episode113〜力〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
翌日、カヌアは朝食を食べながら、昨日の出来事を思い出していた。
(何で…何であんな事言っちまったんだろう?我ながらものすごいことを言ってしまったような…いや…言った!言ったよね?は、半分って何?大丈夫?頭大丈夫か私…はぁ…なんて顔して会えば…)
「あれ?カヌア様?やはり体調でもお悪いのですか?まだ ‘半分‘ も召し上がれてないですね?」
手が止まっているカヌアを心配し、王宮侍女のリリィが言った。
リリィのその言葉はカヌアの心にズボリと突き刺さった。
「あっえっ!?半分!?ごめんなさいっ!」
動揺しまくるカヌアに、リリィは驚いた。
そして何やら察したのか、慌てた様子で言った。
「カ、カヌア様!?そういう日もございます!女性ですからっねっ!そうだ!フルーツでもお持ち致しましょう!」
リリィは急いで部屋を出て行ってしまった。
「えっ!?あ!リリィッ…」
(あ…気を遣わせてしまった…余計な仕事まで増やしてごめん…リリィ)
そう思いながら、テーブルの上の物を全て平らげた。
朝食も無事終わり、ウィルが話があるとの事で従者が部屋に呼びに来た。
ウィルの公務室に着くと、そこにはいつものカブラとそれに加え、ワイムもいた。
ワイムは以前の服の件があったため、変に警戒してカヌアから少し距離を置いた。
(何よワイム…その少し恨むようなフラフィーは…)
カヌアはそう思ったが、ウィルに挨拶をした。
「おはようございますウィル様。ご用件とは何でございましょう?」
昨日の件が頭から離れないカヌアは、少し畏まった言い方になってしまった。
「あ、あぁ。先日サルミニア国に依頼していた、ケーフ山脈の黄色い鉱石の件なのだが、今朝方に調査報告が届いてな。やはりあれは鉱石ではなかったらしい」
ウィルがその結果を伝えると、カヌアは頷いた。
「やっぱり…」
「アレは無機物ではなく、有機物であることが判明した。そして…ソレは人の唾液でないと溶けない事も…わかったんだが…」
少し言いにくそうにしていたウィルの様子に気が付いたカヌアだが、その後の言葉が気になったので、そろぉ〜と聞いた。
「ソレは飴…と認識してよろしいんですかね?」
「そうだな…黄色の飴…だな」
ウィルは承認した。
「えぇと、なぜ人の唾液でないと溶けないって…わかったんですか?」
「それが、あちらの国でも、試しにその…飴を舐めて確認した者がいたらしい。それで、この前の衛兵のように正気を失って、人に危害を…加えそうになった」
そのウィルの言葉に、少しホッとしてカヌアは言う。
「あ、加えずには済んだんですね。しかし、危ういモノには変わりないですね…」
「あぁ、今回被害がなくて良かったのは幸いだった。調べてもらったその飴は、こちらへと戻してもらった。数もすべて合う。この事はもちろん内密にしてもらっているから、大丈夫だとは思うのだが…早急にこの仕掛けを暴いて、何とかしないと…」
と重々しく言うウィル。
「ウィル様っ!昨日私が申しました事、覚えてらっしゃいます?ふふ、もちろん私もご助力致します!なのであまり根詰めないようにして下さいね!」
カヌアは今朝、あんなに悩んでたことなのに、自分から解放して言った。
カヌアのその明るい表情を見て、ウィルは少し心が軽くなった。
「ふっ…そうか、そう…だったな」
(本当に、ウィル様はよく笑うようになられた…この方が現れてから)
カブラはその様子を見て、少し安心した。
「それともう一件。トラストル家の件だ。前々から目はつけていたんだが、素行がどんどん悪化していく始末でな。さすがにもう目を瞑れないところまで来ている。そこで今ある準備をしている最中だ。もう少しで踏み込めるのだが…少し戸惑っていてな…それとアリー嬢の事だが…」
そう言うウィルの言葉に、カヌアは過剰に反応した。
「アリーが?アリーが一体どうしたんですか!?何かされたんですか!?」
「あ、いや、されたと言うよりは…わからないんだ。誰もその姿を最近見ていないようで…最後に屋敷に入ったのを目撃されてから、出てきたのを見た者がいない…屋敷の中にいるのは確かだと思うのだが…武道大会が始まる前からだからかれこれ二ヶ月は経つか…」
「え…?そんなに!?それってまさか…隔離されている?それとも…」
カヌアの顔色が少しずつ変わっていった。
「……いや、そう最悪な事態になってはいな…」
ウィルは気休めを言いそうになった。
「そんなのっ…そんっなの!!この目で確かめないことにはわからなじゃないですか!!!」
カヌアは血相を変えて、そのまま部屋を飛び出した。
「ちょっ…カヌっ!待…て…」
ウィルは反省した。
その様を見ていたカブラは、あちゃぁ…と頭を抱えていた。
窓の外から、カヌアが走るのが見えたワイムは思った。
(次の任務はこれか…)
カヌアは急いで馬を走らせていた。
そう、アリーに会いにトラストル家へと向かっていたのだ。
カヌアが息を切らしてその屋敷に着くと、門の前に何人かの護衛がいた。
カヌアが少し息を整いてから、その護衛に話しかけに行く。
「ごきげんよう。あの、わたくしリヴール公爵家の長女カヌアーリと申します。アリー嬢にお会いしたいのですが…中に…」
「そのようなお約束はお聞きしておりませんが…?それに…失礼ですが、証拠はおありですか?その、リヴール公爵家という証拠が」
とその護衛はカヌアを怪しんで言う。
「クッ…今は…持ち合わせておりません…」
カヌアがそう言うと、護衛は小馬鹿にしたように言ってきた。
「まぁ証拠があったしても、アリー様には誰であろうとお通しするなと、ご主人様から仰せつかっておりますので」
冷たくあしらわれるカヌア。
(チッ、ダメか……何も考えずにそのまま来ちまったからな…少し無計画過ぎたか…出直すしかないな…あぁでもあとひとつだけ)
カヌアはそう思いながら、少しでも安心したくて聞いた。
「あの、アリー嬢は…その、ご無事なんですよね?」
カヌアのその言葉に、護衛は眉をピクッと動かして言った。
「何…を仰っているのでしょう?アリー様はお屋敷の中で優雅にお過ごしですよ?外からでもお分かりでしょう?こんな素敵なお屋敷で何不自由なく暮らしているのですから」
と護衛がニヤリとしながら言う。
もちろんカヌアには視えていた。
フラフィーによって、それが嘘であることが。
その言葉に、不安と怒りを感じながらもカヌアは堪えた。
そしてその反動でカヌアも笑って言う。
「そうですか…そう…ですか」
そしてカヌアは馬に乗り、屋敷を背にして進み出した。
しかし二、三歩進んだところでふと止まると、振り返って言った。
「そうそう…あなたの顔…その顔面に ‘嘘‘ と書いてありますよ?ふふふ。その言葉、しかと覚えておいて下さいね。本当に ‘嘘’ だった場合、その時は…」
カヌアは思っきり不敵笑みを浮かべて、その場を後にした。
しかし、カヌアの心はめちゃくちゃ乱れていた。
(クソッ!クッソ!私なんかじゃどうにもできなかった!力不足…あんな奴ら、ヤるなら一瞬なのに…伯爵になってしまったからそう簡単に手は出せないし…リヴール家に傷はつけたくないからな…ここはやはり、ウィル様に任せるしか…あんなにご助力するとかイキってたのに…情けないわぁ…)
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
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