episode117〜真の友〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
アリーを救出してから数日後、カヌアはリヴール家当主である父親の部屋の前に来ていた。
「ふぅ…大丈夫大丈夫!絶対に大丈夫よ!行こう!アリー!」
カヌアはそう言うと、隣にいたアリーに声をかけた。
そして、父であるラスファの自室の扉を叩いた。
中から声がする。
「失礼します!ごきげんよう、お父様」
カヌアはそう言うと、アリーと共に部屋へと入った。
「あぁ、カヌアか!…うむ、聞いてるぞ。例の件だな?もちろん…受け入れよう!アリーをリヴール家の侍女として」
そうラスファがすぐにカヌア達の欲しかった応えを言うと、彼女達はとびっきりの笑顔で顔を見合わせた。
そして両手を合わせて歓声を上げた。
アリーのフラフィーは感極まっていた。
「誠にありがとうございます。ご主人様。わたくしアリー・マジェンタ・プルグスは、この恩を生涯を通して尽くす所存です!」
アリーがラスファに向かってそう言う。
すると今度は、カヌアが感謝の意を行動として表した。
ラスファの元へと駆け寄って、抱きついたのだ。
「ありがとうございますっ!お父様っ!大好きっ!」
と言って頬にキスをした。
ラスファはそんな娘の行動が嬉しくてたまらなかった。
フラフィーも右に同じである。
しかし、カヌアはそんな気も知らずにすぐにその手を離し、アリーの元へと戻ってしまった。
ラスファは少し寂しそうではあったが、二人が喜ぶ姿を見てにっこりと微笑んだ。
アリーはトラストル家から身を離し、本来の名であるアリー・マジェンタ・プルグスとして生きることを決意した。
その家も土地もトラストル家である物は全て売却し、膨大な財産を手に入れたアリー。
しかし、それは全て、いや少し手元に残したのでほぼであるが。
そのほぼの財産を教会や児童施設などに寄付したのだ。
そして、住む宛もないアリーを是非、リヴール家の侍女に迎え入れようとカヌアは考えた。
その直談判を数日前にしたところ、本日アリーと共にラスファの部屋へのお呼びがかかったのだ。
アリー自身はトラストル家の実子ではなかったものの、経歴は消えない。
それほど壮大な悪行をした家の者だ。
瞬く間に国中にその事件は知れ渡った。
中々受け入れてくれるような所はないだろう。
しかし、それを含めリヴール家の当主は全てを理解し受け入れてくれたのだ。
そして今しがた、ラスファのお許しをいただいたカヌア達。
飛び跳ねる以上の嬉しさで喜んでいた。
「アリーッ!やった!やったね!侍女って言う形になっちゃったけど、私の前では友よ!ほんとに嬉しい!今日は朝までお祝いよ!」
カヌアはそう言うと、とびきりの笑顔でアリーは抱きついた。
「カヌアッ!あぁ、本当にありがとうありがとう!侍女でもなんでもやる!カヌアーリ様!」
と言ってカヌアを呼んだ。
「ふふふ、変なの!慣れない!そうだっ!サラに報告しに行こうっ!」
カヌアがそう言うと、二人は愛馬であるヴェガに乗って、メグレスのサラの家へと向かった。
しかしサラは家にはおらず、何やらウィルに呼ばれたとの事で王宮にいるとのこと。
(ん?ウィル…様に?珍しいな?何かあったか?)
そして、サラがいるというウィルの公務室へと向かった。
部屋をノックして中に入ると、そこにはやはりサラがいた。
しかし、いつもと何だか服装が違う。
カヌアはまずウィルに挨拶をした。
「ごきげんよう。ウィル様」
「あぁカヌアか。どうした?今日は?」
ウィルは何かの期待を込めて、嬉しそうに見ている。
「あ、はい。サラがここにいると聞いて…本日は一体…?」
カヌアがこの状況を飲み込めずに聞くと、ウィルが応えた。
「そうか。本当は明日共に執り行おうと思っていたんだが、ちょうどいい。今からサラに誓いを立ててもらうことにしよう。サラ、こちらへ」
(ん?誓い?何のだ?)
カヌアは訳がわからず見ていると、サラはウィルの前へ行きその場でひざまづいた。
そして、側近であるカブラが勅書を述べた。
「サラ・ブーディ・リーヴナンド。其方をこのアルデリア王国の護衛騎士へと任命する。主にウィルテンダー・ルネ・アルデリア殿下の元で任務である。その対象は、ウィルテンダー様本人と今後王太子妃及び婚約者、それになり得る女性。その者、忠誠の意を示せ」
そして、サラがその凛々しい声で誓いを言う。
「わたくし、サラ・ブーディ・リーヴナンドは、今後このアルデリア王国の盾となり、全ての忠誠を捧げることをここに誓います。ウィルテンダー・ルネ・アルデリア殿下の意のままに」
(ん?え?それって…この国の女騎士になるってこと!?かっけえー!!いやっ!そうじゃなくって!!)
カヌアはその言葉の意味を、まだ理解していなかった。
そしてサラが誓いを立てると今度は、カヌアの方に向き直しひざまづいた。
「カヌアーリ・ヴァ・リヴール様。ただいまから、わたくしはあなたの従順な護衛騎士となり、この身を捧げてお守りする事をここに誓います」
と言いながら、サラは自身の手をカヌアに差し伸べた。
(は…はぃぃいいいい!?)
「えっ!?ちょっちょっ、ちょっと待って下さい!状況が!」
カヌアが超絶驚いていると、ウィルは何かを促すようにニコッと笑った。
「カヌア…」
腑に落ちないという表情をしたまま、カヌアはそれに応えた。
「…ゆ、許します」
そう言うとカヌアは、サラの手にキスをした。
「そういうことだ、カヌア」
とウィルが言う。
カヌア以外の全員が微笑んでいた。
それにつられ、困惑しながらもカヌアも笑った。
その場を見守って見ていたアリーが、カヌアに近づいた。
「ふふ、カヌア様おめでとうございます。それでは、わたくしはお先にお屋敷へと戻ります。都で少しお使いも頼まれておりますので」
と侍女らしくアリーが言う。
「あ…うん。そしたら私も…」
カヌアはまだ慣れないその状況に、ぎこちなく返事をした。
カヌアもアリーについて行こうとしたその時、ウィルが声を掛けた。
「カヌア、少しいいか?」
ウィルは同時にカブラに目配せをし、それに反応したカブラがサラを連れて部屋の外に出ようとした。
アリーもそれに倣う。
「あ!そうだ!サラ!アリーを屋敷まで送ってあげてくれない?都も物騒だから。大切な侍女が心配なの、お願い」
カヌアが振り返ってそう言うと、サラはその初任務にはつらつと応えた。
「かしこまりました!」
そして二人は、嬉しそうに都へと向かった。
部屋には、カヌアとウィルの二人きりになった。
ウィルがカヌアに近づく。
そして愛おしそうに、ウィルはカヌアの唇に自身のを重ねる。
そして優しく抱きしめる。
「はぁ…幸せすぎる…」
ウィルがそう漏らすと、カヌアは恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
カヌアは、ウィルの温かい体温を感じながら言う。
「あ、あ…えぇと…ウィル様?先程のサラの件は、一体どういうことなのでしょうか?」
「そうだったな、言うのが遅れてすまない。以前から話が出てたんだ。サラは自分から申し出て懇願してきた。女性の騎士はこの国ではいなかったから、最初は受理することに悩んだ。しかし、色んな資料を…レイルと調べているうちに、ある著書を見つけた。その国には女性の騎士が大勢いて…というか女性しかいない国らしいが。それでレイルも協力し、陛下に直訴したんだ。そしたらすぐにお許しを得られた。…俺が言うのもなんなんだが、話のわかる父上だ」
ウィルが敬意を説明すると、カヌアは妙に納得したように応えた。
「そうだったんですね。陛下はどなたから見ても、とても聡明なお方ですよ。それにしてもサラの護衛には…何故わた…」
(ハッ!そうだった!婚約者になり得る…)
「その、カヌアも喜ぶと思ったんだが…」
ウィルがカヌアの顔をのぞいて言う。
すると、すかさずカヌアは応えた。
「もちろんですっ!この上なく喜ばしいです!でも私の下に付くというのは何だか、違和感が…」
「それは…主人次第なんじゃ無いのか?」
ウィルはそう言うと、ふふっと優しく笑ってカヌアを見る。
それに対し、カヌアも何かを悟ったように微笑み返す。
「そうですね!ありがとうございますウィル様!それに今日はアリーもうちの侍女になった日なんです!二人の記念日ですね!なので本日、実家へと帰ります」
「え?実家へ帰る…のか?婚約者になり得る女性は、このままここにいても構わないんだが…というかいて欲しい」
何か勘違いをしたウィルが、寂しそうに言う。
「あ、はい…それは大丈夫です。もちろん、迷惑でなければ王宮のお部屋は、このままお借りさせて頂きます。でも今日はこれから我が家で、お祝いのパジャマパーティーをしようと思っておりまして」
とカヌアは、はにかみながら言う。
「そうか、そういうことか…それなら思う存分楽しんで」
とウィルはニコッとしながら、カヌアを送り出した。
その背中を見ながらウィルは思った。
(パジャマパーティー…パジャマ…)
と少し羨ましそうな表情をして。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
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