episode123〜読み解き・二重螺旋の本〜
初連載の続きです。毎日投稿してます。ゆるく読んでいただければと思います。よろしくお願いします。
先程クロノスの塔周辺で、ノゥリアの手掛かりが見つかった。
しかし肝心のノゥリア達がどこにいるのかが、まだわかっていなかった。
何故クロノスの塔に落ちていたのか。
その周辺に何かに通じている入り口をくまなく探したが、そのようなものはどこにも見当たらなかった。
仕方なく2人は一度戻って、夕食をとることにした。
その後身体を綺麗にして着替えてから、ウィルの自室で落ち合うことにした。
そして再度二重螺旋の本を見る約束をしたのだ。
本当は今日はもうカヌアに休んで欲しかったウィル。しかし本人がこの気持ちのままじゃ眠れないと言うことで、ここに至った。
ウィルは気が付いていた。
カヌアの緊張がまだ解けていなく、疲れているというのが。
そのため彼女がリラックスできるように、今回はふかふかなベッドの上で本を見ようと提案してみた。
断られるかと思ったが、カヌアはすんなり受け入れた。
ウィルは律儀に‘何もしないから‘とひと言添えると、カヌアは笑って返した。
ウィルは遠慮しているのか、気を遣っているのかでカヌアと少し距離を取っているように見える。
そして、2人は並んで再び二重螺旋の本を開いた。
夢で見た時と同じように、表紙には2人の人物が本に描かれていた。
1人は空に何かをかざし、もう1人は地に何かを置いている。
その内容をウィルと共に読み解いていく。
‘太陽とはこの世を創り上げた偉大なる創造主
太陽の神 ハルス
月の女神 セレネ
この二方無くしてこれはない
この世を治め 見守る月の女神セレネ
またの名をルネ‘
『この世界を作ったのは太陽の神ハルスで、それを治めているのが月の女神セレネってことですよね?多分気が付いてるとは思いますが、この二つ名って…両方とも…』
とカヌアがウィルを見て言う。
『あぁ…確かに俺に関係しているな…しかし王家についているのは、光の女神だ。月の女神じゃない』
ウィルがそう応えると、カヌアは地下街の話を思い出した。
『確かに…地下街のタラゼドさんが前に言ってたのは、‘光の女神を宿したルネ・アルデリア家‘の話…何で名前が同じなんでしょう?たまたま?』
『違うにしても、その‘ルネ‘の名は何か関係がある。光の三原色を陛下に示したことによって光の道ができた…このことが本当にクーロスに繋がっていくのか?』
ウィルも何か引っかかっているようで、中々確信が持てないでいた。
そんなウィルを見ながらも、カヌアは少しずつ話を進めていく。
『あの時は夢の中だったので、ぼんやりしてたからよくわからなかったですけど…この表紙に描かれている人物をずっと天使と悪魔だと思っていたんですけど、そうじゃないですよね…?私、思ったんですけど、この2人ってこの本に出てくる女神様なのではないかと思うんです…』
カヌアは自分の考えをそう示した。
それに対しウィルも応える。
『月の女神セレネと封印されているという黒の女神…俺も薄々そうだとは思っていた』
2人は頷くとさらに考察を深めていった。
『白い方の女神様は空に何かをかざしてますよね?そして、黒い方の女神様は地面に何かを置いて見ている…』
カヌアは考えに耽った。
『白い女神…?白いと言ったらやはり光?しかし月も白く見えるな…一体どちらの事を指しているのか?』
ウィルもとりあえず口には出してみたが、やはりわからずでさらに考えに耽った。
カヌアがページをめくると、2人の女神であろうが腕を互いに交差していた。
『これは…友好の証?それとも…何ですかね?そういえば、ウィル様、‘ハルス‘が出てくるのはこの本にだけじゃないですよね?禁書庫室にあったあの本にも…』
『…あぁそうだったな』
『それと関連づければ、何となくハルス自体がいつからウィル様の中にいたのかわかるのではないかと思うんです』
そう言うとカヌアは、少しウィルに近づいて聞いた。
『ウィル様…フラフィーが見え始めたのはいつからですか?』
『…あれは…確か、歴代の陛下達を弔う慰霊祭の時。毎年行なってはいるんだが、確かあの時は…初代女王プレヌリュヌが亡くなってからちょうど100年…だったような…』
ウィルのその応えに驚いたカヌアは思わず声を大きくしてしまった。
『100年っ!?亡くなってから!?ですか?』
(益々あのじいさんいくつなんだ?)
カヌアはタラゼドの顔を浮かべながら再度思った。
『今思うと随分とキリがいいな?初代女王…プレヌリュヌ…そういえばタラゼドが王宮に衛兵として支えてた時に女王が一度だけ‘ハルス‘と呟いてたのを聞いたことがあると言ってたな?』
『…思い違いかもしれませんが…その女王様もその…‘ハルス‘だったんじゃ?』
カヌアのその言葉にウィルも頷いてみせた。
『俺もずっとそのことを思っていた。しかし、今は情報が足りなく予想でしかない…とりあえず次の文を見てみるか?』
とウィルが促すとカヌアは深く頷いた。
2人は再度本に向き直った。
‘全知全能の神
封印されし黒の女神
この二神には特別な物語があった
それはこの世の終わりのはじまり
かつて黒の女神と光の女神とは友であった
いつしか黒の女神が全知全能の神と恋に落ち、新しい命が芽生えた
しかしその息子、優秀すぎる故に母である黒の女神は息子と認めずに他の地へと追いやった
それに怒りをあらわにした息子は戒めにと母へ贈り物をした
それはなんとも見事な鉄の座り物であった
息子は特別な贈り物と偽って贈ったのだ
それを受け取った黒の女神
何も疑わずに見事なその椅子に腰を据えた
そして黒の女神は呪いにかかり
二度と椅子からその身を離すことができなくなってしまった
父である全知全能の神は黒の女神を解放しようとするが…‘
『この物語、冒頭がものすごく怖くないですか?この世の終わりのはじまりって…』
とカヌアが少し眠いのか、軽く目を擦って言う。
『これは…本当に起こった話なのか?空想上の話なのか?一番怖いのはこれから起こるかもしれないということだな?白の女神は一体誰のことを指しているんだ?それに白の女神がいれば黒の女神もいる…のか?』
ウィルはある意味女神達に翻弄されていた。
『いるんですかね?それにしてもこの黒の女神様は酷いお母さんですよね?息子を息子だとも認めずに追いやるなんてっ!父親は息子を擁護しなかったんですかね?…でもそんな息子がお母さんを成敗してやったってことですよね?復讐的なことはよろしくないですけど。これでも血の繋がった親子…やっぱり自分を見て欲しかったんじゃないかな?』
カヌアは少し感情的になって、前世の記憶を思い出すようにして言った。
そんなカヌアの少し憂いを帯びた顔を見てウィルは言った。
『そうだな…家族にはいろいろな形がある。俺たちもいずれかは…その…家族に…』
しかし、カヌアは眠気が限界にきていたのか話があまり耳に入ってこなかった。
『ウィル様……黒の女神っぽいご友人とかいたりします?』
眠すぎて訳がわからないことを口走ってしまったカヌア。
『え…?黒の女神っぽい…友?いや…すまないが思い当たらないな…』
と律儀に応えるウィル。
『そう…ですか…』
カヌアは小さく頷いた。
『それにしても誰がこのページを破ったんだ…ん?破ったのは…持ち去るために破った…これもクーロスなのか?いや、確信がある訳じゃないが…一体ここに何が書かれていたんだ?カヌ…』
ウィルが考えを言いながらカヌアに問いかけようとした。
しかし、カヌアは既に寝息を立てて横になっていた。
ウィルは微笑むとそっと布団の中へと体勢を直してあげた。
優しく額にキスをすると、自身もその隣で眠りについた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
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