episode122〜遺跡周辺にて〜
初連載の続きです。毎日投稿してます。ゆるく読んでいただければと思います。よろしくお願いします。
クーロスの小屋にあったトゥバンの遺跡の本。
この本に何が書かれているのかをウィルから聞き、カヌア達はその内容の事実の確認を行なっていた。
『本当ですね、遺跡の周りには石がちゃんと7つある。でもてっきり、遺跡を囲むような形に置かれているのかと思いました。でもなんか変な位置に置かれていますね…途中から南西の方に伸びてるというか…意味があるのかないのか…う〜ん、それにしても、蛇の背中に羽根なんてもの本当にあるのでしょうか?』
と言いながらカヌアは1つずつ石を見ていた。
『はっきりとはわかりませんが、確かに薄らと蛇の背に何かがあるようなないような…』
カヌアが曖昧にそう言うと、ウィルも同じように言った。
『そうだな。蛇自体の絵柄も既に薄くなってしまっているからな…わかりにくいな』
とウィルも自信がないようだった。
『私が小さい頃踏み台にして飛び回ってたせいで、少し削れて薄くなっちゃったんですかね?』
とカヌアはまた口を滑らせた。
『ん?飛び回ってた?この石の間をか?』
ウィルがその言葉に反応して石達を見て言った。
『あ…小さい頃の話ですよ?もちろん途中で罰当たりなことだったと気が付いて、反省の意も込めて定期的にお掃除などしてました!本当ですよ!信じてください』
カヌアが少し焦ったようにそう言うとウィルが笑い始めた。
『ふ…ふふ…カヌアは本当に…思いもよらぬ行動が多いな。お転婆か…確かにあの時も木を登ったと思ったら、そのまま木の上で寝始めたから危なっかしかったよな…だから俺は助けにと…』
今度はカヌアがウィルの言葉に反応した。
『あの時?木…?え?もしかして、幼い頃…私が木から落ちた時にウィル様が下敷きになった、あの時ですか?え?あれは偶然じゃなかったんですか?たまたま通りかかったんじゃ…もしかしてずっと見てたんですか?それで助けに来て…くれた…とか?』
ウィルは言うつもりがなかったのか、顔が赤くなり始めた。
『私、あの時、死を覚悟しましたよ?ウィル様を押し潰してしまったから…』
カヌアが思い出すように言った。
『あの時、俺がちゃんとカヌアを受け止めてあげられていれば…それに逆なんだ。俺は…あの時にカヌアのことが気になり始めて…好きになったから…』
そのウィルの突然の告白に驚いたカヌアは疑問を投げかけた。
『えっ!?何故ですか?どこを…どこをどう見て?あれ?ん?もしかして…』
するといきなりカヌアはウィルの顔に両手を当てた。
そしてガッと数センチまで近づいて、ウィルの目を見て言った。
『ウィル様は!視力がお悪いんですか?先程も私を可愛いとか仰ってましたし!ちゃんと侍医に診てもらった方がよろし…』
ウィルはカヌアの行動に驚いたのもあるが、顔が急に間近に来たこともあり、顔を真っ赤にして動揺した。
『あっちょっカヌッ…わっ!』
そのせいで2人は体勢を崩し、そのまま倒れてしまった。
カヌアはウィルの上に覆い被さるようにしていた。
『あ、あの…ウィル様…すいません…私が余計なことをしたばかりに…』
カヌアは慌てて起きあがろうとしたが、ウィルがそれを許さなかった。
ウィルの手がカヌアの身体を捕らえて離さない。
『俺にとっては余計なことではない…むしろ喜ばしいことだ…カヌアの匂いが…近くに…たまらない…』
そして変態を解放した。
カヌアはもちろん動揺する。
『にっ匂いですか!?たまらないってなんですか!?あぁウィル様…その…この状況じゃ…私……ん?なんだ?』
突然カヌアは何かを見つけたように、その倒れた状態から少し上にズレた。
そしてウィルの頭よりさらに上の方へと手を伸ばした。
その行動によりウィルの身体はさらに限界に近づいていた。
(む、胸が…)
しかしカヌアはそのことに気が付かないほどの物を手にしていたのだ。
そして、それを手にするとカヌアは急に横にゴロンと移り、突然立ち上がって辺りを見回した。
少し離れては、また横に移動し辺りを見渡す。
『どうした?何かを探しているのか?ん?それは…』
と言うと、ウィルは落ち着いたところで頑張って立ち上がった。
そして、カヌアが持っている物が目に入った。
するとカヌアは先程拾った、ピンク色の花びららしきものを空に掲げて言った。
『ウィル様、この丘に牡丹の花って咲いてましたっけ?』
その質問に何か察したウィル。
『あ、いや、牡丹の花はこの国でも王宮の庭園でしか咲いてないはずだ…ん?それがここに落ちてたのか?』
『はい…綺麗な色。何だかマジェンタ色に近い。この花びら、何でこんなところに…』
すると2人は同時に目を見張った。
『クロノスの塔!!そこに行けば…!』
カヌアが先に声を出した。
ウィルは同じことを思ってはいたが、冷静に考えて言った。
『しかし、クロノスの塔??あんな所に人が入る場所なんてないぞ?』
『確かに…でもこの花びらが気になります!とりあえず、行ってみましょう!』
カヌアがそう言うと、2人は急いで王宮まで馬を走らせた。
王宮に着くと、近くにいた衛兵に馬を頼み、クロノスの塔のある中庭にまで2人は走った。
その庭にある牡丹の花と先程見つけた花びらを比べるカヌア。
『同じ。確かにここの…牡丹の花ですね。この時計塔に人が入る場所…もしくは入り口…地下街への入り口に似たもの…通じるような扉?木の穴?とにかく何か入り口がどこかにあるのかも…』
すると、辺りを捜索していたウィルがカヌアを呼んだ。
『カヌアッ!!』
カヌアはその声に驚き近づく。
ウィルのその手には、キラリと光る見覚えのある物があった。
『これって!?ノゥリアの…?眼鏡…割れてる!!ノゥリアが1人でこんな所に来るとは思えませんし…ここに連れて来られたってことですよね。本当にクーロス叔父様が…?あぁノゥリア…アリー…無事でいて…』
ウィルが見つけたそれは、ノゥリアが普段からかけていた眼鏡だった。
地下に住んでいるノゥリアにとっては、地上は眩しすぎるため、色の付いた眼鏡で眩しさを抑えていたのだ。
同じような眼鏡をロキもしてはいるが、先程トゥバンの丘で会ったばかりなので、これはノゥリアの物で間違いないと2人は確信していた。
しかし、カヌア達はこの後何時間も入り口を探したが一向に見つかることがなかった。
暗くなり、ウィルが一度戻ろうと促した時もカヌアは諦めようとしなかった。
ウィルはそんなカヌアを優しく説得すると、やっと納得して、食事を摂らせることに成功した。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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