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episode111〜不思議な蜜〜

初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。




正気を失った衛兵に、王女ニーナが襲われてしまった。


時は半刻ほどが過ぎ、カヌアはニーナが心配で、様子見に行こうとした。


すると彼女の自室の前に、ウィルが不自然に立っていた。


そんなウィルにカヌアは話しかける。


「ウィル様?こんな所でいかが…」


ウィルはシィッという仕草で、カヌアを制した。


扉から中をそっと覗くと、怯えているニーナが見えた。


その細い身体は、従者カブラの胸元に包まれていた。


二人のフラフィーは、何だかとても幸せそうにしていた。


しかし、それを目の当たりにしたカヌアの心は乱れまくった。


(キャーーーーッッ!え?これは?見て良いの良いの!?いや!見ますけど!)


食い気味で覗いていたカヌアの願望はすぐに閉ざされた。

そう、ウィルにゆっくりと扉を閉められ、それは叶わなかったからだ。


「カブラがいれば大丈夫だ」


ニコッと笑い、ウィルはカヌアの肩に手を起くと、連れ去るようにその場を離れた。


カヌア達はそのままウィルの公務室へと行った。


「あの、ウィル様?先程おっしゃっていた用事はお済みに?」


「あぁ、簡単な作業だったからな…現実的に実行するにはもう少し時間がかかりそうだが…まぁまくいくだろう」


「ん?そうですか…そういえば、トラストル家の件なのですが、先程の衛兵の方もおっしゃってましたね。アリーの…トラストル家は子爵位の家柄ですよね?あまり手を広げられるような身分ではないんじゃ…?」


カヌアはアリーの家柄が、関わってなければいいと思いながら聞いた。


「いや、ここ何ヶ月か前に昇格して伯爵になったんだ…色んなことに手を出し始めたことによって、事業を広げたからだろうな。裏の手を使ってまでも…まぁそれはわかってたところではあるが…むしろ…ん?そういえばそのトラストル家の令嬢とは知り合いの仲だったよな?」


ウィルは何か含みがあるように言った。


「はい…アリーとはダンス講習で一緒だったので仲良くさせてもらってました。しかし、武道大会が始まってからは一度もお会いしてませんね…元気かなぁ…ハッ!何か問題に巻き込まれたりはしてないでしょうか!?その、トラストル家の…」


と言いながら、カヌアはアリーの心配が加速した。


「そうだな…今のところは令嬢が関わっているという情報は耳に入って来てはないがな。一応こちらにも少し探りを入れてみよう」


「さすがウィル様!頼りにしてます!」


「では、これからリヴール家へと赴こう。ロキに話を聞きに」


「はい!」


二人はそう言うと、厩へと向かった。




そうしてカヌア達は、ロキのいるリヴール家に着いた。


使用人のエミリアは、二日も続けて殿下が来たことに驚いていた。


しかし、エミリアはロキが何か疑われているのではないかと思ったようだった。


彼女は事実無根のロキの疑いを晴らすために、庇おうと弁明をしようとさえもしていた。


彼女のフラフィーが牙を向いている。


そんなエミリアをカヌアが慌てて止めに入り、事なきを得た。


(ふふエミリアったら…ロキは大切にされているんだな)


カヌアは嬉しそうに微笑んだ。


その当の本人はというと、午後は街へと買い出しをしに行っているとのこと。


そう、ミザールの街へと。


「ミザールか…すぐ見つかると良いんだが…」


そうウィルが漏らす。


しかし、カヌアはニヤリとしながら言う。


「ふっふっふ…ウィル様、その心配はご無用です!場所ならわかりきってますから」


そしてカヌア達は、ミザールの甘い香りのするその店へと真っ先に向かい、扉を開けた。


「いらっしゃ…あっ!カヌア様!それと…ウィル殿下!?ごきげんよう」


そこは、ロザリーの両親が営んでいる菓子店だった。


(やっぱりな…ロザリーったらウィル様を見て少し頬を赤らめてるな…それにやっと本物の王子だって聞いたみたいね。ふふふ…それにしてもロキのあの顔…フラフィーを見れば一発ね!)


そんな姿を見ていたロキは、ヤキモチを妬いていた。


しかし相手が一国の王子であったために、複雑な表情をしていた。


(ん?なんだ?なんか…フラフィーが睨んでいるような…)


ウィルは一瞬目に入ったが、特に気にすることもなかった。


「ごきげんよう、カヌア様。その、本日はお買い物ですか?」


ロキは不思議に思いながら聞いた。


「ううん。えぇとロキにちょっと用があって…少し外に出れないかな?ロザリー少しロキを借りても大丈夫?すぐに返すから」


カヌアがそう言うと、ロザリーは秒で応えた。


「あっ!はい!もちろんです!全然!」


((全然…))


カヌアとロキは同じことを思ったが、面持ちは少し違かった。


店の外に出ると、カヌアは手短に聞いた。


「ロキ、いつも急にごめんね…例の黄色い石のことなんだけど。この間ケーフ山脈で、匂いを嗅いで扉らしき板を嗅ぎ分けてたじゃない?あれって、どんな匂いだったの?」


「あれは…微かにですけど甘い香りでしたね。砂糖のような蜜のような…」


ロキはその時の状況を思い出しながら応えた。


「飴?みたいな?」


カヌアがピンポイントで聞く。


「そうですね!飴です!それとほのかにですが林檎の香りもしたような…あれ?それがどうかしたのでしょうか?」


ロキは不思議に思いながら聞いた。


「そのロキの首にかかっているやつも、同じような匂いはするの?」


カヌアはロキの首元を指差した。


「あ…いえ。これは全くしません」


ロキの応えは意外なものだった。


続けてカヌアが質問していく。


「溶けたりしたことは?それによってベタついたりとかそういうことが起こったりは?」


「え?溶ける?いえ!雨や湯浴みなどで濡れたりは何度もしてますけど、一度もそのようなことはなかったですね。もしかして山脈にあった黄色い石は溶けたんですか?」


(水でもお湯でも溶けなかった…じゃあこのロキのペンダントの石とは別物なのか?同じ様に見えるけど…)


カヌアが悶々と考えていると、ウィルが核心的な質問をした。


「それではそのペンダントを舐めたことは?」


「え!?なっ舐める?そのような事は一度もしたこと無いですけど…」


と言ってロキはそのペンダントの石を舐めようとした。


しかしカヌアはそれを見て、その石を咄嗟に手で覆った。


その瞬間、ロキの舌が少しカヌアの手に触れてしまった。


「舐めちゃダメっ!絶対にこれを舐めたり、口に含んだりしちゃダメだからね!これは…そ、そうっ!毒だから!毒なの」


毒とでも言えばよっぽどのことがない限り、舐めたりはしないだろうと思いカヌアは嘘をついた。


「あっ…はい。わか…りました。あの…カヌア様…手に…その舌が触れ…」


少し赤面しながら言うロキ。


「あぁ大丈夫大丈夫!ロキは可愛いわんちゃんだから」


カヌアにそう言われ、ロキは少し困惑した。


「え?わんちゃ…ん?」


そしてウィルは案の定、羨ましがっていた。


カヌアはお礼に、ロザリーの店のお菓子をたんまりと買いつけた。


カヌアが食べたいだけじゃないかって?

本人はそんなこと一ミリも思ってない…多分。


ロキにもお駄賃をあげて、今度二人で流行りのデザートでも食べに行ったら?と耳に言葉を添えて店を後にした。


王宮へと戻ったカヌア達は、ウィルの自室へと来ていた。


そこにカブラもやって来た。


「ウィル様申し訳ございません。付き添えずに…」


「いや、全然構わない。それよりニーナの様子は?」


「はい。最初は気が落ち着かない様子でおられましたが、そのうち震えも止まり、手首もすぐに冷やしましたので、痛みはあまり残らな…いかと…?」


カヌアがめちゃくちゃニヤニヤしながらカブラを見ていたので、何だか寒気が来たのかカブラは奇妙なものを見るような顔をした。


「えぇと…カヌア様何か?」


「い・い・え」


とニヤつきを抑えられない、世にも奇妙な顔をして言った。


少し複雑な顔をしながら、ウィルが話を変えた。


「そうか、それは良かった。ところでサルミニアから、例の黄色い鉱石の分析結果は来たりしてないか?」


「そうですね。そろそろのはずですが…未だ報告は上がっておりませんね。確認してみます」


カブラが応えると、何やら他の従者に言伝を頼みに言った。


「カヌア…この間地下でタラゼド殿が言ってた、例の王宮から繋がっているという扉を今から見に行ってみないか?」


「あ!良いですね!でも今日はもう少しで日が落ちますので、明日にしませんか?」


そして二人は日を改めて明日地下へと行く約束をした。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。

大変恐縮ですが、評価を頂けると今後の励みになります。

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