episode124〜象徴〜
初連載の続きです。毎日投稿してます。ゆるく読んでいただければと思います。よろしくお願いします。
翌日、ウィルは眩しさで目が覚めた。
窓から差す日差しが目に当たっていたのだ。
窓際に誰か立っている。
カヌアだ。
眩しいのか、何やら手を太陽にかざして窓の外を見ていた。
『カヌア…おはよう。ゆっくり眠れたか?』
ウィルは上半身を起こした。
それに対し、カヌアは何ともいえない表情で振り向いた。
『おは…ようございます』
カヌアはそう言うと、ウィルにゆっくり近づいた。
何やら言いたいのか、考えたいのかわからないが無言のままさらに近づいた。
まだ近づく。
そして布団の上にまで乗り、半身を布団で被せていたウィルの肩をガシッと掴んだ。
『ウィル…様…わかっちゃいました!多分、いや!絶対そうです!』
『な、何がわかったんだ?』
ウィルは少し戸惑っていた。
『昨日眠りながら考えてたんですけど、白い女神様は空に何かをかざしてますよね?そして、黒い女神様は地面に何かを置いていた。あの行為は、例の3色を重ね合わせているのではないでしょうか?』
(あの寝るまでに考える時間なんてあったのか?)
『三原色か。確かに、そう言われれば、そうかもしれないな。‘光‘の3色は天にかざすと白に。‘色‘の3色を置いて見ると黒に。そういうことか』
カヌアは頷く。
『はい…なので光の女神を司る王家、つまり陛下に‘光‘の3色をかざしたことによって、光の道が発動したのではないでしょうか?そして…クーロス叔父様は今度は‘色‘の3色で黒の女神を使って何かを発動させようとしている…とか?』
カヌアは考えをウィルに示した。
『その3色を持っている人物がキルラの他に、ノゥリアとアリーか…しかし、何故その2人だけが攫われたんだ?キルラみたいにその証だけを奪えばよかったんじゃ…?』
ウィルも疑問を投げかける。
『もしかして、奪えなかった…んじゃないでしょうか?本人から切り離せなかったから仕方なく…本人自体をその場に連れて行くために攫った?それが何なのかはわかりませんが…』
『切り離せない?…確かに一理あるが、そうなると…その部位とは一体…』
ウィルのその言葉にカヌアは何故か鳥肌が立った。
そんなカヌアを見て、ウィルは話を少し変えた。
『…それと肝心の黒の女王が誰なのか…どこにいるのかがわからないな』
『そうですね…うーん……うー…ん…お腹空きましたね…空きすぎて頭が回りませんね…とりあえず朝食を取りながら考えましょう!さぁ!』
と言ってカヌアはウィルを促した。
しかしウィルは動こうとしない。
カヌアは自分が寝巻きであるのをすっかり忘れていた。
そのまま前のめりでウィルの目の前にいるもんだから、彼はたまったもんじゃなかった。
しかしカヌアはそんなウィルの気も知れず、腕を引っ張ってさらに促した。
『ウィル様?さぁ!早く行きましょう!』
『あ…いや、俺はもう少ししたら行くから…先に』
ウィルがそう言うと、カヌアは不思議に思いながらもウィルの腕を離した。
『ん?そうですか?わかりました!では後ほどっ!』
そう言うカヌアをウィルは不自然な笑顔で見送った。
ウィルはまだ起きたばかりで、掛け物をどかせなかった。
それなのにカヌアがこんな風に近づいてきたばっかりに、さらに布団から出ることができなくなっていたのだ。
『カ、カヌア…勘弁してくれ…ほんと』
と顔を紅潮させて呟いた。
しかし、それから数日間何も進展がないままでいた。
カヌア達はいろんな資料を読み漁り、いろんな場所を探し、もう一度クーロスの小屋に行ったり、地下へと行ったり、試行錯誤したにも関わらず何の手がかりも得られなかった。
そして、ノゥリアとアリーの姿が見えなくなってからもうすぐ1カ月が経とうとしていた。
そんなカヌアは頭の中の疲れが限界へと来ていた。
見つからない不安と寝不足で、持ち前の食欲さえもなくなっていた。
(2人はもう…いやいやいやいやっ!そんな訳ない!クーロス叔父様がそんな人の道を外れるようなことをするはずがないわ!!でも、きっと攫ったのは叔父様…なのよね…残念だけど、そこは認めざるを得ない…でもなぜ?何が目的?何がしたいの?会ったら根掘り葉掘り聞いてやるんだからっ!!)
とカヌアは悶々と思いながら、部屋にいた。
すると、部屋の扉を叩く音がした、カヌアが返事をするとウィルが入ってきた。
『カヌア…少し付き合わないか?トゥバンの丘のレグのところへ』
行き詰まったカヌアをウィルは誘い出した。
最近全然レグのお墓に行けていなかったので、カヌアは快く返事した。
そして、ウィルの愛馬に相乗りして、トゥバンの丘へと赴いた。
今回はいつも丘の入り口で待っているカブラも一緒だ。
カヌアはレグにお花を添えるとひざまづいた。
(レグ…最近来れなくてごめんね…今…大切な友達が…)
と色んな思いが込み上がり、ほんのり涙を浮かべながら手を合わせていた。
そして、カヌアはふと遺跡の方角を見た。
『ウィル様…すいませんが、もう一度…』
カヌアの思いを察したウィルは頷いて言った。
『やはり遺跡の方が気になるよな。見に行くか…その代わり…』
カヌアの体調が気になるウィルは、あまり乗り気ではなかったが、ある約束をさせてそれを承諾した。
そして遺跡の側まで行くと、周りにある7つの石を何度も確認した。
今度はカヌア自作の発掘用のハケまで持ってきていた。
(カヌア…本格的だ)
(カヌア様…いつの間にそんな物作ったんですか…)
2人はある意味感心しながら見ていた。
カヌアはハケを使って石を丁寧に掃いた。
『見てください!こうすればもう少しはっきり見えます。ウィル様、ご確認を』
『そうだな…ん?これって…龍じゃないか?蛇に羽?羽とは翼膜のことだったのか?てっきり虫みたいなのを想像していたが…』
ウィルのその言葉を聞いてカヌアは当然驚いた。
『えっ!?ちょっと待ってください!龍ってもしかして…これを見てそう言いました?』
とカヌアはその石に描かれてる蛇を指差し、再度確認した。
『あぁ…これが龍かどうかはわからないが、そう見えるな』
(えぇっ!!概念あったんじゃん!!龍イコール…‘ドラゴン‘って言う言葉がなかっただけか!なんだ!じゃあ、あれを…)
と思いカヌアはポケットからある紙を出した。
『あの、ウィル様…この前言ってた私のドラゴンを描いてきたんですけど…』
そう言うとカヌアはウィルにその絵を渡した。
(これでイコールだったってわかるはず)
カヌアは期待を込めてウィルを見ていた。
ウィルはその紙を見て笑顔になった。
しかしカヌアが欲しい答えとは真逆のものが返ってきた。
『こ、これがこの前言っていた…ドラゴン!?初めて見た!さすがだ…その想像力も好きだ!この世にこんな生き物がいたらさぞかし良いだろうな!』
『……ん?』
(あれ?イコール龍……)
カヌアは首を傾げた。
そしてウィルはこの感動をお裾分けしようとカブラにも見せようと思った。
『カブラも見…』
『あ、結構です』
即答だった。
カブラは何故かカヌアの絵を目に収めたくなかった。
(カヌア様の絵…なんでしょう…見てしまったら…心が荒んでしまいそうで…)
この世でカヌアの絵を愛してくれるのはウィルテンダーたった1人である。
カヌアはドラゴンというのは、自身が生み出した空想上の生き物であるという事にした。
それを死ぬまで貫こうと今、心に決めた。
ウィルはそのカヌアからもらった空想上の生き物の絵を大事にしまって、ある事を口にした。
『それにしても、龍…か…前に本で読んだことがあるな…昔の北のシンボルは龍であったと』
『北のシンボル…?』
カヌアはまた新たな言葉に警戒した。
『あぁ、しかし遠い昔に世界の歳差運動が突然変わり、違う場所に移動したんだよな…』
ウィルは少し考えるように言うと、カヌアは少し目線を外した。
『………』
(ウィル様が何を言っているのか全っ然わからん…知識が追いつかないだけかな?何がどう手掛かりに繋がっているのかわからない…てか歳差運動って何?)
カヌアのその様子を見てカブラが補足した。
『カヌア様…念の為言っておきますが…歳差運動とはこの世界が駒のように少しずつ回っているという動きのことです。念の為…ですが』
『…シッテマス』
カヌアは目を泳がして言った。
(嘘だ…カヌア様、感はものすごく鋭いのに、何でこんなに知識が乏しいんだ?おかしい…)
とカヌアのその顔を見ながら、カブラは思った。
しかし、ウィルはいつでもカヌアを心配して言う。
『カヌア?顔色が…?大丈夫か?』
『あ…いえ…えぇと、全然大丈夫です!それより何でその歳差運動が変わってしまったんですかね?本来は変わることのない事なんです…よね?』
カヌアの質問は続く。
『あぁ自然の摂理で絶対に揺るがない事だからな。本来ならあと何千年もかかってシンボルが変わると言われているが…それにはまだ時が全然足りなかった。なのに何かをきっかけに変わってしまったらしいんだが…』
『それはどのくらい前の話ですか?』
『100年ほど前だったか?』
『確かに早いですね』
『そうだ!カヌア、今日はそのシンボルを一緒に見ないか?今夜俺の部屋で一緒に見よう。この感じだと澄んでいるから、きっとよく見える』
そのウィルの言葉にカヌアは口をあんぐりと開けた。
カヌアは連日の疲れと寝不足で頭が回っていなかった。
そんなこったで、また何やら考えがおかしな方向へと向かっていた。
(え?夜になると?え…?シンボルって一体何のシンボルっ!?えっ!?夜になると?ウィル様の部屋で!?一緒に見るの?クリアに見えるってこと!?つまり…どういうことっ!!?誰かぁ教えてっ!!)
もちろん北のシンボルのことである。
何やら方向転換してしまっているこの娘…
次回へ続く
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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