episode126〜現在の〜
初連載の続きです。毎日投稿してます。ゆるく読んでいただければと思います。よろしくお願いします。
今しがた星空を見たことによって、ある事を閃いたカヌア。
そして、カヌアとウィルは公務室へと入っていき、先程カブラに用意させたものをテーブルに広げた。
目の前にあるのはアルデリア王国の地図だった。
(カヌアの試したいことってなんだ?)
ウィルがそう思う中、カヌアはクーロスの家にあったテーブルの跡を写した物を見比べていた。
そして、同じような線を地図の上にも書いていった。
大きさは違うがやはり思った通り、形が似ていた。
『おそらく、クーロス叔父様はその北のシンボルを探していたんじゃないかと…ここの何度もなぞってある箇所は、どれも等間隔ですよね?そして、途中で別れてしまっていますが、全てに5本の線が引かれています。アルデリアの街は7角形になっていますよね。この形は、本来の北斗七星の形じゃない…となると、北のシンボルの位置はとりあえずこのメラクとドゥべーの結んだ長さの5倍先を探すしかない気がするんです。それさえも合っているのか不安ですが…』
カヌアはそう言いながら、色んな方向に線を引いていった。
するとカヌアはふと思った。
『ち、ちなみにカシオペアという名の場所とかって…』
『…いや、聞いたことないな』
ウィルは思う。
(なぜだ?さっきから当たり前の事を聞いてくる。何か俺を試しているのか?たまにカヌアがわからなくなる…)
『ですよね!ふふ』
(だから叔父様は北極星を探すのに手がかりが少なくて困っていたんだ…あれ?でもどうして北極星となり得る場所なんて探していたんだ?)
カヌアがそう思っている中、カブラがピンポイントで口を開いた。
『もしかしてですが、その北のシンボルが何かの入り口なのでは?』
『そこに…ノゥリアとアリーがいる!!』
カヌアのその言葉にカブラが頷くと、その手はさらに勢いを増した。
(でも何の入り口?どこに続いているんだろ?)
そして、カヌア達は何度も何度も等間隔の線を書いては5倍先にある所に印をつけた。
途中カヌアには無理にでも食事を取らせるのにウィルは苦戦していた。
しかし、誰1人としてその場所に心当たりが出てくる者はいなかった。
そして既に外は明るくなっていた。
カヌアは眠気が限界にきて、テーブルの上に伏せってしまった。
そんなカヌアを抱え上げ、ソファーへと寝かせるウィル。
その額にキスをして顔を優しくなぞった。
(こんな事になるなんて…とにかく一刻も早く3人を探し出し、クーロスを止めないと…)
夜が明け、その日はウィルが公務があるということなので、カヌアは自室へと移動した。
北のシンボルを探し続けたいと言い、地図をそのまま持って行った。
カヌアが2時間ほども寝てないのをウィルは知っていた。
心配なウィルは公務を後回しにしようと言い出しそうになったが、カブラがそれを許さなかった。
しかし、ウィルはその持ち前の要領の良さと頭脳を駆使に駆使して速攻で公務を終わらしたのだ。
(いつもこうなら良いのに…)
とカブラは思ったが、それを簡単に口に出来ないのが従者の性である。
昼過ぎ、カヌアに食事を持ってきたリリィとともにウィルが様子を見に来た。
しかしカヌアは行き詰まったまま、一向にわからないようであった。
(何だか昨日より顔色がさらに…これ以上はもう…限界なんじゃないか?)
ウィルはそう思いながら心配して近づいた。
しかし、カヌアはヒュッと顔を上げると、ウィルに質問をした。
『ウィル様、以前の北極…北のシンボルは龍と言ってましたよね?では今のシンボルは何の形をしているのでしょう?』
(線を引くのに必死で肝心なこと聞くの忘れてた…頭が回ってない証拠だわ…)
『今のシンボルは小熊だ。例の歳差運動によって何千年に一度、それが変わると言われている。しかし、何かが起こってしまったせいでそれを待たずにいきなり歳差運動の軌道が変わってしまった。それが100年ほど前だな。それによって現在のシンボルは龍から小熊に移った』
その言葉にカヌアは何かを思い出しそうになったが、どうにも頭が回らない。
(何かが起こった…?小熊…小熊…?どこかで…)
『では以前のシンボルが龍だったなら、その場所は…あの遺跡?…お待ち下さい、あそこには7つの石がありましたよね?とても歪に置かれていて、意味がないかと思っていました…でも…意味が…ちゃんとあった…?そして7つの星…北斗七星は7つの星…そこから北のシンボルがわかる…あのっ!!遺跡の周りの石の並びがどのように置かれていたか覚えてらっしゃいますか?』
カヌアがそう言うと、カブラが何やらそれを出そうとした。
しかし、ウィルがそれを制したのだ。
『カヌア…その前に約束を守ってもらおう』
少し強い口調でウィルがそう言う。
そしてリリィが持ってきた昼食、それとあたたかいミルクティーを差し出した。
カヌアはコクッと頷くと、ゆっくりそれを口にした。
すると、少し胃が落ち着いたのか、頭も冴えてきたカヌア。
『ウィル様…心配をお掛けしてしまいすいません…あの…怒っ…てらっしゃいます?』
『はぁ…怒っているわけではない…んだ…俺はこのままカヌアの身体が…心が何かに蝕まれていくんじゃないかと、不安でたまらない。頼む…半分なんだ…だから』
と言って、カヌアの手をぎゅうっと握りしめるウィル。
カヌアは申し訳ない気持ちと、その愛情溢れる気持ちで胸が苦しくなった。
『はい…』
カヌアは反省した。
しかし、ウィルは微笑んで言った。
『では、続きといくか!くれぐれも…くれぐれもだっ!無理はしないようにっ!』
と言って、カヌアの額を突いた。
カヌアはその行動にふふっと笑みが溢れる。
『レイルお兄様みたい』
『お、俺は真剣に…』
『はい、ちゃんとわかっております。私はウィル様の半分ですから。私がまたおかしな方向に行きそうな時はそうやって道を戻してください。そして私の中をウィル様でいっぱいにして下さいね』
とカヌアはウィルの両手を握り返し、自身の頬に当てた。
そして、ウィルの目を愛情を込めて見つめた。
カヌアが突然そんなことを言い出すもんだから、そこにいた全員の顔が紅潮した。
(俺でいっぱい…俺で…していいのか?いっぱいに…)
ウィルは顔がここ1番真っ赤だ。
しかし、この時カヌア本人にはそんな自覚がなかった。
なぜなら急に眠気が襲ってきたのだ。
話を戻すように赤面しながらもカブラが切り出した。
『えぇ…と、遺跡の図面ですが、私が一応記していたのがこれです』
と言ってカヌアはそれを受け取って見た。
するとカヌアの眠気は一瞬にして吹っ飛んだ。
(うっ、うめぇ!!)
カブラのその絵のうまさに驚愕したのだ。
(って!違う違う!!そうじゃないっ!)
『あの、ウィル様…この形って!?』
とカヌアは失礼しますと言いながら、その絵に何やら書き足した。
『こうやって石同士を線で繋げると北斗七星の形をしてるように見えませんか?』
とそれを見せながらウィルに言った。
『あぁ、確実にそうだな。北斗七星の形そのものだ。ということは、これが北のシンボルを示す鍵に?以前の北のシンボルが龍であるなら、この遺跡自体がシンボルだったのではないかということか?』
カヌアが深く頷いた。
『そして何らかの理由で変わった現在のシンボル…おそらく小熊ですが、それを探すには本来ならカシオペアと北斗七星でわかるはず…しかし、カシオペアという名の場所がない…となるとこの2つの北斗七星の手掛かりが必要なのでは?』
カヌアのその言葉に今度はウィルが頷いた。
『この7つの石の並びを見て、メラクとドゥベーに当たる石を線で結び、そこから先に一直線に伸ばしてみましょう。しかし、本来の星ではないので5倍かどうかはわかりませんが、直線なのは確かな気がします…この先に何があるのかは…わかりませんが…』
カヌアはそう言うと、線を引き始めた。
『あとは、これに街の地図で引いたこの候補の線、これと交差しそうなところを…』
と今度はウィルが照らし合わせながら、指でなぞった。
その場所にカヌアは反応した。
『ん?ここ?ここですかね?え…?ここって…』
『ここは…サラの家か?』
ウィルがピンポイントで言った。
『……ハッ!!思い出しました!以前サラの家に行った時に見たんです!サラの家の側に…熊の置物がありました!親熊と…そして小熊の…2体が…今の北のシンボルは…小熊…』
カヌアのその言葉にその場にいた全員が息をのんだ。
『行きましょうっ!!今すぐに!!そこが入り口の可能性が非常に高いです!』
カヌアがそう言い、飛び出しそうになったその身体をウィルが止めた。
『ダメだ。カヌアはこれ以上…動いたらきっと倒れる…そこには俺たちが行く…』
『えっ!?嫌ですっ!何を言っているんですか!?こんな…時に!私より…ふた…りの方が…あ…れ?』
するとカヌアは急に意識が飛んだ。
倒れそうになったその身体をすかさずウィルが受け止める。
倒れる事を知っていたかのように。
『ふぅ…やっと効いたか…本当はもっと速いはずなのだが、カブラの絵を見た時に目が一瞬醒めたようだったな…』
ウィルはそう言うと、カヌアを大事に抱えベッドの上に寝かせた。
『リリィ、礼を言う…あとは頼んだ…』
リリィは少し不満そうにしていたが、かしこまりましたと言うと、カヌアの身を整えた。
しかし彼女のフラフィーは怒っていた。
その事にリリィはものすごく反対したが、カヌアためと言われ心を殺して承諾したのだった。
サラの家に向かう途中、カブラは口を開いた。
『本当にカヌア様に薬を盛ったんですね』
『人聞きの悪い事を言うな…よく眠れる粉を飲み物に混ぜただけだ。あの状態のままこれ以上動いたら、本当の意味で倒れてしまう…これで…良かったんだ…カヌアのために』
ウィルは拳を強く握りしめ、罪悪感に見舞われていた。
(リリィに運ばせた昼食の茶の中に混入させるとは…しかもわかりにくいようにミルクまで混ぜて…ウィル様も心を痛まれたでしょうに…)
カブラはそんな主人を見つめた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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