからな』


(ん?ある種族…?ロキの瞳やペンダントとは関係ないのかな?)


カヌアは心に何か引っかかった。


『商人のトラストルと一緒にいるところを見た人がいるが?』


ウィルがそう聞くと、クーロスはバツが悪そうに応えた。


『それは、その飴を民に流して欲しかったからだ。ヘィラに頼まれてな。まさかそんなことに使うとは思ってもいなかったがな…』


カヌアがさらに質問をしていく。


『国の王家の旧コインを持っていたのは…?』


『あれは本物だ。昔、ある人から譲り受けた』


『では、その旧コインを偽造したトラストル家とのは関係ないの…?』


『ない。あいつが勝手に事業を広めただけだ。本当に愚かな奴だ…』


カヌアはその会話をしながらも、クーロスの横にいるフラフィーをも見ていた。


ウィルも同じだった。


(嘘は付いていなさそうだな…)


『あとこの竜なんだが…』


ウィルがそう言いかけると、クーロスは少し訂正した。


『トゥバンは竜でもあるが蛇でもある。とても忠実で賢い。俺には全然懐かないがな』


『トゥバンはあらゆるところに描かれているな?ここの遺跡の周りにある七つの石。その他に王宮の中庭にもだ。クロノスの塔だな。あれを作ったのは先代のプレヌリュヌ女王だと聞いている。何故彼女はそのクロノスの塔を作ったか知っているか?』


ウィルがそう聞くと今度はヘィラが応えた。


『プレヌリュヌ?あぁ、ルネか。彼女はルネという名も持つ。月の女神であり、月光の女神でもある。プレヌリュヌという奴は、そのルネの意思だな。まったくセレネめ…わざわざそんな物を作りおって』


ヘィラの口から次々といろんな名前が出た。

しかしカヌア達はどれも聞き覚えのある名前であった。

その真相を確かめるためにある本の事を聞いた。


『あの…私達本で読みました。二重螺旋の本を…月の女神は…あなたを隠すためじゃなく、匿うために…そしていつでも会えるようにと…通路の入り口を庭園に作ったんじゃないですか?友として』


『友…として?お前何を言っているんだ?そんなはずは……』


少し考えるように黙り込むヘィラ。


(あ。何か思い当たってる…?)


その姿を見ながらカヌアは、本についての質問を進めた。


『この国には広大な地下があるのを最近知ったんだけど、叔父様はもちろん知っていたのよね?』


『あぁ、以前の王都だな』


『最近地下に行ってない?その時に二重螺旋の本を破ったりとか…』


疑いをかけるのは気が乗らないカヌアだが、この状況下においてはそう聞くのが早かった。


『あぁその通りだ。地下の存在を知ってはいたが、中に潜り込むのに苦労した。その時たまたまトラストルが族を送っていたからそれに紛れ込んだんだ。そして地下への扉を見つけた。それもこれもヘィラのこの場所を突き止めるためだったんだ』


『ねぇ、それじゃあ二重螺旋の本の破れた部分を持ってたりする?』


『あぁそれはここにある…』


そう言いながらクーロスは、その本の破れたページを差し出した。


それをカブラが受け取る。


破れたページをウィル達が覗き込んだ。


『これがあの続きか。確か直前までの内容は…


そして黒の女神は呪いにかかり

二度と椅子からその身を離すことができなくなってしまった


父である全知全能の神は黒の女神を解放しようとするが…

そこでページが切られていたな…』


ウィルは一字一句覚えていた。

それに対しカヌアは少し引いていた。


(恐ろしいほどの記憶力だな…)


『そしてその続きがこれだ』


ウィルその内容を読み上げた。


‘…それにはある条件を満たさなければならない


三つの色

それぞれに意味がある


光と色

それぞれを重ね合わせる


道を開き 扉を開ける

それぞれの役割


しかしそれぞれが発動する事により

どちらかはその意味をなさなくなる


これは月の女神の意思

それにより印は移動する

それはこの国が示す


印は北を

入り口はひとつではない


時間を示すもの

地を這うものがそれを守る


時に空も飛ぶ

過ちが結ぶそれは崩壊の時‘



『今まで考えてきた事とほぼ繋がりますね…三原色に北極星。それにトゥバン事も書かれていますね』


カヌアの言葉にウィルは頷く。


『この最後の文章が少し気になるな…’過ちが結ぶそれは崩壊の時’…何を差しているんだ…?』


一同は黙り込んで少し考えた。

しかし、すぐにウィルが何か思い出したように口を開けた。


『そういえば何故地下街の長老タラゼドはクーロスとわかったんだ?どう言うことか声と仕草を知ってたように思えたんだが』


ウィルのその質問にクーロスが応えた。


『あぁ、それは以前俺が王宮に支えていだからだろうな。その時に出会ったのがタラゼドさんだ。そうだ、武道の指南であるレア師匠も知り合いだぞ?』


『レア指南も?一体彼女はいくつなん…』


カヌアはウィルの袖を引っ張り、首を横に振ってその先を制した。

そしてカヌアは更に続けて聞いていった。


『その、三色を集めるために…キルラ様を狙って王家の証を奪ったの?怪我までさせて…全ては三原色を作り上げるため?』


『はぁ…すごいな…そこまでわかっていたのか…その通りだ。本当は馬を当てるはずだった。しかし馬だと当たった衝撃で跳ね上がり高いところから、キルラ殿下が落ちるかもしれないと思ってな…仕方なく肩を狙わせてもらった。王宮を出たばかりならさほどスピードも出てないし、救助するのも早いだろう。厩の馬を使わせるのに少し戸惑ったが…まさかその場にカヌアがいたとはな』


(やはり、ウィル様の思った通りだった…それでも…)


『人をっ…人を傷つけた叔父様は良くないです。もう二度とそんなことはしないで…約束して…』


カヌアは少し目に涙が浮き出てきた。


『あぁ…そうだな…約束する。二度としない。それと、もう一つ。あの時剣舞が行われるはずだったが延期になったろう?あれは俺の指示だ。先に剣舞をやると聞いていたのに急遽変更になったからな…キルラ殿下の証を奪うために人を雇ったんだ。ただ混乱させろと言っただけなのに、何故かその本人が混乱して楽器をめちゃくちゃにしてしまった…依頼する相手を間違えたな…あの時は悪かったなカヌア』


カヌアの目から浮き出て来た涙は、一筋の線として溢れ落ちた。


そんなカヌアを見てウィルも胸が苦しくなっていた。


(慕っているクーロスの悪行を聞くのはさぞかし辛いだろう…それでも頑張って聞いている…本当に強い…)


しかし、クーロスもその姿に気が付いてはいたが、けじめを心に刻んで話を続けた。


『最初は光の三色の方でこの場所を示す必要があった。ヘィラがどこにいるのかがわからなかったからな。そして、あの開会式でアルガダ国以外の三色が重なり見事に光の道ができた。これでトゥバンの遺跡にヘィラがいることがわかったんだ』


カヌアが涙を拭って聞いた。


『武道大会で光の道を作るためだけに?なら…何故、武道大会を出場して途中で棄権したんですか?あの時、私とてもショックでした…』


『あれは…ただ…お前の成長が見たかっただけだ。…息子の代わりに稽古をしたのも俺の勝手な感情だった。お前がどんどん成長するのがすごく嬉しかった。まさか、大会に出るとは思わなかったがな。ふっ、強くなったなぁ…カヌア』


優しい笑みを溢しながら言うクーロス。

その言葉にカヌアの目から溢れんばかりの涙が流れる。

咽び泣く声が部屋中に響く。

 

『ずるい…ずる…いよ…ック…そんなん絶対に嫌いになれないじゃない…』


ウィルがカヌアの肩をギュッと優しく抱き寄せた。


『そこからだ。遺跡の中へどうやって入るのかがわからなかった。まさか北のシンボルの位置がトゥバンから変わってたなんてな…なかなか苦戦したが、この国と遺跡の周りの石が北斗七星で繋がっていると気づいてからは早かった』


『し…るしの位置…この国は、星の本で溢れていると聞きました。教養でも1番最初にならうべきことだと…しかし、私は一度も教わった事がないんです…』


カヌアが涙を溢しながら聞いた。


『それについても俺があの家庭教師を送ったんだ。グランシャリオの一部と天体物理学の内容を省かせた。お前をこの騒動に関わらせたくなかったからな。まぁ結果そんなことをしても意味なかったがな。その優れた感と行動力がここまで導いたのかもな。それに…優秀なパートナーが現れた…』


クーロスはチラッとウィルの方を見て言った。

クーロスは続ける。


『しかしヘィラの居場所がわかったのはいいが、今度は色の方の三色の問題が出てきた』


『ノゥリア達の爪…』


カヌアが呟いた。


『そうだ。キルラ殿下は王家だからその証が鍵となっている。しかし彼女達はそうではない。爪の色がそれぞれ鍵となっていた。爪を一枚だけ剥がせばすぐに済む事だったんだが…』


少し濁すように言うクーロスに、ウィルが問いかけた。


『それはどうしてもできなかったんだな?二人がカヌアの大切な友人だったから…』


『あぁ、まぁそういうことだ。だから爪が伸びるまであの地下で過ごしてもらったんだが…二人には申し訳ないことをしたな…とても窮屈だっただろう。でもおれはカヌアの色んな話を聞けて良か…』


クーロスがふと見ると、カヌアが顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。


その様子を見てウィルが言う。


『カヌアの気持ちを考えろ』


『あぁすまなかった本当に…』


カヌアはウィルの気持ちを受け取り、その手をギュッと握った。


『…叔父様…続けて』


『…それから、二人の爪が伸びたところを切り離し頂戴した。それとアルガダの証を持って、色の三原色を作り上げたんだ。そしてこの通路への扉を開けることができた。あとは道をまっすぐ進むだけだ。この遺跡にヘィラがいることはわかっていたからな。

そして、ここに辿り着いて用意しておいたこのマルメロの複製をトゥバンに与えればここに入ることができた』


初めて耳にする単語にカヌアは反応した。


『マルメロ?』


『あぁ、さっきカヌアが突き刺そうとしていたその果実だ。それはヘィラが大切にしているものだ。その黄金の果実は林檎でな、善悪を知ることができる。それを守っているのがこの遺跡の主であるトゥバンだ』


『そうか…林檎…確かロキが林檎のような香りもほのかにするって言ってたわ…』


カヌアが思い出したように言った。


『ロキ?』


『私の家に新しく使用人として雇った男の子よ。その子がこの黄色い飴の匂いを嗅ぎ当てて…』


ロキの話を聞いて、クーロスは何かに気が付いたようだった。


(ん?その小僧…もしや…?いや、でもそんなはずは…)





ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると今後の励みになります。


他にも何点か完結済みの投稿もございます。

宜しければそちらも読んで頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ