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episode114〜暴く〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。




そして


カヌアは、あれからトラストル家の周りをバレないようにうろつき、観察をしに行っていた。


何日も何日も…ほぼ毎日。


しかし、ウィルが言っていたように、本当に一切アリーの姿を確認する事はできなかったのだ。


観察している間何度かは、トラストル家の屋敷主人であるザジロス・ラ・トラストルを目撃していた。


更には。ある人物の出入りも確認する事ができた。


その人物とは、以前サラを無理矢理妻にさせたあの卑劣な男、アガザ・サム・ベンゼルマンだ。


つまりサラの元旦那である。


(チッ…あいつら、知り合いやったんか!絶対何か企んでやがる…あぁアリー。本当に何もなければいいんだけど…)


カヌアは心配で心配でしょうがなかった。


(もどかしい…もどかしすぎる…ギギギギィィ)


カヌアの歯軋りは止まらない。


今日はもう帰ろうと踵を返したその時だ。

遠くの方から物々しく、こちらへ向かってくる一行が見えた。


(ん?あれは…え!?)


カヌアはその一行が何者なのかに気が付き、そして何故か物陰に隠れた。


その一行はカヌアの前を通り過ぎると、トラストル家の屋敷の前で止まった。


(ウィル…様?)


その先頭にいるのが、愛馬に乗ったウィルだった。


後ろには美しき従者カブラ、そして何やら見たことがある人物が…いや、人物達がいた。


その人物達は、この後どのような活躍をしてくれるのか…



そして、ウィルはその屋敷を見ながら思っていた。


(カヌアも連れてこうと思ってたのに…姿が見えなくて仕方がなかった…今日を逃すわけにはいかなかったしな…しかし、今日もこの辺でウロついてるはずだから、できればこのまま…その辺にいないか…)


と周辺を見渡そうとしたが、門番の護衛がウィルに近づいてきたので叶わなかった。


「これは…ウィルテンダー殿下ではございませんか。本日はどのようなご用件でございましょう?お約束はなさってらっ…」


そう言いかけたがカブラが前に出て、その護衛に剣を抜こうとしながら言う。


「お前…頭が高くないか?この方は…」


「よい…カブラ…この後、嫌でも頭を下げることになるからな…フッ」


ウィルはいつも以上に冷たく笑った。

そして言う。


「さぁ…呼んでもらおうか…この屋敷主人を」


その様に怯んだ護衛は、急いで屋敷主人を呼びに行く。


まもなくすると、屋敷の主ザジロス・ラ・トラストルが出てきた。


「ウィルテンダー殿下!これはこれは、突然いかがなさいましたでしょうか?このような大所帯で一体…」


と言うザジロスの言葉を遮り、ウィルが煽って言う。


「なぜここに来たのかわかるよな?心当たりがあるんじゃないのか?」


「おや?一体何のことでしょう。わたくしめは健全に、コツコツとこの国のために毎日働いております」


しかし、平然を装いながらザジロスも応えた。

その言葉に突っかかるようにウィルも言う。


「ほぉ。健全に…とな」


カヌアは何を話しているのか気になり、更に近づこうとした。


しかし、部外者が割り込むことにより、ウィルの計画を台無しにしてはならないと思い、ある事を考えた。


そして、カヌアはある方向へと目配せをした。


ウィルの命令で、ずっとカヌアを監視していたワイムの方を。


(なんだ?やっぱバレてたのか…ん?こっちへ…来い?)


ワイムはカヌアの意図を汲み取り、その元へと向かった。



カヌアは呼び寄せたワイムを盾に、ウィルの一行に近づいたのだ。


(おけ!いい距離いい距離。これなら聞こえるぞ)


そう思いながら、カヌアは小声でワイムに言った。


「このでかい身体はこのためにあったのね!」


「違います」


すかさずワイムは否定した。


しかし、そんな様子にカブラは気が付いていた。

カヌアがいつ何かをしでかすのではないかと。

ハラハラしながら。


ウィルももちろん気が付いていた。

カヌアが自分の勇姿を見てくれていると思うと。

ドキドキしながら。


(ワイムめ…カヌアにあんなにくっついて…)


そう思ったが、ウィルは話を続けた。


「ザジロス、お前が今自分で何をやってきたのかその口で説明しろ」


「殿下が何を言っているのか…」


ザジロスは引かない。


「まだシラを切るつもりか?こっちは全て調べが付いている…はぁ…しょうがない…なら…」


ウィルはそう言うと、カブラの方を向いた。


すると、カブラは今までのザジロスの悪行を次々と言い放った。


「ザジロス・ラ・トラストル。お前は、アガザ・サム・ベンゼルマンと共同して、偽物を売り捌いていたな?それも相当な数だ。知識が薄い買い手などに売っては、その事業を広めていた。違うか?以前私達が都で偶然会ったのを覚えているか?あの時にもある国の商人と絵画を取引してたんだよな?その絵画がこれだ」


すると、その後ろからその時の商人が出て来た。

そして、その絵画をあらわにした。


「……」


沈黙のザジロス。


「そして、極め付けはこれだ。このコインもちろん見覚えはあるな?サルミニア国の王族が所有していた旧コインだ。これを流用して本物だと偽り、高値で売っていた。本物と区別がつかぬように、本物を持っているサルミニアの王子の物とすり替えようとさえした。まぁ失敗したがな。ほら…」


今度は、その時に捉えられていた者を前に出させた。


「サルミニアの王子の行動を把握するために、アルガダ国の第三王子であるキルラ様の側室を使って情報も得ていたな?その後彼女の消息がたったために、探すのに苦労した」


と言うと次にはその消息していたと言う、キルラの妻が出てきた。


(すごいな…次々と出てくるやんけ…そういえば、妻がいなくなったとかキルラ様が言ってたもんな。密告者だったのか…気の毒に)


「そうだな…あとはウィル様が一番お怒りになっている事が何点かある。かなり前だが、乗馬の帰り道にリヴール家の御息女である、カヌアーリ様を矢で狙わせたのもお前だろう?その頃カヌア様はアリー嬢の事を色々と調べていたらしいからな。まぁ、襲われた時に本人が返り討ちにしてたがな。そいつもあっさり白状したぞ?お前がやったとな」


そして、カヌアがその時に泡を吹かせた男も前へ出された。


(ふむふむ、そう言うことだったのか…それにしてもよくこれだけの事を調べ上げたな…凄まじき力…)


「最後にだ…これは…」


とカブラが言いかけたが、ウィルがそれを制した。


「最近ケーフ山脈である俗がうろついているという情報があるが、先日、俺たちを襲ったのはお前の下の者であろう?その時に…大切な仲間を亡くした…極めて遺憾な出来事だった」


(え…レグを…あれもこのクソ野郎のせいだったのか…絶対に許さないっ!!…ん?)


その時、カヌアは屋敷の異変に気が付いた。


他に誰も気が付いていないようだった。


そして、まだ悪あがきをするザジロスの声が轟く。


「何をもってそんなデタラメを!私はここの都…いやこの国中の貿易を全て担っているのですよ?この国を潤してやっているのはこの私だ!私がいなくなるとこの国の物資は滞ってしまう!困るのはこの国ですよ?殿下は自分で自分の首を絞めることにおなりになるのです!?それでも…」


その言葉を待たずとして、カヌアは屋敷の上の方を指差して叫んだ。


「いた!!いたいたいたいたいたっ!」


カヌアがいきなり大声を発するもんだから、そこにいた全員がビクッとした。


一番驚いたのはすぐ側にいたワイムだろう。


そして、もちろん話は途切れ、その場にいた全員が指の差された方へと目を向けた。


しかし、その声を発したカヌアは、すぐさま門番の護衛の元へと勢いよく走って行った。


門は固く閉まっている。


「門を開けるな!」


そう叫んだザジロスだったが、カヌアはその足を止める気配はなかった。


そのまま護衛の肩に足をかけ、華麗に高くジャンプした。


そして軽々と門を超え、綺麗に着地を放った。


「なっ!!」


ウィルが驚き声を上げる。


しかし、瞬時に状況を読んだウィルは、ある人物の名を上げた。


「サラっ!!」


「はいっ!」


すると一行の中にいたサラが、ウィルの命令を読み取り、同じように護衛の肩を使って門を超えた。


この国の女性は強い。

そして華麗だ。


サラはそのままカヌアを追いかけて、屋敷の中へと入って行った。


ウィルはニヤッと笑い、カブラは頭を抱えた。


「なんなんだっ!無断で入るとは!あの小娘!」


ザジロスは驚き、動揺した。


「おや?可愛い娘が一人や二人入ったところで、喚くな。むしろ嬉しくないか?」


ウィルが嫌味な笑みを浮かべて言う。


それに対して変なところで引っかかるザジロス。


「え?か、わいい?」


「あん?可愛いだろ?」


ウィルも突っかかる。


それを見かねたカブラが促すように言った。


「ウィル様…本題の続きを」


「あぁ。そうだったな」


ウィルは気を取り直した。


一方、カヌアとサラは屋敷の扉を突破し、一目散に二階へと上がって行った。


もちろん…護衛も扉も蹴破って。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると今後の励みになります。

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