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episode128〜その道は〜

初連載の続きです。

毎日投稿してます。

ゆるく読んでいただければと思います。

よろしくお願いします。



翌日。

昨夜たっぷりと寝たカヌアは、朝からうるさかった。

急いで支度をし、その足で王宮内を走っていたのだ。


途中ワイムとすれ違ったように思えた。


『気のせいか?』


いや、ワイムが猛スピードで後ろから追いかけてくる。


『えっ!?何!?』


すると今度はワイムの姿が見えなくなった。


そして、カヌアはそのまま走っていると何かにぶち当たった。


『っったぁーー!!なん…でこんな所に壁…が?』


それは壁ではなかった。


『はぁはぁはぁ…カヌア様…はぁ…お待ちください!』


壁のように硬くて大きなワイムだった。

カヌアを止めようと思ったが、追いかけても走って行ってしまうのでワイムは先回りして飛び出したのだ。


『ちょっと!!ワイム!!急に出てこないでよ!痛いよ!この筋肉はそんな物のために使うんじゃない!!ったぁ…痛てて…』


カヌアは顔面を抑えながら言う。


『カヌア様が引き止めようとしたのに無視するからですよ!?』


ワイムが少し怒ったように言った。


『こっちはねぇ!急いでるっんっだっよ!!早くノゥリアとアリーのとこに会いに行きたいのに!!ったく!』


カヌアは人差し指を、その厚い壁に向かって突き刺す。


『はぁ…そのノゥリアさんとアリーさんが見つからないから走り回っていたのでは?』


ワイムが言うその言葉にカヌアは口をつぐんだ。

図星である。


『……だったら何…?もしかして…知ってるの!?』


カヌアが少し分が悪そうに応えた。

するとワイムはニヤリを笑った。

その顔を見て、カヌアは食ってかかった。


『ちょっ!知ってるなら早く教えなさい!そしてそこへ連れて行きなさいっよ!』

と言ってワイムの胸ぐらを掴む令嬢。


『くっ苦しい…』


ワイムはカヌアの思いもよらぬ行動に、息が止まりそうになった。



ある部屋の扉が勢いよく開いた。

その瞬間、彼女達は歓喜の声を上げた。


『カヌア!!』


『ノゥリア!アリー!無事で良かった!!』


カヌアはそれ以上の声を上げて喜んだ。

その部屋は、昨日まで監禁されていた二人の過ごしている客間であった。

二人は相部屋としてこの部屋に保護されていたのだ。

一人ずつ部屋を用意すると予定だったのだが、彼女達がそれを拒んだ。


そしてカヌアを連れてきた従者が、後ろについていた。

いつもと風貌が違うその従者。

朝なのにげっそりとしている。


(何でワイムはあんなに疲れているんだ?やつは王宮きっての体力お化けだぞ?)


そう思うのはワイムの上司カブラであった。

ワイムは一瞬でもいいから誰かに代わって欲しいと思っていた。


『カヌアさん!たくさん探してくれてたんですって!?ありがとうございます!』


『ねぇカヌア?なんか痩せた!?大丈夫!?たくさん心配かけちゃったもんね!』


二人はカヌアにそう声をかけた。


(えぇ…なんか私より元気?)


カヌアはその二人の元気な姿を見て、嬉しく思った。


『二人ともごめんね。叔父様が…攫ったんでしょ?その…怖くなかった?クーロス叔父様のこと…』


自分の身内が迷惑をかけた事に尻込みするカヌア。


『えっ!?いえっ!全然!すごく紳士的でしたよ!』

とノゥリアが言うと、それに賛同してアリーも応えた。


『そうそう!!私たちのことめちゃくちゃ気遣ってくれたんだよ!それにご飯も美味しかったし』


(確かに…叔父様の作るご飯は絶品だけど…)


カヌアは2人が軟禁状態であったことに少し安心した。


『そう…なんだ…ほんと.良かった…でも何かされたんでしょう?その…爪…とか』


カヌアは二人の手を心配そうに見つめた。


『あぁ、はい…なんかよくわからなかったんですけど、この爪が必要だったとか?少し色味がかってるから、珍しく感じたのでしょうか?』


ノゥリアは不思議そうに言った。


『そうだねぇ…少し、変だなとは思ったんだけど、爪なんて伸びたらどうせ切って捨てちゃうし』


そのアリーの言葉に、痛みがなかった事を確信したカヌア。


『ただ…伸ばすまで一ヶ月以上もあの場所にずっといるとは思わなかったので、ちょっと大変でしたけど…』


『そうだね、太陽の光も浴びたかったし』


とはいえ、やはり嫌な気持ちであった事に間違いはない。

2人の会話に言葉が出なくなるカヌア。


『そっか!確かに私は地下生活慣れてるからいいけど、アリーちゃんは不安だったよね!?』


カヌアはノゥリアのその言葉に少し反応した。


『アリー…ちゃん?』


『うん!私達一ヶ月以上も一緒にいたからたくさんお互いの話して仲良くなったの!ノゥリアの地下の話とかとっても興味深かったぁ』


『アリーちゃんは…この何年間すごく辛かったんだよね…大変だったよね…でもそんなアリーちゃんをカヌアさんが助けたなんてカッコ良すぎます!』


『あ、いや…あれは…私はそんな…あはは、そ、それにしても二人とも本っ当に無事でよかった!私も今、王宮でお部屋借りてるから、何かあれば言ってね!』


カヌアがそう言うと二人はニコッと笑って手を取り合った。


すると、それを見ていたカブラが近づいて来た。


『カヌア様、少しよろしいでしょうか?お2人にもう少しお話をお伺いしたいのですが』


『カブラ様!いらっしゃってたんですね!すいません突然きてしまって…』


そう言うカヌアにカブラが首を振った。


『いえ、むしろもう少し早く御到着するのかと思ってたのですが…ワイムと中々お会いできませんでしたかね?』


『それは…』


カヌアがワイムを見ながら、何か言おうとしたが、濁した。

ワイムが気まずそうに目を瞑る。

首を傾げながらカブラは話を戻した。


『今、お二人の体調をお伺いしてたところです。ウィル様にご報告するためなので。カヌア様、もしよろしければこの後、ご朝食後にお二人にウィル様がお話を聞かれるとのことです。ご一緒にいかがですか?』


『はい!もちろんです!三人で一緒に朝ごはん食べに行こう!絶品なんだよ!』


カヌアは立ち上がると、二人を誘って部屋を後にした。


ワイムがカブラに近づいて何やら、耳打ちをした。

するとカブラは彼の胸元が赤くなっているのを確認すると、苦笑いをひとつ顔に浮かべた。


その後三人は朝食を食べ終えると、ウィルのいる公務室へと向かった。


そこで、軟禁されていた昨日までの経緯を聞いた。


『それで、アリーはそのクーロス叔父様が出ていったという扉を見たんだよね?その扉には取っ手がなかったって聞いたけど、その扉の作りに見覚えはある?仕掛けとかわかればいいんだけど…』


一緒に聞くだけのはずだけのカヌアだったが、先導をきって質問をしていた。


『確かにあれは、よく見るあの板…に似てますね。でもあれは板ではなく、ちゃんと扉でした』


ノゥリアは思い出すように言った。

それを聞いて考えるように言うカヌア。


『確かにいつもはフェイクとしてある板だもんね。うーん…取っ手のない扉か…どうやって開ければ…』


『ん?開けるのは簡単ですよ?あ、でも本来の開け方はわかりませんが…私その扉が開いた時、閉まる前に挟みましたから』

とノゥリアはニコッとしながら言う。


『挟んだ?』


カヌアが首を傾げながら聞く。


『はい!これを…』

と言ってノゥリアが渡したのは、小さなジャッキのような物だった。


『え?これを?扉の間に?その一瞬で?』


カヌアが驚いて聞くと、ノゥリアは淡々と応えた。


『はい!そんなに距離はありませんでしたので、投げても届きました』


(そこじゃないのよ…あの暗闇で…この小さいのを…扉の隙間に…さすが弓の名手…命中率が半端ねぇ…)


『す…ごいね…本当にすごいよ、ノゥリア…あっぱれだよ』


カヌアはあっけに取られながらもノゥリアを讃えた。しかし、カヌアの前世の言葉が気になったのかノゥリアは不思議な顔をして言った。


『え?あっぱれ?』


『あ、ごめんごめん!そしたら、それをどうやったら開けられるの?もう開いてる?』


カヌアは続けて聞く。


『いえ、ボタンを押すだけです。そのボタンを押すと金具が開いて扉が押し出されます』


その言葉にカヌアはさらに驚いた。


『え!?でもこんな小さいので重い扉を開けられるの?』


『はい!かなり強力なんで!』


『たくましいね!そしたら、今日早速行きたいんだけど、使い方を教えてくれる?』


勝手に話を進めるカヌア。


(殿下がいるのをお忘れではないだろうか?)


カブラが主人をチラッと見て思う。


しかし、ウィルも興味深そうにその説明を真剣に聞いていた。


そうしてカヌア達は、そのチビジャッキのやり方を教えてもらった。


(簡単だ…これは、この先かなり使えそうだな…)


そう思いながらウィルはカブラに目配せをする。

どうにかこの技術を手に入れたいと思っていた。



そしてカヌア達はこれから、ノゥリアとアリーが監禁されていた小熊の地下へと行くことにした。


(ここか…確かに小熊の足下が開いてる…ここが地下への入り口…)


カヌア達は足元の暗い中、その階段をゆっくりと降りて行った。


(二人は一ヶ月もここにいたのか…叔父様…何故こんな事…この先に答えはあるのかしら…)


そして、クーロスが中へ入ったという扉を確認した。


(これね、ノゥリアが寸前で挟んだっていう小型ジャッキは…)


カヌアは教わった通りにボタンを押した。

すると、簡単に扉が開いた。


ウィル達と顔を見合わすと、その先へ足を踏み入れた。


中は薄暗い通路のようになっていた。


風もない。

光もない。


その長い道はどこに続くのか。


ランプを持つワイムを先頭に、ウィルとカヌアが後に続いた。

最後尾にはカブラが同じくランプを持っている。


その通路を見てウィルが声を漏らした。


『これは…』


それにカヌアも反応する。


『ノゥリアのいるあの地下街とはまた違いますね』


その通路は赤でもなく青でもない。


両サイドが真っ二つに白と黒の色で分かれていたのだ。


(まるで…光の世界と闇の世界にいるみたい…黒い方なんて足を入れると沈んでしまいそうなくらい…)


カヌアはそう思うと、不安な心が広がっていった。

自然と左側の白い壁の方へと身体が寄ってしまう。


それはまるで何にもない世界にいるようだった。


『怖い…』


カヌアはあの時の夢を思い出した。

クロノスの塔で蛇が何かをカヌア達に渡したあの夢だ。


誰もいない、どの生き物さえの気配も感じない。

最後には本当の闇に入ったように真っ暗になったあの…


カヌアが不安でたまらないような表情をしていた。

ウィルが優しく手を包んでニコッと笑う。


『大丈夫だ。一人にはさせない』


カヌアはその手を握り返し、深く頷いた。



それからどのくらい歩いたのか。

その通路に少し変化があった。


『ウィル様、ここから二つに道が分かれていますね。一体どちらに進めばいいのか…』


そう言うのは先頭にいたワイムであった。


『出口が二つあるのか?それともどちらかは行き止まりもしくは…何か罠が仕掛けられているのか?』


ウィルが一度考えるように言った。


『両方罠がある可能性は十分ありますよね?』


カヌアも同じような考えだった。


『どちらにせよ、我が国にある以上確認する必要はあるな…しかし、今の目的はクーロスを追うこと。彼はどっちに進んだのか…?』


ウィルのその言葉にカブラが提案した。


『少しこの辺りを調べてみましょう。少しでも何か違いがあれば、手掛かりになるかもしれませんし』


そうして四人は、分かれ道の周辺をくまなく調べた。

カブラがウィルの方を向いて言った。


『何もわかりま…』


しかしその言葉が言い終わる前に、ワイムが手をあげそれを制した。


ある方向に耳を傾けている。

ワイムだけじゃない、カヌアもだった。

カヌアとワイムは目配せをした。


『なん…だ?』


訳が分からずウィルが聞く。


『ウィル様、おそらくですが、左の方向から何かの物音が聞こえました。叫び声とかではなさそうです。何かを落としたような…音です』


カヌアは聞こえた音を詳しく説明した。

その事にウィルが驚いたように聞いてきた。


『聞こえ…たのか…?』


『微かにですが…』


(この二人の耳はどうなっているんだ…)


ウィルはそう思ったがもちろん二人を信じているので、指示を出した。


『わかった。左へ行こう。しかし、右も確認はしたい。ワイム、お前は右に行ってくれないか?』


『えっ!?それは後ででもっ…』

とカヌアは不安そうに言う。


『カヌア様…お二人のその聴覚は信頼しております。しかし何かの罠で万が一、右側にクーロスがいた場合、取り逃がす可能性があります。念の為です。ご理解を…』


カヌアはその言葉に口をつぐむ。


『ご心配には及びません。この身の軽さです。何があっても死にはしないでしょう』


ワイムは真顔だった。

しかし彼のフラフィーは優しく笑っている。


『ワイム…』


カヌアは心配な声を漏らす。


『ワイム、頼んだ』


ウィルが頷きながらそう言う。


『御意』


そうしてワイムは右の通路へと駆け出し、あっという間に姿が見えなくなった。


それを心配そうに見つめるカヌア。

そんなカヌアの手を握りしめるウィル。

彼も同じ気持ちだった。

ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると今後の励みになります。

他にも何点か完結済みの投稿もございます。

宜しければそちらも読んで頂けると幸いです。

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