episode11〜安堵&安堵〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
ふわふわと、心地良い白い光に包まれる。
ふと周りを見ると、両脇に本が所狭しと並んでいた。
(何だろ? ここは… )
すると、自分の意思なのか、側にあったある本が気になった。
その二重螺旋模様が、描かれている本を手に取り開く。
そこに描かれていたのは、二人の人物。
(天使? … と悪魔? よく見えないな)
一人は空に何かをかざし、もう一人は地に何かを置いている。
ページをめくると、二人の人物が腕を互いに交差していた。
すると今度は辺りが暗くなり、視界が分からなくなった。
眠っているカヌアを心配そうに見つめる影… ふと彼女の唇を意識した。
ウィルの顔が、急に熱くなった。
今頃になり、咄嗟に口づけをしたことを思い出したのだ。
救出とはいえ、恥ずかしさに赤面する。
あれからどのくらい眠っていただろう。
そっと、カヌアは目を開けた。
目の前に知っている天井が現れた。
(夢… ? あぁ私… )
火事で少女を助けようとしたことを急に思い出し、ベッドから身体を勢いよく起こした。
すると、その横で椅子に座っていたウィルが、驚いてこちらを見ていた。
「殿下!? ここで何を… 」
(身体が熱くて、少しヒリヒリしてる… )
ウィルが、心配そうに近づいて来る。
「おい、大丈夫か? どこか痛むのか?」
「あ、はい… 少し頭が… 」
カヌアが少し険しい顔をすると、ウィルは側に置いてあった水を差し出してくれた。
「煙を吸ったからな」
カヌアは、その水を一気に飲み干した。
「あの子は? ロザリーは!?」
「あぁ、無事だ。少し煙を吸ったが、大きな怪我はないようだ」
カヌアは、その言葉に安堵し、力が抜けた。
「あの… 」
火事のことを聞こうと思った時、部屋の扉が開き、たくさんのフラフィー達が勢いよく入ってきた。
「カヌアッ!! 目が覚めたんだね!!」
心配全開モードで来たのは、リヴール家四男のミルサである。
後ろには、更に上の兄達もいる。
「体調は!? 大丈夫なの!? すんごい心配したんだからっっ!」
(今にも泣きそう… いや泣いている)
「お、お兄様、ご心配おかけしてすみませんでした。少し頭が重いですが大丈夫ですよ… 」
全員のフラフィーが、カヌアへと盛大にまとわりついて来ているので、視界が騒がしい。
「まったく、お前はやんちゃがすぎる。なんでこう、先を考えなっいっんっだ!」
そう、頭を四回も小突くのは、三男のレイルだ。
「すいませぇん」
(痛い… )
ウィルはその様を見ていたが、ふとカヌアに目がいっていた。
(やはり… 眼が… )
「カヌア。あの火の中をウィルテンダー殿下が、自ら助けに入ってくれたんだよ」
そう、教えてくれたのは次男のフーリである。
「え?」
そう言われ、カヌアはウィルを見る。
「ほんと、誰もがほぼ無傷で済んだのは幸運だったね」
フーリが安堵したように、言葉を添える。
「殿下、そうとは知らず… 助けて頂き、ありがとうございました。殿下の身を危険に晒してしまい、申し訳ございません」
礼と謝罪をして、反省の意図を見せた。
すると、長男ロイドがウィルの前にひざまづいた。
それに倣って、兄達全員がひざまづく。
「この度は我がリヴール家の末娘、カヌアーリの命を救って頂いた事、感謝に堪えません。このご恩、リヴール家一族によって、一生尽くしていく所存でございます」
いつの間にか、母アメリも後ろに倣っていた。
「相分かった。それなら… 」
そう言うとウィルはベッドの方を向き、身体を起こしていたカヌアの方を見た。
そしてなんと、ひざまづき始めたのだ。
この光景に、そこにいた全員が驚く。
(今言わないと後悔する)
「カヌアーリ・ヴァ・リヴール。其方のデビュタントのパートナーとして、私を選んでいただけませんか?」
(……… えぇぇぇええええええー!? な、何事っ!! えっ選ぶだなんてっ… そっそんなっ… )
ウィルの耳がほのかに赤い。
(どっどっど、え!?)
だが断る理由はない。
「はい… 喜んで」
カヌアはウィルの手をそっと取った。
カヌアは、この言葉で返事するのが精一杯だった。
(((((やった!)))))
ここにいるほぼ全員の心の声が重なった。
ふと周りを見ると、フラフィー達がファンファーレを吹いている。
お祭り騒ぎだ。
(頭重いのに、更に混乱して来た)
ウィルは、はにかんで少し俯いた。
(うーん、それにしても、さっきから王子のフラフィーだけ見えないんだよなぁ。本音がわからない… )
カヌアはまだ疑っていた。
というか、鈍感オブ鈍感であった。
「では、後日打ち合わせをしよう」
そう言って、立ち上がるとドアの方へ足を運ぶウィル。
そこまで歩くと何やら止まって、ほんの少しだけ振り返る。
「無事で良かった… 今日は早く休め。体に障る」
わかりにくいが、顔が赤らめてるように思えた。
(私のせいで危ない目に遭ったのに、何故殿下はデビュタントのパートナーまで引き受けてくれたのだろ… ?)
頭が頭重感が少しある中、考えに考えた結果が次のようになった。
(そういえば、以前街で耳にしたことがあるな。パートナーは重要な役割を担ってしまうから、後々周りを納得させる手段として… ゲイの殿方を選ぶのだと。そうか! …… それだ!)
おかしな方向へと答えが出た。
(そうかそうか。同性愛者ならしょうがない。愛してしまうという心は誰にも止められないものだ。うむ。応援します殿下!)
この国ではパートナーは、婚約者とみなされる可能性があるので、慎重に選ばなければならなかった。
しかし、二つ返事で承諾してしまったのだ。
いや、そうせざるを得なかったところもある。
(まっ、とりあえず私はパートナーをゲットできたことだし、これで安心安心、ひと安心!)
勘違いまっしぐらだが、結果オーライである。
ふと、顔を上げると母アメリのフラフィーが踊り狂っていた。
「良かったわね! カヌア! しかも、ウィル殿下に見初められるなんて!」
「いや、でも何だか意味が違うような… それにお母様、デビュタントにおけるパートナーというだけです。プロポーズされたわけではないんですから… 特にそんな特別な事は… 」
(いや、なきにしもあらずよ!)
アメリは先走っていた。
一方、ウィルの方は…
王宮から馬車のお迎えが来ていた。
中へ入るや否や、ウィルの顔は真っ赤になり力が抜けたように腰をおろしていた。
顔を手で覆ったまま下を向いている。
(緊張した… 嬉しすぎて無理)
純粋に喜んでいた。
そして、有頂天な側近がやってきた。
「ウィル様! やりましたね!! この目に焼き付けておりました! 今から一部始終を再現し… 」
「やめろ」
(ずっと静かにしてると思ったら… 何観察してんだ)
「火の中に飛び込んだ甲斐がありましたね!! でも宜しいですか? 二度とあんな無謀なことをするのはお控えください。このカブラは本当に、肝が冷えました! この御身に何かあったらと思うと… 震えが」
そう言いながらも、カブラはニマニマしている。
「あぁ、頭に入れておく。お前まで巻き込んでしまってすまなかったな。だがもう… 遠慮はしない。やれることは全てやるつもりだ」
(何を? とは申しませんが… これからが大変ですよウィル様。まずはその照れ屋な不器用さんを直さないと)
そんな主人を愛おしく眺めた。
カヌアの目の前でそんな風に見つめてしまうと、勘違いの要因になりえるかもしれないが。
「愛ですねぇ」
口から漏れていた。
「うるさい」
窓の向こうを向きながらウィルは返した。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。